吉永小百合「ふしぎな岬の物語」主演&プロデューサーとして奔走 成島出監督、千葉県知事までもがゾッコンに
2014年3月17日 05:00
眼前に太平洋が広がる南房総市の和田漁港。吉永演じる岬カフェ店主の悦子が暮らす岬村で、年に1度開催される伝統の「鯨(くじら)祭」のシーンが取材陣に公開された。漁師の徳さん(笹野)や浩司(阿部)ら鯨組の男衆が「鯨唄」を歌いながら練り歩く様子を、悦子が炊き出しの鯨汁を作りながら温かなまな差しで見つめている。そこに徳さんの娘・みどり(竹内)が東京からふらりと帰ってくるという設定だ。
実はこのシーン、森沢明夫氏の原作小説「虹の岬の喫茶店」には登場しない。1987年の米映画「八月の鯨」が大好きという吉永が、自らロケハンに出向き、現在も捕鯨が行われているこの地を見初め提案。成島監督も、「孤高のメス」(2010年)の時にロケハンで訪れ、いつか撮りたいと思い描いていたことから実現したという。
吉永は、「懐かしいもの、ノスタルジーのようなものを出したいと思って監督に提案し、入れさせてもらった。ここにいると、小さい頃のことを思い出すような雰囲気」と説明。撮影は2月1日にクランクインし、途中2度の大雪に見舞われたが、現在は3分の2ほどを消化し、「マラソンでいうと35キロを過ぎたくらい。これからラストスパートに入りたい」とプロデューサー目線で意気込んだ。
女優としては、昨年12月の製作発表で「一俳優として3倍返し」と宣言していた吉永は、「監督の納豆のような粘っこい演出に負けないよう、役者としてしつこくついていくしかない」と乗っている様子。成島監督は、「昔からのファンなので、毎日が夢の中にいるみたい。長いキャリアがあるのに、芝居に対し計算ではない誠実さに感銘を受けている」と照れた。
その思いは初共演の面々も同様で、阿部は「ご一緒できて光栄。人々への思いやり、心遣い、誰に対しても分け隔てなく接してくださり、ちょっとおちゃめな面も発見できた。最高の環境で仕事ができてうれしい」と満足げ。竹内も吉永に見つめられるだけで歓喜の表情を浮かべ、「伝説の方で大先輩なので、とても緊張しますが。ずっと前から知り合いのような、すべてを受け入れてくれる雰囲気を持っている感じがします」と最敬礼だ。何度か現場を共にしたことのある笹野でさえ、「セットに一緒にいるだけで気持ちいい。その空気をずっと吸っていたいし、持って帰りたい」とデレデレになっていた。
悦子と浩司は叔母とおいの関係だが、浩司は悦子にほのかな思いを寄せているという、こちらも原作にはない設定に脚色されている。「悦子にとっては、小さい頃に引き取って手はかかるけれど、ずっとかわいい、優しい子という気持ちのままですね」と語る吉永に対し、阿部は「守らなきゃいけない、一番大切なものというか、悦子への思いは独特なものでしょうね。なんか不思議ですが、(恋愛の)疑似体験的な感覚になっています」と感慨深げに話した。
ロケはほかにも館山、勝浦など千葉県各地で行われているため、森田健作千葉県知事が表敬に訪れ、「吉永さんとは45年ぶりの再会。千葉県も一生懸命協力します。この人情のあるドラマを全国の人に見てもらい、映画が隆盛を極めてほしい」と激励。吉永も、「千葉の素晴らしい景色は、きちっと撮れていると思います」と応じていた。
「ふしぎな岬の物語」は、岬カフェに集まる浩司をはじめ、徳さんやタニさん(笑福亭鶴瓶)ら常連、そしてふと足を止めて訪れる客らが、悦子のいれる1杯のコーヒーに癒され、それぞれの悩みや葛藤を打ち明け新たな活路を見いだしていく姿を描く。10月11日から全国で公開される。
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