新鋭・吉浦康裕、初長編アニメ「サカサマのパテマ」で挑む「本当の面白さ」
2013年11月8日 14:40

[映画.com ニュース] 手を離したら、彼女は空に落ちていく――印象的なフレーズと、天地が逆転した構図が目を奪うキービジュアルが興奮をかき立てる、新鋭・吉浦康裕監督のオリジナルアニメ「サカサマのパテマ」。空を忌み嫌う世界“アイガ”で暮しながら、人知れず空へのあこがれを抱く少年エイジは、空に向かって落ちてきた地下世界の少女パテマと出会う。「映画館で流れる長編アニメーションを作ることが夢だった」と語る吉浦監督は、どのような思いを込めたのか。
学生時代にアニメーション作家としてのキャリアをスタートさせ、「キクマナ」といったアート作品から、ネット配信で火がついた「イヴの時間」を手がけてきた吉浦監督。これまでの作品は、会話劇が特徴となっていたが、初長編アニメとなった本作は、スケールアップした世界観でこれまでとは一線を画している。喫茶店をメイン舞台に据えていた作品から一転、「外に出る」をキーワードに、「ボーイ・ミーツ・ガール」という王道な物語を、斬新なビジョンで新たなエンタテインメントへと導いた。
同じ場所を見ていても、同じ感覚で物事を捉えることができない“サカサマ”な関係ゆえに、互いを理解することができないパテマとエイジ。物語は、ふたりの視点で進行し、観客は思わぬ世界の姿を目にすることになる。最大の魅力である“サカサマ”というアイデアは、吉浦監督が幼少期から温めてきたものだ。「天気のいい日に空を見ると、空に向かって自分ガ落っこちるんじゃないかという感覚に陥っていたんです。これは僕独自の感覚なのかなと思って、アイデアの基盤として物語が作れないかとずっと考えていたんです」
奇抜なアイデアだが、「“サカサマ”であるがゆえに感動できる、“サカサマ”であるがゆえに描けるエモーショナルなものを、ドラマに組み込もうと思った」と発想におぼれることはなく、「同じ場所にいながら相手の感覚がわからない男女が、相手の気持ちを理解していく物語」として完成させた。「最初は、地上世界に放り出されたパテマを変な女の子として見せ、彼女がいかに怖い思いをしているのかという描写を次第に増やしていくことで、観客にもエイジとともにパテマに感情移入してもらえるよう、バランスを考えていったんです」
学生時代は、ヤン・シュバンクマイエル、スーザン・ピットといったトリッキーな作品を好んでいたそうだが、「水のコトバ」をきっかけに「忘れていた自分の“演劇好き”が戻ってきて、苦労して作るんだったら、映像も物語もすごい方がいいと思った」と大衆性のあるエンタテインメント作りに意識が変化した。「エンタテインメントは難しいですが、本来は一番量産されるべきもの。エンタテインメントというと平板に見られるところがあるけれど、本当に面白い作品は、ド直球のエンタテインメントを誰もできないような一流の演出で見せきるものだと思うんです。たとえばピクサーの『トイストーリー』は、王道なストーリーながら、個々の見せ方は垢抜けていて面白い。そういうつくり方をしたいんです」
「サカサマのパテマ」は、11月9日から全国で公開。
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