ぼくは君たちを憎まないことにした

劇場公開日:

ぼくは君たちを憎まないことにした

解説

2015年のパリ同時多発テロ事件で最愛の妻を失ったアントワーヌ・レリスが、事件発生から2週間の出来事をつづった世界的ベストセラーを映画化。

2015年11月13日の朝、ジャーナリストのアントワーヌと幼い息子メルヴィルは、仕事へ急ぐ妻エレーヌを送り出す。しかしその夜、パリで多数の犠牲者を出すテロ事件が発生し、エレーヌも命を落としてしまう。アントワーヌは誰とも悲しみを共有できない苦しみと今後の育児への不安をはねのけるように、妻の命を奪ったテロリストへ向けてメッセージを書きはじめる。ひと晩で20万人以上がシェアした彼の「憎しみを贈らない」宣言は、動揺していたパリの人々を落ち着かせ、テロに屈しない団結力を生み出していく。

主演は「エッフェル塔 創造者の愛」のピエール・ドゥラドンシャン。「陽だまりハウスでマラソンを」のキリアン・リートホーフが監督・脚本を手がけた。

2022年製作/102分/G/ドイツ・フランス・ベルギー合作
原題または英題:Vous n'aurez pas ma haine
配給:アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2023年11月10日

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(C)2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion

映画レビュー

憎しみという“贈り物”

2024年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 死者130人に及んだイスラム過激派による2015年11月パリの同時多発テロで35歳の妻を亡くした男性は、その知らせを受けて大きな悲嘆に暮れ混乱のさなかで犯人たちに向け「ぼくは君たちを憎まないことにした」とFacebookに書き込みました。それは忽ち爆発的に拡散され、大きな注目を集めました。そのメッセージは以下のようなものです。

ーーーーー

金曜の夜、君たちはぼくにとってかけがえのない人の命を奪った。彼女はぼくの最愛の妻であり、息子の母親だった。

だが、ぼくは君たちを憎まないことにした。

君たちが誰か知らないし、知りたくもない。君たちの魂は死んでいる。

君たちは、神の名において無差別に人を殺したが、もし神が自らの姿に似せて人間を作ったのだとしたら、妻の体に撃ち込まれた銃弾のひとつひとつが神の心の傷になっているだろう。

だから、決して君たちに憎しみという“贈り物”をあげることはない。

君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。君たちは、ぼくが恐怖におののき、隣人に疑いの目を向け、安全のために自由を犠牲にすることを望んでいるのだろう。

だが君たちの負けだ。ぼくは変わらない。

今朝、妻に会った。何日も待ち続けた末に。

彼女は金曜の夜に家を出たときのままで、そして12年以上も前にぼくが恋に落ちたときと同じように美しかった。
もちろん、ぼくは悲しみに打ちのめされている。君たちの小さな勝利を認めよう。でもそれは長くは続かない。
妻はいつもぼくたちとともにあり、再びめぐり会うだろう。君たちが決してたどり着けない自由な魂の天国で。
ぼくと息子は2人になったが、世界中の軍隊よりも強い。そしてこれ以上、君たちのために割く時間はない。
昼寝から目覚めたメルヴィルのところに行かなければいけない。

彼は生後17ヵ月で、いつものようにおやつを食べて、いつものようにぼくと遊ぶ。そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう。

君たちは、彼の憎しみを勝ち取ることもないのだから。

ーーーーー

 本作は、この事件発生から妻の遺体との対面、葬儀・埋葬までの約2週間を描いた実話に基づく物語です。彼が憎しみを抱いていない筈はないと思うのですが、絶望と憎悪に呑み込まれない様にするにはこの言葉を紡ぐしかなかったのでしょう。

 周囲からの同情や哀れみを素直に受け入れられぬ思いも正直に綴られ、この発信が注目を集めた結果、英雄や聖人の様に扱われる事への違和感も吐露されています。

 僕がこの映画を観たのが、京都アニメーションへの放火犯人への地裁での死刑判決が下りた日でした。安易な類推は不謹慎かも知れませんが、理不尽な死(理不尽でない死があるのかどうか分かりませんが)が世界に満ち満ちている事に暗澹たる思いがしました。

