イスラム過激派による誘拐事件描くフィリピン映画に主演 国際派女優I・ユペールが語る
2013年7月5日 16:00
[映画.com ニュース]フィリピンで実際に起きたイスラム過激派による観光客誘拐事件を題材に描いたサスペンスドラマ「囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件」が、7月6日に公開される。フランスの名女優イザベル・ユペールが主演を務め、ジャングルの過酷な状況で行われた撮影で女優魂を見せている。
2001年5月、リゾート地パラワン島で観光客21人がイスラム系過激派組織に誘拐される事件が発生。その場に居合わせたNPO団体職員のフランス人女性テレーズも巻き込まれてしまう。人質となった観光客たちは長引く拘束生活に疲弊していく。そして9月11日、アメリカで同時多発テロが発生。「キナタイ マニラ・アンダーグラウンド」(2009)でフィリピン人として初めてカンヌ映画祭監督賞を受賞したブリランテ・メンドーサ監督がメガホンをとった。
メンドーサ監督がカンヌで監督賞を受賞した際に、ユペールが審査委員長をしていたのが最初の出会いだという。その後、再会を果たし本作のオファーを受けた。「まったく知らない世界に外国人として身を置くという状況も面白いと思ったし、フィリピンでクレイジーな冒険にいきなり放りこまれるという設定も、やってみる価値はあると思ったの。また誘拐事件の最中に起きた、世界同時多発テロには私も考えるところがあり、そんな状況であんな悲劇を聞いた人間がどう感じるかを演じるのは、今のこの時代に必要だと思った。こういう映画は、今時めったにないでしょ。それができるチャンスが回ってきたときに、ジャングルで泥まみれになるのは断る理由にはならないわ(笑)」と出演の経緯を語る。
ジャングル中をひたすら歩いたり、川を渡るなど体を酷使し、プロの役者とアマチュアが混在する現場で「まるでカオス」の様な撮影だったと話す。「時折、私たちは彼に誘拐されているようだと話し合っていたの。そんな雰囲気が画面を通して伝わってきている。才能ある監督というだけではなく、ブリランテは世界に通じる感覚を持っている」と監督の手腕を称え、「ドキュメンタリー的手法で撮っているシーンもあるけど、作品自体はドキュメンタリーではなく、映画的側面が強く、映画的言語を使っているの。それでも監督の母国の政治的問題や社会的問題、貧富の経済的格差の問題など、現実問題をきちんと描けている。この作品のそういう点に惚れたの」と見どころを語った。
ユペールは国際的に活躍しており、本作以外にも今年はオーストリアのミヒャエル・ハネケ監督の「愛、アムール」、韓国のホン・サンス監督の「3人のアンヌ」、イタリアのマルコ・ベロッキオ監督の「眠れる美女」(10月公開)という4作品が日本で紹介されている。「日本で映画を撮ったことがないの。だから訪れたいわ。いろんな国を転々として、いろんな人と作品を作り上げるのが好きなの。知らない世界に、文字どおり“放りこまれる”のが好きなのよ。日本の監督に私を売り込んでほしいわね」とアピール。「『そして、父になる』を見るのが楽しみだわ。あの監督に、ぜひ私を売り込んで」と今年カンヌで審査員賞を獲得した是枝裕和監督にラブコールを送った。
「囚われ人 パラワン島観光客21人誘拐事件」は7月6日全国で公開。
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