ディズニー、傑作を生む哲学「ストーリーこそ王」 脚本完成には最低2~3年
2014年12月16日 12:00
[映画.com ニュース] 「アナと雪の女王」の大成功で改めて底力を見せつけたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ。近年の快進撃を支えるのは、2006年より同スタジオを統括しているジョン・ラセターが提唱する“Story is King.”(ストーリーこそ王)という製作哲学にある。そのこだわりは最新作「ベイマックス」でも健在。「完成には最低でも2~3年はかかる」という脚本づくりのプロセスを、ロサンゼルスの同スタジオで取材した。(取材・文/内田涼)
本作の脚本を手がけたのは、ピクサーの大ヒット作「モンスターズ・インク」「モンスターズ・ユニバーシティ」でもコンビを組んだダン・ガーソンとロバート・L・ベアードのふたり。「少年とロボットの交流」というシンプルな発想は、まず“ビーツ”と呼ばれる工程で肉付けされた(思い思いのアイデアを書いた紙を貼る“ビートボード”に由来する)。
「ベースとなるアイデアに加えて、少年と亡き兄の関係性や、兄の事故死に隠された巨大な敵、それを倒す仲間たちといった要素をいかにエンタテインメントとして結びつけるか。初期の段階では、特に自由に意見を言い合うんだ」(ガーソン)、「作品のテーマやトーン、アクションやコメディの味付けをどう配合するかといった基礎づくりを数カ月かけて話し合う。僕らは仲がいいけど、意見の違いはあるから、議論は常に白熱するよ」(ベアード)。
一定のアウトラインが決まると、監督やストーリー部門のスタッフたち、さらにラセター氏らから意見を仰ぎ、本格的な脚本作りがスタート。俳優を雇い、ラジオドラマのように脚本を読ませること(これをテーブルリードという)で、セリフが演技として生きているかを精査する。「読むと面白いはずなのに、演技してみると効果がない。そんな発見を通して、試行錯誤を繰り返すんだ。この段階ですでに1年は経過しているけど、良くないと判断すれば微調整ではなく、一から書き直すこともしばしばなんだ」(ガーソン)。
脚本が完成すると、今度は絵コンテを製作。「ベイマックス」の場合では、本編を通して約30のシーンがあり、1シーンにつき約1000枚の絵コンテが描かれた。「優れたクリエーターが描いた絵コンテから、新たな発見や有意義な意見を得られるから、それを参考に脚本を書きなおすこともある」(ベアード)。
ビーツから脚本着手、テーブルリード、それに伴うリライトを経て、出来上がった絵コンテは編集され、仮の音楽や音響効果、セリフなどを入れた試写用フィルムが製作される。「ベイマックス」も例にもれず、社内向けの試写が行われるが、これで脚本の完成とはいかず、さらなるブラッシュアップが求められる。
結果的に「ベイマックス」の脚本が完成するまでには、2年以上の時間を要した。「少年とロボットの交流」という“種”は、思春期特有の迷いや葛藤、愛する兄を失った主人公の喪失感と再生、そして「目に見えない故人の思いが、誰の心にも生き続ける」という普遍的なメッセージとして見事に開花。子どもたちが心踊らせる冒険ファンタジーにとどまらず、大人世代にこそ響く感動的なヒューマンドラマに昇華した。
「ラセターのおかげで、製作段階ではいくら失敗してもいいという雰囲気ができあがり、脚本家たちもあきらめずに挑戦を重ねることができる」と語るポール・ブリッグスは、監督のビジョンを脚本として具体化させる“ヘッド・オブ・ストーリー”として「アナと雪の女王」でも手腕を振るった。「あの作品も正直言うと、初めての絵コンテ試写は最悪だったよ。でも優れた物語を生み出す過程で、それは当たり前のことなんだ」。
「ベイマックス」は12月20日から全国公開。
フォトギャラリー
PR
©2024 Disney and its related entities
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。