 本作の原作本が日本でも出版されています。こちらは本当に平易な言葉で淡々と綴られているが故に遣る瀬無さが一層心にしみました。

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La Strada

4.0葛藤

2024年8月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

憎まないと決めた気持ちと、抜け出せない悲しみの狭間。 そこに小さい我が子。
1人で育てていかないといけない大変さも同時に伝わった。
面白い作品でした。

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ノブ様

4.0テロという暴力に非暴力で抗う意義と困難を、被害者に寄り添う視線で描いた一作

2024年6月17日
PCから投稿

家族をテロで失った作家に常に寄り添うような映像が印象的な一作です。テロの具体的状況など凄惨な描写は最小限に抑え、悲しみを抱えた主人公がそれでも前に進もうとする姿を丹念に描いています。

本作は2015年に実際にフランス・パリで起きた同時多発テロを題材としており、主人公のアントワーヌ・レリス(ピエール・ドゥラドンシャン)もまた、実在の作家です。タイトルはテロで妻を亡くしたレリスが、SNSで発表した声明の一節。鑑賞前はこのメッセージの発表までの過程を描いた映画なのかな、と想像していましたが、実際には序盤ですでに発表までのいきさつを描き、物語の大部分はその後の、レリスの葛藤を描くことに重点を置いています。

暴力に対して暴力で報復することは互いの憎悪を高めあうことにしかならない、そう理解はしつつも、どうしようもなく湧き起ってくる怒りにどう対処したらいいのか、帰ってこない母を恋しがる子供にどう接したらいいのか。これらは簡単には答えられない問題だけに、レリスの苦しみは直接的に観客に届いてきます。

世界各地で争いと憎しみの連鎖が続いている今だからこそ、観られるべき作品であることは間違いありません。

なお作中では、テロに至る経緯や、実行グループ側の人物像、思惑についてはほぼ割愛しているので、事前でも事後でもテロ事件について知っておくと、より一層作品の理解が進むかも。

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yui

4.0【”君たちに憎しみを贈らない。”パリ同時多発テロ事件で妻を亡くしたジャーナリスト、アントワーヌ・レリスの世界的ベストセラーを映画化。幼き息子が”ママ、ママ”と探すシーンは可哀想で・・。】

2024年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

■2015年11月13日金曜日の朝。
 ジャーナリストのアントワーヌは息子のメルヴィルと一緒に、仕事に急ぐ妻のエレーヌを送り出した。
 その妻が突然、テロに会い戻って来ない。
 焦燥や混乱の中、妻を探し回るアントワーヌ。
 二日後、エレーヌの遺体を見て、アントワーヌは妻の命を奪ったテロリストへ手紙を書き始める。

◆感想

・今作では、パリ同時多発テロ事件の凄惨なシーンは一切描かれない。妻とバタクラン劇場へ行っていたブリュノの証言だけである。

・だが、それが逆に今作のアントワーヌの深い喪失感を醸し出している。

・エレーヌの死を目にしたアントワーヌは、静な表情でパソコンに向かい”君たちに憎しみを贈らない。”と記し、投稿する。
ー このアントワーヌの言葉は、当時のフェイスブックで20万回以上共有され、身内がテロに会った人たちの心を、慰め、テロリスト達への攻撃も最小限に収まった。-

■劇中、アントワーヌが語った名言。

”僕が恨みを抱いたまま息子を育てたら、犯人たちと同じ、世界の暗い面しか見ない人間になってしまう。”

■劇中、アントワーヌの投稿を見たフランス人から届いた言葉。
”テラスでワインが武器になるなら、僕らは最強だ。

<現在でも、憎しみに満ちた戦争、テロが世界各地で終わりなき様相を見せている。
 だが、アントワーヌが発信した力強いメッセージこそが、憎しみの連鎖を止める事が出来るのだと、私は信じたい。
 ”ペンは剣より強し。”という言葉を、私は信じたいと思った作品である。>

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NOBU

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