是枝裕和監督が語る「海街diary」の奥深さ、そして撮影でつかんだ手応え
2014年12月29日 12:00

[映画.com ニュース] 是枝裕和監督の最新作「海街diary」が、12月24日にクランクアップを迎えた。是枝組は、原作者である吉田秋生氏が大切にしている「鎌倉の四季」をスクリーンに映し出すため、1年がかりの撮影を敢行。桜を狙った春編は4月7、8日の2日間、紫陽花を狙った梅雨編は6月16、23日の2日間、鎌倉の個人宅を借りての4姉妹の自宅シーンを含む本格的な撮影は7月29日~9月8日の約6週間にわたり行われた。さらに紅葉の秋、枯れ木の冬のシーンも撮り終えた。
同作は、祖母の残した鎌倉の家で暮らす3姉妹が、山形で別の家庭を築いていた父の葬儀で異母妹のすずと出会い、運命的に引き取ることを決意する。湘南を舞台に、家族の増えた香田家が本当の意味で姉妹に、家族になっていく1年を描く。映画では、長女の香田幸を綾瀬はるか、次女の佳乃を長澤まさみ、三女の千佳を夏帆、異母妹で四女の浅野すずを広瀬すずが演じているほか、是枝監督と初タッグとなる大竹しのぶが、まだ子どもだった3姉妹を母親に預けたまま再婚し出て行ってしまった実母・都に扮する。
真夏の極楽寺で取材に応じた是枝監督は、「原作の物語は登場人物を含め、どこかしら品の良さがあるんですよね。街を描かなくちゃいけないという気持ちを持ちながら、きっとそこで暮らす人々の姿を撮っていけば、自然と外側に街は見えてくるんじゃないかと思っているんですよ」とにこやかに話す。
原作にひかれた理由は、「親に捨てられてしまった人たちの話ですよね。あとに残された人の話って、僕が自分で本を書いているとそうなる事が多いこともあって、すごくシンパシーを持ってしまったんですよ」と説明。そのうえで、2つの要素が物語の柱になるという。「親に置いていかれてしまった子たちのなかで、長女がある時は母親代わりになろうとしながら(悲しみを)埋めていくという話」とひとつ目のポイントを挙げる。
そして、ふたつ目の要素を「前面に出すつもりはないのですが、被害者側の人間(3姉妹)と加害者側の人間(すず)が一緒に暮らすなかで、どうやって姉妹になっていくのかがポイントだなと思っているんです。この問題を乗り越えながら、特に長女と四女がいかに成長していくのかにひかれたんです」と明かす。さらに、「すずは『自分は産まれてきて良かったんだろうか?』『ここは自分の居場所ではないんじゃないか?』という気持ちを抱きながら、15年間生きてきたはずなんですよ。その気持ちにどう向き合うかっていう話でもある。長女は長女で、自分の中でどうしても許せない両親という存在を、すずと暮らすことでどう受け入れていくか。基本的にはこのふたつが柱になっていると思う」と語った。
是枝監督は、日ごろから気になったことをノートに書き留めていることで知られている。しかし、「今回は4姉妹の話ですから、家の中でどう過ごしているかって僕の中にもそんなにネタはなかったんです。ですから、3姉妹の方に3組くらい取材をしました。『どういう時にケンカをするの?』『お風呂の順番って決まっているの?』『シャンプーは共有なの?』などなど、いろいろ聞かせてもらいながら原作で描かれている生活感みたいなものを埋めていこうと思っていますし、それは脚本にも反映させていますよ」と手応えを感じている様子だ。
また、キャスト4人の現場での立ち居振る舞いも参考にしているようで、「4人が集まるとこんな風に畳に寝転がるんだとか、現場で見えてくるものもあるから、シーンを書き足したりもしている」という。ただ、「原作は見事に4人を書き分けているんです。『なるほどなあ、千佳ってポワーンとしているんだけど、千佳がいることですずが家に導かれているのか…』って、昨日撮っていて感じましたしね。原作の吉田さんも、きちんと取材をされて書き込まれたのでしょうね」と語り、穏やかな面持ちを浮かべていた。
「海街diary」は、2015年6月13日から全国で公開。
(C)2015 吉田秋生・小学館/フジテレビジョン 小学館 東宝 ギャガ
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