イーサン・ホークが語る「パージ」の狂気とリアリティ
2015年7月17日 21:15

[映画.com ニュース]1年に1晩だけ全ての犯罪が合法になる社会という衝撃的な設定で、全米初登場第1位を記録したスリラー映画「パージ」が、7月18日に公開される。主演を務めたイーサン・ホークが、作品に込められた狂気とリアリティを語った。
今作は「パラノーマル・アクティビティ」シリーズ製作のジェイソン・ブラムと、「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイの共同プロデュースで製作された。舞台は、日々の安全を維持するため、1年に1晩(12時間)だけ殺人を含む全ての犯罪が合法になる“パージ”という日が法律で制定された、近未来のアメリカ。“パージ”の日は午後7時に鳴る放送とサイレンで、翌日の午前7時まで街は完全に無法地帯となり、人々は1年の間にたまった怒り、憎しみ、恨みを解き放つことが許される。
ホークが演じたのは、住宅セキュリティシステムを売る敏腕営業マン、ジェームズ・サンディン。社内の成績はトップで、閑静な高級住宅街に美しい妻と2人の子どもたちとともに暮している、“パージ”とは無縁の男だ。しかし、ひょんなことから“パージ”の標的になった男を家にかくまったことにより、事態は一変。信じがたい設定も「最初こそありえないと感じるけど、話が進むにつれてすごく現実味を帯びてくる。善悪の判断に関する難問が描かれている」と、人間の良心を問う作りになっているという。
「パージ」は単なるスリラー映画ではなく、日常の延長線上にある“異常事態”を描いたSF映画だとホークは捉える。「良質なSFの面白いところは、既に存在する事実を誇張するだけで、その事実を違った角度から見せてくれることだと思う」。「高級住宅街には富裕層が住んでいて、家の外の貧困層に何が起きているかなんてお構いなし、っていう設定は現実離れしているとは思えない」と、今作が持つリアリティを語った。
また、家族を守るため、他人を見殺しにできるのかという難題をぶつけられる自らの役柄を、「僕たちは作品をつくっていく上で、ジェームズ・サンディンという役を演じるのが難しい人物にしたんだ。彼は、自分のことをいい人だと思っているけど、実際はそうじゃない。あからさまな悪役というわけでもなく、でも自分が悪の一部だということに気付いていない」と分析。「現実にもいるような人物、給料をもらって生活して、その給料がどこからきたお金なのか特に疑問を持たない大多数の人たちと似ているよね」と、現代社会における経済システムにひそむ問題をチクリと刺した。
さらに、今作に含まれる暴力描写について、「この作品は反暴力のメッセージを含んだ暴力映画だ」と言い切る。「暴力描写のある映画が観客に暴力を喚起させるとは思わない。この作品は暴力について語るために、暴力描写が効果的に使われていると思うよ」と、強調した。
ホークは近年、「6才のボクが、大人になるまで。」で第87回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたほか、主演と脚本を兼ねた大人気シリーズの最新作「ビフォア・ミッドナイト」が大ヒット、秋に日本公開を控えるアンドリュー・ニコル監督作「ドローン・オブ・ウォー」に主演するなど、キャリアのなかでも最高のときを迎えている。最後に、「みんなが金曜日の夜に気軽に見に行きたくなる、しかも良い作品をつくること。それから高尚な作品とB級作品の境界線をぼかすことは、僕がいつもやってみたいと思っていたことなんだ」と、映画人としての挑戦を教えてくれた。
「パージ」は、7月18日から東京・TOHOシネマズ日劇ほか全国で公開。
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