午後の遺言状

劇場公開日:

解説

別荘に避暑にやって来た大女優が出会う出来事の数々を通して、生きる意味を問うドラマ。監督・脚色は「墨東綺譚 (1992)」の新藤兼人。撮影は「墨東綺譚 (1992)」の三宅義行。主演は杉村春子と、1994年12月22日に逝去した乙羽信子。芸術文化振興基金助成作品。1995年度キネマ旬報ベストテン第1位ほか、監督賞(新藤)、脚本賞(新藤)、主演女優賞(杉村)、助演女優賞(乙羽)の4部門を受賞した。

1995年製作/112分/日本
配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画
劇場公開日:1995年6月3日

ストーリー

夏の蓼科高原に、女優・森本蓉子(杉村春子)が避暑にやって来た。彼女を迎えるのは30年もの間、その別荘を管理している農婦の豊子(乙羽信子)だ。言葉は乱暴だがきちんと仕事をこなす豊子に、庭師の六兵衛が死んだことを知らされた蓉子は、六兵衛が棺桶に乗せたのと同じ石を川原から拾って棚に飾る。豊子には22歳の娘・あけみ(瀬尾智美)がいた。子供のいない未亡人の蓉子は、あけみを自分の子供のように可愛がっている。翌日、別荘に古い友人の牛国夫妻がやって来る。しかし、夫人の登美江(朝霧鏡子)は痴呆症にかかっており、様子がおかしい。過去と現実が混濁している登美江を元に戻したい一心で、夫の藤八郎(観世栄夫)は蓉子に会わせたのだが、一瞬チェーホフの『かもめ』の一節を蓉子と空で言えたかと思うと、元の状態にすぐに戻ってしまう。と、そこへピストルを持った脱獄囚が別荘に押し入って来た。恐怖におののく蓉子たち。だが、男がひるんだ隙に警戒中の警官が難を救った。そして、蓉子たちはこの逮捕劇に協力したとのことで、警察から感謝状と金一封を受け取る。ご機嫌の蓉子たちは、その足で近くのホテルで祝杯を上げた。翌日、牛国夫妻は故郷へ行くと言って別荘を後にする。やっと落ち着ける蓉子だったが、近く嫁入りするあけみは実は豊子と蓉子の夫・三郎(津川雅彦)との子供だったという豊子の爆弾発言に、またもや心中を掻き乱されることになる。動揺した蓉子は不倫だと言って豊子をなじるが、あけみには真実を隠したままにしておくことになった。そして、結婚式を前にこの地方の風習である足入れの儀式が執り行われた。生と性をうたうその儀式に次第に酔いしれていく蓉子は、早く帰郷して舞台に立ちたいと思うようになった。ところが、そこへ一人の女性ルポライター・矢沢(倍賞美津子)が、牛国夫妻の訃報を持って現れた。驚いた蓉子は豊子を伴い、矢沢に牛国夫妻が辿った道を案内してもらう。二人が入水自殺を図った浜辺で、蓉子は残された人生を充実したものにすると、手を合わせる。別荘に戻った蓉子は舞台用の写真の撮影を済ませると、東京へ帰っていく。豊子は蓉子が死んだ時に棺桶の釘を打つために、以前拾ってきた石を預かるが、いつまでも死なないで強く生きて欲しいという願いを込めて、それを川原に捨ててしまうのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第19回 日本アカデミー賞(1996年)

受賞

作品賞  
監督賞 新藤兼人
脚本賞 新藤兼人
助演女優賞 乙羽信子
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映画レビュー

4.0懐かしい

2022年7月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD、映画館

当時の時代背景を盛り込んで結構なヒットを飛ばしたと記憶している。
ただ当時の若かった自分(ハリウッド史上主義的)には「なんだこの内容は」とたいくつに感じられた。
だが歳を取って観るとなるほど、こんな前から問題提起してたか?と思う。
なにしろ御大の新藤兼人が撮る作品はいつもこうなのだ。

小手先の言葉など使わせずストレートに色々セリフで言わせる。
裸だって惜し気もなくみせる。
人間の生臭さを、生を、性をさらけだしてみせる。

精神を病んだ強盗のゲートボール嫌いは多少はなるほどと思えるし、芝居がかった警官、マムシ捕まえてる松重豊(笑)民宿の男性、海辺の少年と妙に記憶に残る。
名演技とは思わないがどこか変な彼らは記憶の端に引っかかるのだ。

