秦早穂子氏、ゴダールとジャック・ドゥミの間で葛とう「ヌーベルバーグは戦い」
2013年6月23日 07:00

[映画.com ニュース] ジャック・ドゥミ監督のデビュー作「ローラ(1960)」のデジタル修復完全版が6月22日、東京・有楽町エリアで開催中の「フランス映画祭2013」で上映され、映画評論家の秦早穂子氏がトークイベントを行った。
アヌーク・エーメが主演を務めた本作は、初恋の人を7年間待ち続けるシングルマザーの踊り子と、彼女に思いを寄せる男たちを描いたラブストーリー。1970年頃にオリジナルのネガが焼失したが、イギリスで見つかったインターネガをもとに2000年にニュープリントを作成、2012年にデジタル修復完全版が製作された。
数々のフランス映画の名作を日本に輸入・配給してきた秦氏は、「当時はカンヌ映画祭で買い付けるなんてことはしなかった。映画祭の前に決めないといけない。ジャン=リュック・ゴダールのデビュー作『勝手にしやがれ』はラッシュ段階で買い付けを決めた」といい、「ルイ・マルやフランソワ・トリュフォーはすでに日本に浸透していたので、私としてはシンパシーを感じていた同世代の作家たちを紹介したいと思っていた。ジャック・ドゥミもそのひとり」と語った。
当時「ローラ」の試写を見に行った秦氏は、「買い付けの選択をする時はたいがい1人で映画を見るけれど、その時は試写室にドゥミやゴダールやトリュフォーもいた」と明かす。また、「私が『ローラ』を買わなかった理由は、『勝手にしやがれ』以降ゴダールを推していこうと考えていたから。ゴダールの2作目『小さな兵隊』は政治問題を扱っていて難しそうだったけど、日本の若者にも響くと思っていた。だけど完成すると上映禁止になってしまい、その後のゴダールの作品『女は女である』と『ローラ』を見てどっちにするかすごく悩んだ。散々悩んだ末にゴダールを選んだけれど、もし『小さな兵隊』が出ていたら結果は違っていたかも。それくらい『ローラ』にも魅せられていた」と裏話を明かした。
そして、「『ロシュフォールの恋人たち』などはノスタルジックで優しい映画というイメージがあるけれど、ドゥミは決して単純な作家ではない。シングルマザーになったキャバレーの女が健気に愛を信じる忠実さを描いてはいるけれど、裏側を見れば戦争やアルジェリア問題や未婚の母、中絶や避妊が宗教的に問題だった時代。『ローラ』はあの時代の現実を切り取っていた」と改めて高く評価。また、「今ではヌーベルバーグは神話化しているけど、そこで生きている人々の現実は戦いだった。もちろん情熱もあった」と振り返った。
「フランス映画祭2013」は、有楽町朝日ホールほかで6月24日まで開催。
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