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大島優子の強みは「朗らかでいてくれること」、魅力は「さらけ出してくれること」

2015年8月30日 11:30

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「ロマンス」に主演した大島優子とタナダユキ監督
「ロマンス」に主演した大島優子とタナダユキ監督

[映画.com ニュース] 女優・大島優子の6年ぶりとなる主演映画「ロマンス」が、8月29日から全国で公開された。2014年6月に国民的アイドルグループ「AKB48」を卒業後、初の主演映画。一方、メガホンをとったタナダユキ監督にとっては、「百万円と苦虫女」(08)以来7年ぶりにオリジナル脚本で挑んだ意欲作だ。タイトな撮影期間をともにした“戦友”2人に話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/根田拓也)

大島が出演したCMをタナダ監督が演出しているが、その事がきっかけで今作のタッグにつながったわけではないという。タナダ監督は、「私にお話がきた段階では、『大島さんでなにか』という状態だったので、『実現するかわからないじゃん』と話半分で聞いていたんです(笑)。もともとAKB48では優子推しだったんですが、まさか仕事をする機会がくるなんて思ってもいませんでした。それも国民的アイドルのセンターだった人の卒業後の作品ですから、オファーなんてたくさんあるでしょうし。でも、どうやら本当にやれるかもしれない……という展開でしたね」とほがらかに笑う。

一方の大島は、「CMの撮影が(AKB48の)卒業の少し前だったのですが、『一緒に仕事したいね』とおっしゃってくださったんです。『ぜひ、お願いします!』って言った3カ月後くらいに今回のお話を聞いたので、ビックリしちゃいました」と述懐。タナダ監督が「不思議な縁だなあと思います。映画の話の後にCMのオファーをいただいて、大島優子さんですと。私もビックリしました。でも、CMの撮影タイミングではまだ言えなかったんです」と明かすと、大島は「あの時から知っていたんですね。私は、あんな事を言っていただけて嬉しいなと思っていたのに」と頬を膨らませる。

今作は、ロマンスカーで車内販売を行う26歳のアテンダントを務める北條鉢子が、つつがなく業務を遂行し、小田急電鉄新宿駅と箱根駅を往復して戻ってくるはずが、ワゴンから菓子を抜き取ろうとした映画プロデューサーの桜庭洋一(大倉孝二)の箱根珍道中に巻き込まれていく姿に迫るロードムービーだ。

主演映画に大島に気負いはなかったのだろうか。「ありましたね。でも、すぐになくなりました。必要ないと思ったんです。タナダ監督、スタッフさん、大倉さんとお会いして、とにかく全部肩の荷をおろして、身にまとっていたものを全部脱いでしまおうと思えたんです」と話す眼差(まなざ)しは、どこまでもまっすぐだ。タナダ監督にとって大島の最大の魅力がどこにあるのか聞いてみると、「さらけ出してくれるところですね」と即答する。そして、「自分がよく映ろうということではなく、スタッフ、キャストとともに、この作品のために自分は何をすべきかを追及してくれるので、全幅の信頼を置いていました」と補足しながら、さらに口調に熱を帯びていく。

「小田急電鉄さんがすごく協力してくださったのはもちろんなんですが、『往復で撮りきらなきゃいけない』とか、『この日とこの日しか電車を借りられない』といった制約があるなかで、本当に撮りきれるのか? というくらい毎日切羽詰っていたんです。ロマンスカーって、新宿から1時間ちょっとで箱根に着くすごく便利な乗り物なのに、あの時ばかりは『なんでこんなに早く着いちゃうんだろう、もうちょっとゆっくり行けばいいのに』って(笑)。そういう感情って役者さんによっては伝染したりするんですが、国民的アイドルとして想像がつかないくらい数々の修羅場をくぐり抜けてきた大島さんは、すごく朗らかでいてくれたんです。その姿を見ていたら、『落ち着かなきゃ、私が慌てたって仕方がない』と思えて、本当に頼りになりました」

現場での立ち居振る舞いを絶賛された大島だが、おごる気持ちは一切なく、逆にタナダ組のチームワークの良さに思いをはせる。「キャスト全員にすごく信頼を寄せてくださっていることが、言葉にこそしないのですが伝わってきたんです。段取りのときも動きたいように動かせていただきましたし、間の取り方も任せますと。逆に私の方が聞きに行ったくらいなんです。録音部さんにも『この声のトーンで大丈夫ですか? もうちょっと張った方がいいですか?』とお聞きしたこともありました。でも大丈夫だといわれて。監督が撮りたい画を決めていらして、現場を統率されていらっしゃるから、そういった信頼感がみんなを引き付け、ひいては私たちキャストにも返ってくるんだってわかったんです。とっても伸び伸びとやらせていただきましたね」

大島は2011年のインタビューで、「“女版・香川照之”さんになりたいんです!」と筆者に語っている。4年半が経過し、心境の変化が起こったとしても不思議ではない。「AKB48を卒業して、お芝居をするって決めたなかで、目指すものはなくなったんです。誰になりたいとか、どういう女優になりたいとか、どうありたいっていうよりも、好きでずっとやり続けられたら、それだけでいいやって思えるようになりました」

AKB48時代の戦友である前田敦子も、現在は女優業をまい進している。また、88年生まれの大島にとっては、新垣結衣吉高由里子堀北真希黒木メイサら、逸材ぞろいの“同級生”の存在もある。ライバルとして刺激になるのかと思いきや、「私もそうなるのかなあと思っていましたが、何を意識したらいいのか逆にわからないと思ったんです。ライバルって、私の中では切磋琢磨できる者同士。自分の存在が相手に刺激を与え、私にとっても刺激にならないとライバルにはならないんじゃないかと。そういう風に考えたとき、同世代というよりは同じフィールドにいた卒業生たちっていう存在が、私にとってはライバルなのかもしれませんね」と胸中を告白した。今後も着実にキャリアを重ね、さらに成長を遂げた大島がタナダ監督と対峙する日が来ることを、願ってやまない。

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