「ベルリンファイル」リュ・スンワン監督、下積み時代を回顧し学生にエール
2013年6月18日 14:00

[映画.com ニュース] 韓国で700万人を動員する大ヒットを記録したスパイアクション「ベルリンファイル」のPRで来日中のリュ・スンワン監督が6月17日、東京・渋谷の映画美学校で特別講義を行った。これから映画の世界を志す学生に向け、「心配しないでください。どうせうまくいかないものなので」と冗談を交えてエールをおくった。
「シュリ」のハン・ソッキュと「哀しき獣」のハ・ジョンウが共演したスパイアクション。北朝鮮諜報員ジョンソン(ジョンウ)と韓国情報院のエージェント・ジンス(ソッキュ)が、ベルリンに仕組まれた巨大な陰謀に巻き込まれていく姿をスリリングに描き出す。
「相棒 シティ・オブ・バイオレンス」「生き残るための3つの取引」など、アクション作品で手腕を発揮してきたスンワン監督は、「父とおじが映画好きで、子どもの頃から映画館に行くのが自然なことだった。僕はおじと同じく香港の武術映画に熱狂していて、あこがれのヒーローや英雄の真似をしてよく遊んでいた。中学生くらいから漠然と映画を作りたいと思い始め、高校生の時に8ミリフィルムで映画を撮り始めた」と映画監督を志したきっかけを明かした。また、「そんな風に映画にのめり込んでいたので、学校の成績は悪くて大学受験に落ちた。デビューするまでに12本のシナリオを書いたけれど、1本たりともコンクールに引っかからなかった。才能がないんだなと諦めようとしたけれど、妻と相談し、どうしても撮りたい映画を撮ってそれが認められないなら諦めようと決めた」と下積み時代を語った。
また、先日ハリウッドデビュー作「イノセント・ガーデン」を引っさげ来日したパク・チャヌク監督からの影響を明かし、「パク監督の批評で映画を見る目を養った。黒澤明監督、溝口健二監督、小津安二郎監督が教科書とされていた時代に、鈴木清順監督の世界を教えてくれた。今でも良き師匠」と感謝。また、「鈴木清順監督の作品は病みつきになる。コメディ映画のお手本にしている。今村昌平監督も好き」と日本映画の造詣の深さもうかがわせた。
学生からベルリンを舞台にした理由を聞かれ、「かつてドイツも南北に隔たれた冷戦状態だった。そして今でもそのイデオロギーによって傷ついている人々がいるという、象徴的な意味が大きかった」と説明。複雑で巧妙なストーリーをどのように構成したかを聞かれると、「プロセスを思い出したくないほど大変な作業だった(笑)。1年ぐらいシノプシスに費やし、さまざまな調査をした。まず登場人物の衝突を考える。どんな人物かによって戦い方も変わるので、人物像を把握することが重要。記者が事件のルポルタージュを書くように期限を決めて書いていた」と話した。
「ベルリンファイル」は、7月13日から全国で公開。
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