原爆の子

劇場公開日:

解説

世界で最初に原爆の洗礼を受けた広島の原爆の子供たちがつづった作文を編集したヒロシマ・ピースセンター理事長、広大教授長田新の「原爆の子」にヒントを得て、新藤兼人が「雪崩(1952)」に次いで自身脚色、演出を行っている。製作には吉村公三郎が当たり、近代映画協会と劇団民芸が資金の一切を作りだした。撮影には「山びこ学校」の伊藤武夫が当たっている。「安宅家の人々」の乙羽信子が好意的主演をする他、細川ちか子、清水将夫、滝沢修、北林谷栄、小夜福子、宇野重吉などの民芸の人々が出演している。

1952年製作/98分/日本
原題:The Children of Hiroshima

ストーリー

石川孝子は昭和二十年八月七日原爆が投下された時広島に住んでいて、家族の中で彼女一人だけが生き残った。その後瀬戸内海の小さな島で女教員をしていた孝子は、原爆当時勤めていた幼稚園の園児たちのその後の消息を知りたいと思い、夏休みを利用して久しぶりに広島を訪れた。街は美しく復興していたが、当時の子供たちは果たしてどんなふうに成長しているだろうか。幼稚園でともに働いた旧友の夏江から住所を聞いて次々と訪問していく孝子だった。三平も敏子も平太も中学生になっていた。三平は子だくさんな貧しい父母の元で、靴磨きをして家を助けていた。敏子は原爆症で寝ていた。孤児の彼女は教会に引き取られて看護されていたが、明るい顔をして生きていた。平太も親を失って兄や姉の手で養育されていたが、一家は明るくまじめに生き抜いていた。孝子は亡き父母の下で働いていた岩吉爺やに出会ったが、息子夫婦を原爆で失い、老衰し、盲目になり、七歳になる孫の太郎と乏食小屋で暮らしているのだった。孝子は二人を島へ連れていこうとしたが、どうしても承知しないので太郎だけでも引き取りたいと思った。初めは承知しなかった岩吉も、孫の将来のためにようやく太郎を手離すことにした。孝子は広島を訪れたことによって色々と人生勉強をし、また幼い太郎を立派に育てようという希望を持って島へ帰っていくのだった。目の見えない岩吉は隣りに住む婆さんに手を引かれて、船着場からいつまでも孝子と太郎が去っていくのを見送るのだった。

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受賞歴

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映画レビュー

3.5悲惨な戦争がもたらす苦しさ

2022年9月25日
Androidアプリから投稿

乙羽信子扮する小学校教師石川孝子は、広島に帰るところであった。孝子ひとり原爆の後、生き残ったのだった。眼が見えなくなった元奉公人岩吉を見つけ岩吉宅へ行った。ピカドンの影響する病気はいつ出るともしれず病死する者もいた。悲惨な戦争は人の命を奪い、苦しさをもたらすものでしかなかった。映画としては乙羽信子が生徒の家を廻る淡々としたものであった。若い宇野重吉が印象的だったね。

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重

3.5一瞬のうちに

2022年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公は広島在住で、原爆で家族をすべて失っていた。
今は小さな島で小学校の教員をしているが、夏休みに当時、教えていた幼稚園児を訪ねることにする。
どのエピソードもとても悲しいものだが、子どもたちに希望を託す造りは良かった。

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いやよセブン

4.5悲しみの中の温かさ

2020年8月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

10年ぶりくらいに鑑賞。広島に原爆が落とされて75年。今年も人類史上最悪の過ちといっても過言ではない黒い歴史を振り返る季節がやってきた。人類史上最大の無差別大量殺人。死亡者数は約14万人。本作には被爆から7年後の広島が映し出される。原爆の被害から徐々に復興していく街並み。原爆の後遺症に苦しむ人々。消えることのない途方もない悲しさと苦痛が依然として漂い続ける。しかしその悲しさに寄り添って手を握る人間の温もりもある。悲しみの中の温かさに涙が出る。全体的に温かさに溢れた反戦映画。広島の食らった途轍もないダメージは想像することしか出来ないが、残されたフィルムが想像力を手助けしてくれる。被爆から7年後の広島を見て感じて、これからも後世に伝わっていってほしい作品。

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バンデラス

4.0新藤音羽コンビ

2019年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 めくらの岩吉さんは孝子の家で働いていた老人。顔は焼け爛れ、薄明かりを頼りに乞食をして生きている。生き残った孫を孤児院に預けざるを得ない状況に胸が痛む。その後幼稚園で一緒に働いていた夏枝を訪ねたが、原爆の影響で子供を生めない体になったと告げられショックを受ける。アルバムを見て懐かしく思い、かつて園児だった三平、敏子、平太の三人の教え子を訪ねることにした。三平を訪ねたところ、丁度父親がピカの影響で臨終する現場に出くわしてしまった。また、敏子は原爆症で教会で介護を受けていた。平太の姉は原爆の日に足を怪我したまま障害が残ったが、婚約者からは予定通り結婚しようと言われ、ようやく幸せを感ずることができた孝子であった・・・

 戦争、原爆の爪痕は障害、貧困、病気を植え付けていったが、人間の心までは奪えなかった。真摯に生きる姿と相互扶助、人間信頼の心を感じ取った。三平の作文には稚拙な文であるのに衝撃を覚えるほどの訴えがあり、心打たれました。できれば、他の子供たちの作文も掲載してほしかったかな。

 もっとも感動するのは平太の姉の嫁入りのシーンだったし、ラストの宇野重吉の乞食小屋が燃えるシーンでは、ひょっとして自殺の意図もあったのではないかと思われたので、ちょっとだけ評価がマイナスとなってしまいました。

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kossy
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