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新藤兼人監督次男・次郎氏「お疲れさまと言ってあげたい」

2012年5月31日 15:59

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父・新藤兼人監督について語る新藤次郎氏
父・新藤兼人監督について語る新藤次郎氏

[映画.com ニュース] 新藤兼人監督の逝去を受け5月31日、次男で近代映画協会代表取締役の新藤次郎氏が都内で会見した。4月22日に100歳を迎えたばかりだった新藤監督が29日、老衰のため死去。次郎氏は、「私は身近で見てきたので、『お疲れさま』と言ってあげたい。体力が落ちて目もほとんど見えていないのに、いつも映画のことを考えていた。寝言でもシナリオを書いていたり、撮影をしていましたから。きっとこの先も、映画のことを考えていくんでしょうね」と語った。

長年にわたり父・新藤監督作のプロデュースを手がけてきた次郎氏は、幼年時代を振り返り「とにかく家にいない人で、盆と正月に帰ってくるような生活が高校生のころまで続いた。まともに話をするようになったのは大学在学中だったんじゃないかな」と笑う。それでも、映画監督としての父を「日本の映画人としてすごく特異な人。松竹という大きな会社で年間11~12本の脚本を何年も続けて書いていた。そこから飛び出して独立プロで映画を撮る。無謀ですよね。それを62年間も続けてきたんです。こういう映画人は、日本ではもう出ないでしょうね」と誇らしげに話した。

また、忘れられないアドバイスを聞かれると「『壁に突き当たるまでやれ。壁を触るところまでやってみて、それから考えろ』というようなことを伝えてくれた。仕事に対しては厳しかったですね」と述懐。遺作となった「一枚のハガキ」撮了日についても触れ、「遠くを見てボーっとしていた。いつもはそんなことないんです。涙ぐんでいるようでもあり、少しひとりにしておいた方がいいかなと思いました。もしかしたら、自分の映画人生を反すうしていたのかもしれませんね」。

独立系映画監督の草分けとして知られる新藤監督は、広島市出身。22歳で京都の新興キネマに入社し、美術の仕事の傍ら脚本を担当した。溝口健二監督に師事し、松竹大船撮影所の脚本部に移るが、1944年に召集され、終戦後、本格的に脚本家としての道を歩むようになる。50年に松竹を退社し、吉村公三郎殿山泰司らとともに独立プロダクションの近代映画協会を設立。51年に「愛妻物語」で初メガホンをとり、主演した乙羽信子と後に結婚した。

戦争や原爆を生涯のテーマとし、「原爆の子」「第五福竜丸」などを監督。第2回モスクワ国際映画祭でグランプリを獲得した「裸の島」をはじめ、「裸の十九歳」「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」「墨東綺譚」「午後の遺言状」など、数多くの名作を世に送り出した。96年に第14回川喜多賞、97年に文化功労者、02年に文化勲章を受章している。

葬儀は6月3日、午前11時30分から港区芝公園の増上寺光摂殿で。喪主は次郎氏が務める。

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