「トゥモローランド」監督が受け継ぐ、スティーブ・ジョブズの“未来への思い”
2015年6月3日 13:00
[映画.com ニュース] ジョージ・クルーニーが主演を務めた米ウォルト・ディズニー製作の長編実写映画「トゥモローランド」のメガホンをとったブラッド・バード監督が来日し、インタビューに応じた。バード監督にとって本作は「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」に続いて2作目の実写作品になる。
同作は、ウォルト・ディズニーほか歴史上の偉人が建造した理想の未来世界“トゥモローランド”をめぐるミステリーアドベンチャー。Tマークの不思議なピンバッジを託された17歳の少女ケイシーが、かつてトゥモローランドを訪ねたことがあるという男フランクとともに、“すべてが可能になる理想の場所”の謎を解こうとする。
ピンバッジが全体の鍵となる本作のストーリーは、もともとバード監督と共同で脚本を手掛けたデイモン・リンデロフが考えたものだったという。リンデロフはドラマ「LOST」で企画・製作総指揮・脚本を手掛け、謎が謎を呼ぶストーリーで世間を驚かせたことがある。「ピンバッジに触って違う街に移動するという発想は、デイモン・リンデロフがこの企画を私に持ちかけたときに話したものです。もともとは彼が考えたアイデアでした。それを聞き、私もケイシーと同様、すぐに“そこ”に行ってみたいと思い、このアイデアを気に入りました」。
幼いころからウォルト・ディズニーのことを尊敬していたというバード監督は「ディズニーがブランドとして持っているエンタテインメントというものを、今作で現代的(モダン)な形で紹介できると考えました。未来に対するウォルトの視点・観点も含めて物語を作ることができて、とても嬉しく思っています」と満足げに語る。また本作で登場する秘密組織には、フランスの空想科学小説家ジュール・ベルヌが会員の1人に名を連ねているが、彼の代表作をウォルト・ディズニーが映画化した「海底二万哩」(1954)も昔から好きな作品の1つで、「その世界観に強い影響を受けた」と明かす。
「ブレードランナー」「未来世紀ブラジル」など、近未来世界を舞台にした映画には絶望的な未来を描いたディストピア作品が多い。一方「トゥモローランド」は、輝かしい未来を獲得するためにわれわれ1人1人が何をすべきなのかという強いメッセージ性を含んだ映画だといえる。バード監督がイメージする“未来”とはどういったものなのだろうか。
「この映画で描いているのは、未来というものは液体のように流動的なものであり、多くの人間の行動によって移り変わっていくということです。輝かしい未来のために取るべき行動というのは、大小さまざまあります。たとえば環境や食べ物について考えることも必要です。重要なのは、具体的にどのような食べ物を体内に吸収するかということではなく、どういったものを読み、どのような考えを持つかということなのです。未来に対してわれわれがどういうことを決めて、行うべきなのか。どういったことを未来に望むのか。本作を通してそういった点を考えてもらいたいです」と持論を展開した。
そして「さらに付け加えますと」と前置きした上で、バード監督はかつて親交があった故スティーブ・ジョブズ氏についても言及した。「ピクサー社で仕事をしていたときに、スティーブ・ジョブズ(ピクサー元社長)と知り合うことができました。ジョブズは本作に登場する人たちのように先見の明がある素晴らしい人物でした。その彼がよく、『アメリカには家に何台もテレビがありすぎる』と言っていました。全体的にもう少しテレビを減らして、質の良いテレビだけを持つようにした方がいい、と。これは物理的なことだけではありません。考え方に関しても同様です。食べ物も量を減らして質の良いものを取る。そのような暮らしが望ましいと話していましたね」と振り返り、ジョブズ氏への共感を示した。そうした思いは、作品にも反映されているに違いない。
「トゥモローランド」は6月6日から全国で公開。
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