「ウォッチメン」映画化権をめぐる裁判で、ワーナーが敗北!
2008年8月20日 12:00
[映画.com ニュース] ワーナー・ブラザース映画(WB)が“第2の「ダークナイト」”にするべく、来年3月6日の全米公開に向けて製作中のダークヒーロー超大作「ウォッチメン」(ザック・スナイダー監督)に大きな暗雲が立ちふさがった。
今年2月、アラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画による同作の原作グラフィックノベルの映画化権について、20世紀フォックス映画(FOX)からWBに対し権利の侵害があると訴えていた裁判で、カリフォルニア州の連邦地裁は8月18日、映画化権の全権利はFOXにあるという判決を下したのだ。
事件の経緯はこうだ。86年から90年にかけてFOXが原作の出版元DCコミックから原作全巻の映画化権と、チャールズ・マッケオン(「パルナッサス博士の想像力」脚本家)らによる脚本の権利を取得。91年にFOXはそれらの権利をラルゴ・インターナショナル(「マルコムX」製作会社)に売却したが、94年にラルゴはあえなく廃業となり、同作の権利を製作者ローレンス・ゴードン(「ダイ・ハード」シリーズ製作者)が譲り受けた。
ところが、FOXがラルゴに売却した91年も、配給権はFOXにあるとするオプション契約を結んでおり、ゴードンに譲渡された94年も、FOX以外で映画化する場合は事前に映画化権を買い戻さなければならないというオプション契約を結んでいたのだ。FOXの主張を裏付ける映画化権に関する記録文書が連邦著作権局には残っており、どう転んでもWBに勝ち目がない。
それなのに、WBは07年から1億ドル(約110億円)の製作費を注ぎ込んで実写映画化を開始した。すでにメイン撮影は終わり、09年3月6日の全米公開に向け、ポストプロダクション中だった。
連邦地裁の判決は、WBにすぐさま製作を止めること、もしくはFOXが主張する映画化権をWBが買い戻すことを命じている。さもなければ、オプション契約で定められた条項に従い、WBは全収益の2.5%という大金をライバルのFOXにみすみす支払うしか方法がないようなのだ。
“グラフィックノベルを超えた”という魅力的原作だからこそ起こったこの裁判劇。現在のスナイダー監督版「ウォッチメン」の前評判が高いだけに、映画ファンのためのハッピーエンドをのぞみたい。