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第67回カンヌ映画祭 レベルの高い作品そろうがサプライズは少なめ

2014年6月1日 11:15

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パルムドールに輝いた 「ウィンター・スリープ(英題)」チーム
パルムドールに輝いた 「ウィンター・スリープ(英題)」チーム
photo by Tim P. Whitby/WireImage

[映画.com ニュース] 5月24日に授賞式が行われた第67回カンヌ映画祭。ジェーン・カンピオンが審査員長を務めた今年は、下馬評に沿ったバランスの取れた結果となった。カンピオンによれば、今年は選挙のような投票制にし、誰が何を推薦したのかわからないようにしたという。9人のメンバーのなか、最終的にそれぞれ5票を獲得したものが賞を与えられたそうだ(5票に満たないときは決戦投票をし直したということか)。オープニングの記者会見でカンピオンは女性監督の少ない現状を憂えていたが、授賞の基準は性別には関係なかったことを最終日の会見で強調した。結果パルムドールはトルコの男性監督ヌリ・ビルゲ・ジェイランに渡り、ふたりの女性監督、河瀬直美とイタリアの若手アリーチェ・ロットバーケルは後者がグランプリを取って明暗を分ける形になった。

もっとも、ロットバーケルの「The Wonders」にはそれほど突出したところが感じられず、フランスの各紙総評をみてもサプライズと報じられていた。田舎の蜂蜜農家で両親を手伝う4人姉妹の物語は、ドキュメンタリーのような手法と繊細な視点に、これが長編フィクション2作目とは思えない安定した力量を伺わせる一方で、それ以上の個性はない。むしろ個性では河瀬の「2つ目の窓」の方が突出していたが、審査員の好みの問題だろうか。本作も、必ずしも好評価ばかりではなかったものの、フランスのル・モンド紙は「パルムドールに値する傑作」と絶賛した。

パルムドールの「ウィンター・スリープ(英題)」は、ジェイラン監督らしく、3時間16分の長尺のなか物語がきわめてゆっくりと展開する。とくに前半はそれほど意味のないように思える会話が続くため、ここでギブアップ気味になると最後まで持たない。審査員長は、「最初は3時間16分と聞いて萎縮したものの、見始めたら独特の美しいリズムに魅了された。チェーホフを思わせる物語。キャラクター同士の対立をとても洗練された手法で描いている」とコメント。ある種忍耐力の要る映画であることは確かだ。

一方、もっとも大胆なチョイスとしてパルムドールに推す声が多かったのが、弱冠25歳のグザビエ・ドランによる「Mommy(原題)」。ドランは「マイ・マザー」「わたしはロランス」などですでに評価が確立されている。本作はその才能と個性をさらに確信させられる傑作だ。今回監督はカメラの後ろ側に徹し、特異な息子と母の関係をエモーショナルに描く。カメラのフォーマットがキャラクターの心理と結びついて途中で変わる、その切り替えがじつに鮮やかで、場内には拍手が起こったほど。本作が審査員賞に留まったのはたんに、ドランが今回コンペ初参加であることに尽きるだろう。

そのドランと審査員賞を分け合ったジャン=リュック・ゴダールの「Adieu au langage(言語との決別)」は、3Dということでも注目を集めたが、ときおり挿入される遊び――右目と左目の映像が異なりそれがオーバーラップされる以外は、日常の風景を切りとった、とりたてて3Dの必然を感じさせるものではない。「思考は糞のなかにある」といったセリフがきわめてゴダールらしい皮肉なユーモアに満ち、裸の女性のシーンが多いのも、何気にこの監督らしいと言えるだろうか。現代社会にリンクする示唆に富んだフレーズを観客はただただ咀嚼するしかない、つまりはゴダールの頭のなかを覗かせてもらうような作品である。カンヌに来なかった彼の代わりにトロフィーを受け取ったプロデューサーの、「この賞が彼を変えることはないでしょう」という率直な言葉には思わず笑ってしまったが、たしかにいまさら審査員賞を授与するぐらいならまだ栄誉賞でも作り出した方が良かったかもしれない。それでもゴダールに影響をもたらすことはないだろうが。

個人的には、ジュリアン・ムーアが主演女優賞に輝いたデビッド・クローネンバーグの「Maps to the Stars」と、ベネット・ミラーが監督賞を受賞した「Foxcatcher(原題)」も心に残った。クローネンバーグの作品は、ハリウッド・セレブたちに巣食う精神的不安を冷徹な視線でえぐり出す、ブラックな心理サスペンス。一方ミラーは、有名な億万長者が実際に起こした殺人事件を元に、人間の心の闇に迫る。さらに常連組のダルデンヌ兄弟、ケン・ローチアトム・エゴヤン、さらに画家ターナー(ティモシー・スポールが最優秀男優賞を受賞)を描いたマイク・リーも、それぞれに手堅い演出の力作で、今年のコンペは筆者にとって驚きこそ少なかったものの、総じてレベルの高いものだった。(佐藤久理子)

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