劇場公開日 2005年11月3日

ブラザーズ・グリム : インタビュー

2005年11月7日更新

テリー・ギリアム監督の7年振りの新作「ブラザーズ・グリム」が遂に完成! 3度目の来日を果たしたギリアム監督に本作の“ギリアム的要素”を語ってもらった。(聞き手:編集部)

テリー・ギリアム監督の“中世の騎士好き”が爆発!

東京国際映画祭での上映にあわせて 来日したテリー・ギリアム監督
東京国際映画祭での上映にあわせて 来日したテリー・ギリアム監督

初期のテリー・ギリアム監督作に必ず登場したイメージは“中世の騎士”。ギリアムが初めて映画監督業に挑戦した「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」のモチーフはタイトル通り、アーサー王伝説の聖杯で、円卓の騎士たちが総出演。「ジャバウォッキー」も同じ世界、タイムスリップもの「バンデッドQ」にも、近未来SF「未来世紀ブラジル」にも、現代劇「フィッシャー・キング」にも、この中世の騎士のイメージは出現する。「バロン」はまさに中世の騎士についての物語だとも言えるだろう。そして今回、ギリアム監督が「ブラザーズ・グリム」で描いた暗い森は、この中世の騎士たちの世界に繋がっているのではないだろうか。それが象徴するのは、キリスト教に支配される前の先住民族の文化であり、統治者側の文化ではなく統治された側が伝え続けてきた文化だ。

「確かにそういう共通点はあるね。中世の騎士はどんな物語でも馬に乗って暗い森に入る。そして森には誘惑がある。謎の美女がいたりね。そして、それがヨーロッパの民話の核となっている部分だと思う。グリム童話ももともとは民衆がずっと口承で伝えてきた民話をグリム兄弟が採集したものだ。だから、童話に描かれているのは、キリスト教に支配される前のアニミズムの世界、樹木も岩も生きている世界なんだ。その土地を侵略してきたキリスト教は太古の森を滅ぼそうとした――つまり、昔からあった物語、伝説、呪術を一掃してしまおうとしたんだけど、それらは滅ばされなかった。民話として残ったんだ。

暗い森にわけいる赤ずきんも登場
暗い森にわけいる赤ずきんも登場

確かにこの映画はグリム童話の持つそういった側面も描いているよ。フランスがドイツに侵略してきているんだけど、ドイツの村人たちは昔から伝えられてきた民話を信じていて、その村はずれの森では民話に描かれてきた出来事が実際に起こるんだ。

童話の持っているこうした側面に惹かれる理由のひとつは、僕自身が、支配する側ではなく、支配されてそれでも負けない側のほうに属しているからさ。こんなふうに成功した映画監督になった今でもね(笑)。僕はこちら側にいて、今でも社会に対してある種の怒りを持ち続けているんだ。

そういう意味で、グリムの暗い森と中世の騎士の世界はもちろん地続きだよ。そしてそれは現代とも繋がっている。なぜか僕はそういうイメージが好きなんだ。現代劇の『フィッシャー・キング』にも自分が騎士だと思い込んでいる男が出てきるし、あの作品の現代のマンハッタンは危険なグリム童話の暗い森と同じなんだ。今回の映画でも、暗い森の中でおびえる赤ずきんのシーンがすごく好きだ。あんなふうに暗い森の中で怯えている小さな存在がいるから、騎士が必要になるのさ」

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インタビュー2 ~テリー・ギリアム監督の“中世の騎士好き”が爆発!(2)
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