小林啓一監督、長編デビュー作が作品賞受賞に感激
2011年11月8日 20:16
[映画.com ニュース] 気鋭の映画監督・小林啓一が11月8日、長編デビュー作「ももいろそらを」が第24回東京国際映画祭(10月22~30日)日本映画・ある視点部門作品賞を受賞したことを記念し、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した。今作は、「“女子高生”という日本のポップカルチャーが、世界でどう受け入れられるか楽しみ」という理由で、日本のインディペンデント作品を育てるため設立された同部門で受賞。小林監督は、「力を込めて一生懸命つくった。『信じれば誰かが必ず見てくれる』と信じてやってきて本当によかった」と感慨もひとしおだった。
「“今”はすぐに過去になってしまうので、それを表現するためにモノクロにした。見方を変えれば世界は違って見えることを表現したかった」ため、全編モノクローム映像で製作された。大金を拾った女子高生と友人が巻き起こすアクシデントを通して、現代に生きる若者の瑞々しい表情を描く。
「あえて大人を出さずに、女子高生を追いかけていれば面白いことが起こるということを描いた」という本作は、現役高校生の池田愛、小篠恵奈、藤原令子、高山翼ら若手俳優の視点から、等身大の高校生の日常を映し出した。池田演じる主人公いづみの人物像は、小林監督の理想の女性を落とし込み“粋な女の子”を表現。「緊張したけれどいい経験になった」という池田は、「いづみは口調もふだんの自分とは違っていたけれど、性格や生活を監督と話し合ってなりきった」と述懐した。
ミュージックビデオ、テレビCMなどでキャリアを築いてきた小林監督は、「派手な世界だけれど、(クライアントの存在があるので)あまり自分のやりたいことができないんです」と吐露。これまでの映像製作にフラストレーションを感じていたことを明かし、「この作品は自分の一番好きな形です」と自信をのぞかせた。
東日本大震災の影響で一時は開催が危ぶまれたが、「映画の持つ力を通して広く伝えるべき」(依田巽チェアマン)という思いから開催された同映画祭には、75カ国以上から975作品が寄せられた。「フランス映画「最強のふたり」が最高賞となる東京サクラグランプリ、役所広司と小栗旬が初共演した「キツツキと雨」が審査員特別賞、「プレイ」のリューベン・オストルンド監督が最優秀監督賞、「ガザを飛ぶブタ」が観客賞を受賞した。