ロバート・ロレンツ監督、主演が師匠イーストウッドというプレッシャー
2012年11月22日 13:00

[映画.com ニュース] クリント・イーストウッドの監督・主演作を20年以上にわたって助監督、プロデューサーとして支えてきたロバート・ロレンツが、「人生の特等席」で監督デビューを果たした。イーストウッドの指名を受け、その偉大なる師匠を演出。父娘のきずなを軸とした濃密な人間ドラマをつむぎ出した。
「もう少し早く監督をしたかったという気持ちはあって、準備もできていた。ただ、クリントが『一緒にやろう』という企画が素晴らしすぎて、とてもパスすることなんてできなかった。でも、監督ができないのなら、とにかく企画からたくさんのことを学ぼうという姿勢でやってきた」。長く裏方として実績を積み、満を持して初メガホンをとったロレンツは屈託のない笑みを浮かべる。
1995年の「マディソン郡の橋」で助監督として初めてイーストウッドの下について以降、プロデューサー、製作総指揮など、ほとんどの作品を製作面で支えてきた。「人生の特等席」も、もともとはイーストウッドの監督・主演の企画だったが、「父と娘、そして娘に思いを寄せるジョニーの関係が、すごく人間的な感情に満ちていて、これなら俳優も面白いと思ってくれるはずだし、楽しい作品になるんじゃないかと思った。クリントに話したら『君がやった方がいい』と言ってくれたので、ようやく監督をする機会に恵まれたんだ」という。
米大リーグのベテラン・スカウトが老いに直面し、ドラフト直前に最後のスカウトの旅を決意。心の溝が埋められず、長い間別々に暮らす一人娘のミッキーが同行し父娘の関係を再構築していく感動作。娘役にエイミー・アダムス、父娘の媒介となるジョニーにはジャスティン・ティンバーレイクという理想通りのキャスティングが実現し、「すべてのシーンが予想以上」と満足げに振り返る。
だが、初監督作の主演が師と仰ぐ名優というのは、かなりのプレッシャーがあったはず。「非常に長いキャリアがあり多くの称賛も受けている、あのクリント・イーストウッドなんだということは常に脳裏の片隅に追いやっていた。それを考えてしまうと、怖気づいちゃうから(笑)」と冗談交じりに本音ものぞかせた。
それにしても、イーストウッドのなんと意気軒高なことか。酒場のシーンで見せる流麗なアクションは、とても82歳の動きではない。ロレンツも、「もちろん一緒に仕事をし始めたときよりは年を重ねているから、気を使うところは多少あるけれど、同じ82歳の人と比べれば最高の健康状態だと思う。彼は、観客が何を魅力的に感じるかを把握する本能を持っているんだ」と最大級の賛辞を送る。
作品が完成したときの感慨も相当なものだったが、「クリントはそんなに簡単に人のことを褒めない」ため、なかなかお褒めの言葉はもらえなかったという。最終的には「良かったよ」のひと言で留飲を下げたそうで、「素晴らしい俳優陣に恵まれ、スタジオもフルにサポートしてくれた。本当に素晴らしい体験だったという感動があった」と晴れやかな表情で語った。
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