宮崎駿「文明論を語る時期ではない」ジブリ新作にも震災の影響
2011年3月28日 15:40
[映画.com ニュース] スタジオジブリの最新作「コクリコ坂から」の主題歌発表会見が3月28日、東京・小金井市のスタジオジブリで開かれ、メガホンをとる宮崎吾朗監督、主題歌「さよならの夏~コクリコ坂から~」を歌う手嶌葵、企画と脚本を手がける宮崎駿らが出席した。宮崎駿は、3月11日に発生した東日本大震災を受けて、「いまだ埋葬できずにいる多くの人を抱え、国土の一部を失いつつあるこの国で、アニメを作っている自覚をもって仕事を続けている。文明の模索と向き合う時期を迎えたが、今は軽々しく文明論を語る時期ではない」と語った。
原作は「なかよし」(講談社刊)で1980年1~8月号に連載されていた高橋千鶴・佐山哲郎(原作)の少女漫画。平凡な女子高生の海が、新聞部の風間俊や生徒会長の水沼史郎のペースに巻き込まれながら、ドタバタな日常生活をおくる姿を笑いあり、涙ありで描く。宮崎駿の長男である吾朗監督にとって、監督デビュー作となった「ゲド戦記」以来5年ぶりのメガホン。手嶌は「ゲド戦記」以来、2作目のジブリ主題歌を歌う。
宮崎駿は「今はファンタジーを作る時期ではない。(ファンタジーが)あまりに多く作られ過ぎて、ゲーム化している。だから我々がゲームを作ることはなかろうと。今こそ等身大の人間を描かなければ」と熱弁。同作の企画は「時代の変化に耐えられるかが関心事だったが、今は間違いではなかったと思っている。海の願いが、これからの時代には必要」。さらに「日本は自然に恵まれた国。こんなこと(東日本大震災)があっても、より美しくある甲斐がある国」と宮崎流のエールをおくった。
吾朗監督は「映画を作っていられること自体、支えられていると実感する。作品を作ることで、震災に遭った方の支えになれば」。手嶌は「すてきなことが2回もあるのは幸せ」と喜びを語る一方で、「一緒に手を握り合いながら、前に進んでいければ」と被災地に思いを馳せ、涙ぐむひと幕もあった。
会見後にはスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが取材に応じ、「一概には言えないが、現在仕上がっているのは全体の50%。予定より遅れてはいるが、公開日に公開することが僕らの責務」。スタジオのある小金井市は、現在、東京電力が行う計画停電の対象エリアで「今のところ停電にはなっていないが、もし停電になれば、サーバーの映像が吹っ飛ぶ可能性もあるので、コンピュータ作業は夜に行っている。でも夜の作業は、はかどらない。地震の影響は多大です」と現状を報告した。また、スタジオジブリとして、すでに被災地への支援にも乗り出したが、具体的な内容は「公表することはやめました。一人歩きしてしまうのもつらいので」と説明した。
「コクリコ坂から」は7月16日から全国公開。
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