プラハの映画ポスターギャラリー代表が講演 芸術性高いチェコポスターの魅力語る
2013年9月1日 14:10
[映画.com ニュース] 東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の展覧会「チェコの映画ポスター テリー・ポスター・コレクションより」で8月31日、プラハの映画ポスター専門ギャラリー「テリー・ポスター」代表パべル・ライチャン氏による講演会が行われた。
チェコで3つの劇場を経営しているライチャン氏は、テリー・ギリアム監督と親交があり「2005年に『ブラザーズ・グリム』の撮影で、プラハに滞在した際に何か記念になるものを頼んだら靴下をくれたのです」と「TerryhoPonozky」とチェコ語で「テリーさんの靴下」を意味する名前がつけられたポスターギャラリーの由来を語る。
第2次世界大戦後の1946年に映画業界が国有化され、スターリンの死去後50年代後半に造形芸術化連盟が設立。プラハに中央映画管理局ができ、芸術家に多くのポスターを発注するようになったと、チェコスロバキア時代からの歴史をたどり「当時チェコに広告代理店は存在せず、写真家、彫刻家、建築家らもポスターとかかわった。映画管理局から発注された若い芸術家たちは自由自在に製作できた。当時彼らは自分の作品を発表する場所がなかったので、ポスターを通して自分を表現したのです」と説明する。
1989年のベルリンの壁崩壊に伴って勃発したビロード革命まで、国の発注によるポスター製作が行われた。70~80年代は旧共産圏の作品が増えたため、ヌーベル・バーグ作品をはじめとした作家性の強い西ヨーロッパの映画が大量に上映された60年代後半に最高傑作が生まれたという。
膨大な数のチェコの映画ポスターのスライドととともに、ライチャン氏は主要なアーティストやチェコのポスターの特徴を解説。「デザイナーは製作者と観客の間に入って映画の解釈をポスターに入れたので、その解釈が映画の内容より目立つケースが多い。商業的なポスターではないので、俳優の写真を入れる必要は全くなかった。コンピュータがなかったので、フォントも自分で作ったりとコラージュ作品のすべてが手作業によるもの。ロシア構成主義からの影響が多く見受けられます」と話す。
「恐怖の振り子」(ロジャー・コーマン監督)、「招かれざる客」(スタンリー・クレイマー監督)、「昼顔」(ルイス・ブニュエル監督)などの60年代の作品に対しての西側のポスターとチェコのポスターを並べて比較し、説明的で分かりやすい西側の商業ポスターと詩的で抽象的なデザインのチェコのポスターの違いに、観客たちは興味深く見入っていた。また68年以降は検閲により「イージーライダー」(デニス・ホッパー監督)などは星条旗が消されたデザインになっていると説明された。
現在チェコでは配給会社からのポスターのみ掲示される状況だそうで、ライチャン氏は、プラハ工芸大学をはじめ国内外の美大生にポスターをつくらせ、劇場で展示する試みを独自に行っている。「デジタル化の今、ポスターが生き延びることができるのか議論されるような時代ですが、すたれるものではないと思っています」と芸術的なポスターへの思いを語った。
展覧会では「テリー・ポスター」が所蔵するポスターの中から、1950年代後半~80年代までに制作されたチェコスロバキア時代の映画ポスター82点を紹介する。12月1日まで。その後、2014年3月21日から京都国立近代美術館へ巡回。会期中に展示されたポスター画像と当時のチェコ文化に関する論考を掲載した「チェコの映画ポスター カタログ」(1200円)も販売。
「テリー・ポスター」公式サイト(http://www.terry-posters.com/ チェコ語・英語)では、作家、作品、年代別に1万2000枚のポスターを閲覧できるほか、一部ポスターのオンライン販売を実施している。
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