監督は高齢者にやりたいように生きろと伝えたかったように思う。
新藤監督の作品は大概、失われつつ何かをテーマにしているが、この作品公開の頃はバブル期終了でまだ世の中もフワフワしており、認知症の社会的な認知度がボケてきたの一言で済まされていた時代である。
そんなものに囚われたくないと夫婦揃って死を選ぶ…トコトンまで女優で生きる…。

この監督のメッセージを死ぬまで足掻いて生きろ!と私は受けとる事にした。

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うにたん♪(何観ても文句書きそうな気分)

4.0監督の想い。

2021年2月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

悲しい

二人の老女のひと夏の出来事。そこに老夫婦が絡む。
 たった数日のうちに、人生をひっくり返すような事件が起こり、告白があり。
 重いテーマを扱いながら、悲しい出来事もあるのにどこかコミカル。淡々と進む。
 「さっき、言ってた」となぜか繰り返す台詞があったり、相手の話をスルーしているようにみえる会話もあったりするが、通してみると、しっかりコミュニケーションが成立しているところが日常会話あるあるですごい。

正直、初見では、どこが、絶賛される映画なのかわからず。
映画に引用されるチェーホフの『かもめ』や『三人姉妹』を知っていたら、もっと理解できるのかな?

けれど、この映画が乙羽さんの遺作と知ってから見ると、その一つ一つの台詞が胸に響いてくる。
 乙羽さん、杉村さん、朝霧さんの実人生を彷彿とさせるところもあって、脚本を書いた監督が、この台詞を映画の中で言わせたことに驚いてしまう。言わされる役者もどんな思いでこの言葉を発したのだろうか?実生活と役柄をごちゃまぜにしていたら役者なんて続けられない。切り離しているのだろう。でも、実感を伴わない演技では、鑑賞者の心を打つことはない。

高齢の杉村さんの為に企画された映画。
 でも、杉村さんより年下の乙羽さんが癌に侵されて余命僅かなことがわかる。乙羽さんもご存じだったのか?夫である監督や息子である製作者は当然知っていたであろう。砂浜の場面では立っているのもやっとだったと聞く。杉村さんも知っていたのか?容子が泣き崩れて座り込み、それを気遣って豊子が座る場面の自然さ。でも、杉村さんが乙羽さんを気遣っての演技と見るのは、意味付けのし過ぎか?
 築地小劇場。杉村さんが女優人生を始めた場所。そもそも、この役柄が杉村さんの存在と被る。特に、Wikiにある中村メイコさんとのやり取りを踏まえると、胸に刺さってくる。
 実生活でも夫に献身的に尽くした朝霧さん。
 実生活でも不倫状態が長く続いた乙羽さん。乙羽さんご自身は子どもを産むことはなかったが、監督と作り出した映画の数々が子ども?とはベタすぎるか。
 そして認知症。高齢ならば、いつでも背後に忍び寄る影。
 その一言一言が、大俳優4人+監督の”遺書(生き様)”のように聞こえてくる。
なんて映画だ。

どう生きてきたか、生きるか。普遍的なテーマ。監督の、この時点での一つの答え。

と同時に、90年代を強烈に意識させてくれもする。
 老人性痴ほう症と呼ばれていた頃の雰囲気そのまま。認知症と呼び名が変わった今なら、もう少し介護しながらの生活の仕方はあると思う。尤も、老々介護の悲劇は今も起こっているが。
 肩パットの入ったジャケット。懐かしい。

そして、松重氏の大根さ(わざと?)が可笑しい。
内野氏は、顔もはっきり映らない。
そんなところもクスっとしてしまう。

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とみいじょん

4.0「八月の鯨」がまた観たくなった

2021年2月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

老いについての思いや深刻な話を、
時にはユーモアを交え、上手く集約して
みせた脚本は見事というしか無い。

ただ脱獄囚と警察に関するエピソードが
長すぎる感があったり、
倍賞美津子の記者のカメラシーンが
目立ち過ぎてうるさくと感じたり、
海からの棺桶シーンをもう少し幻想的に
描いて欲しかった等々、
気になる点はいくつかあり、
より主役2人の描写に焦点を絞って
欲しかったとの印象は持った。

しかし、老いに関する邦画の中では、
名画中の名画で、
また観る機会はありそうだし、
リリアン・ギッシュとベティ・デイヴィスの
「八月の鯨」がまた観たくなった鑑賞にも
なった。

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KENZO一級建築士事務所

3.0誰でも一緒

2020年7月14日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

人間だもの、みんな死ぬ。劇場公開時鑑賞。
老いてもなお…みたいなところに人間の業を感じる。え、今なの?っていう。

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なお
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