写真家・藤代冥砂&若木信吾、独自の言い回しでタル・ベーラを絶賛
2012年2月18日 18:32
「神は死んだ」の言葉で知られる、哲学者ニーチェの逸話にインスパイアされる形で生まれた本作。暴風が吹き荒れる田舎で暮らす農夫と娘、そこで飼われている疲れ果てた馬の6日間の物語がつづられる。
2人は、タル・ベーラ監督への最大限の敬意と賛辞を込めて本作を「眠くなる映画」と断言。藤代氏は、「これは若木くんの言葉なんですが、良い映画というのは眠くなるもの(笑)。その意味でこの映画は眠るための映画と言える」とユーモアをこめて称賛する。過去の多くのタル・ベーラ作品同様、本作もモノクロで撮影されているが、藤代氏は「写真でも同じですが、モノクロの世界はいろんなものを見せてくれる。監督は想像力によって見えない色や粒を感じているんでしょうね。その中で僕は映画の中に吹く“風”を強く感じました」と本作の映像が持つ力について語った。
若木氏は先日、来日したタル・ベーラ監督にインタビューをしたといい「目が強くて、僕がしゃべっている間、言葉は分からないのにずっとこちらをにらんでいるんです。話していることはお茶目なのに怖いくらいににらんできて緊張しました(苦笑)」と述懐。タル・ベーラ監督は本作を「最後の作品」と公言しているが、若木氏は「最初にそのことを聞いたら『映画の中に全てある』と言われました(笑)。監督はなるべくミニマムな映画を撮ろうとしている。省いて、省いて『これ以上やったら自己模倣になってしまうから最後にした』とおっしゃっていました」と明かした。若木氏自身、映画監督経験があるだけに、長回しが多く緊張感にあふれると言われるタル・ベーラ組の「現場を見てみたいですね」と思いを馳せた。