首のレビュー・感想・評価
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戦国時代でアウトレイジは当たり前の気がする
前作「アウトレイジ最終章」から6年振り、19 作目に当たるたけし映画の最新作である。本能寺の変の謎を解こうとする新説は数多い中にあって、新たに一つ追加されたということにはなるが、信憑性はかなり低いように思えた。
本能寺の変の本質は、信長が討たれたというだけではなく、家督を相続済みだった嫡男信忠も同時に討たれたことによって、織田家の家督が宙に浮いた形となったことである。信長だけが討たれたのであれば、信忠が全てを相続して、その後の展開は信忠の器量次第だと思うが、清洲会議と賤ヶ岳の戦いと小牧長久手の戦いを経て秀吉の手中に収まるという展開にはならなかったはずである。
京に信長と信忠の親子が僅かな距離を隔てて両方共にいるというのは、謀反が発生した場合には織田家の存亡に関わる事態であり、危機管理が全くできておらず、謀反側から見れば千載一遇の機会であって、偶然発生したと考えるのは無理がある。何事にも用意周到だった光秀が、そんな偶然に自分の一生を賭けるとは思えず、何らかの方法でこのような状況を作り出した上で攻めかかったはずである。
しかし本作ではこのような状況に至った理由は触れられず、信忠の死は台詞で述べられるだけという実に軽い扱いだったのは、上記のような本能寺の変の本質をたけしが見誤っていることを示していた。また、光秀が謀叛を決意するに至る理由が、後継者についての信長の真意と、信長と光秀の主従を超えた関係性にあるというのは、発想があまりに吹っ飛び過ぎていていたと思う。
残虐シーンはたけし映画の売りの一つで、今作でも容赦ない描写が連続しており、よくこれで R15+ で済んだものだと思わせられた。ただ、肝心の首の重さが感じられなかった。成人男性の首の重さは 6kg ほどあり、重めのダンベルほどの重量であるので、軽々と持ち上げたりするのは違和感があり、まして水に浮くなどということはあり得ない。血糊や切断面にこだわるなら、重量にもこだわってほしかった。
信長に直接会ったことのある宣教師ルイス・フロイスの手紙によれば、非常に甲高い声で喋っていたというので、加瀬亮の信長は実際とそれほどかけ離れていないのかも知れないが、行動は「アウトレイジ」3部作に出て来たどの暴力団組長より品がなく、到底受け入れ難かった。肖像画でも月代を剃っていたのは明白であるのに、またしても総髪である。総髪は医師や学者などの非戦闘員の髪型であって、総髪の信長というのは明らかな誤りである。
大河ドラマなどに常連の実力派俳優が多数揃っているが、登場人物が多過ぎて一人一人の描き方が中途半端になっている。また、言葉遣いも現代語のままであるので重厚感に欠け、正統的な時代劇の風格が感じられない。暴力描写も、「アウトレイジ」のような現代劇であれば異常性が際立つが、戦国時代の合戦や敵情視察で人が死ぬのは当たり前なのでインパクトに欠ける。茂助のような架空の人物がどのような結末になろうと問題ないが、後に秀吉の御伽衆となる荒木村重や曽呂利新左衛門の生涯を勝手に変更してはダメだと思う。
そもそも本能寺の変の時点で 45 歳だった壮年期の秀吉を 76 歳でメタボ体型のたけしが演じるというのも無理があるし、相変わらず滑舌が悪くて台詞が聞き取りにくいのは難点である。時々ガス抜きのようにギャグシーンが挟まれるが、観客は期待していた訳ではないと思うし、それほど笑えた訳でもなく、不要だったのではないかと思う。
音楽はたけし映画に初参加の岩城太郎で、非常に重厚感のある曲を書いていたのは流石だと思った。今年の「ちむどん家康」でわざと調律を外したピアノの音を聴かせて自己満足に陥っているド変態作曲家とは、バッハとゴキブリほどの差がある。これまで「葵・徳川三代」と「義経」で大河ドラマを担当しておられるので、是非再登板をお願いしたいところである。エンドロールに何の関係もない歌謡曲が流れなかったのも良かった。
(映像5+脚本3+役者3+音楽5+演出3)×4= 76 点
うーん。
ちゃちい
戦国時代の狂気と冷酷さ、儚さを描く 異例の北野流、時代劇版「アウトレイジ」
たけし監督やり放題!
下手なコントを見たいわけでは無い
きのう何食べた
「首」を長くして待ってました!極上のエンターテイメント!
北野武監督の新作をそれこそ「首」を長くして待っていたので楽しみでした。
そして観たあと「そうか、北野監督だもんな」と今更の如くその手触り感を思い出したのでした。
「時代劇版アウトレイジ」という印象でした。でも時代劇としてとても新鮮な感じがしました。時代劇はどうしても作者の考察が大きく影響すると思いますが、時にそれは美化されてしまうこともきっとあります。でも、北野監督の描き方を見ると「実際はこんな感じだったのかも」とリアリティが出ます。そこが面白かったです。
血生臭いストーリーの中にちゃんと笑えるエッセンスも盛り込んであって、これも妙なリアリティを醸し出してて。気がつけば極上のエンターテイメント作品になっていました。
時代劇の面白さを味わえました。
見応えはあるが、おもしろさは…
北野武監督作品で、予告もおもしろそうでしたので、それなりに期待していた本作。率直な感想としては、見応えはありましたが、おもしろかったかと問われれば、つまらなくはなかったという印象です。
ストーリーは、織田信長が自身の跡目相続を餌に、謀反を起こした荒木村重の捜索を命ずる中、この機に乗じて豊臣秀吉が家臣や元忍たちと画策して織田信長や明智光秀を陥れ、天下を取ろうと暗躍するさまを描くというもの。本能寺の変の謎は、さまざまな作品で描かれてきた鉄板ネタではありますが、本作ではそれを新たな人物像や解釈で描こうとしています。
荒木村重の反乱、家康饗応役での光秀の失態、本能寺の変、高松城の水攻め、中国大返し、山崎の戦いと、一連の歴史的イベントをきちんと押さえているあたりは好感がもてます。それでいて、独自の解釈として、裏で張り巡らせた謀略や暗躍する元忍などを絡めて、おもしろさを生み出していると感じます。また、光秀と秀吉にスポットを当てることで、比較的わかりやすく仕立てているところもよかったです。
とはいえ、それでもある程度の歴史的素養がないと難解に映るのではないかと思います。かく言う私も、理解が追いつかない部分がありました。また、思いのほかグロシーンが多く、そこまで描く必要性があるのかと感じます。タイトルの「首」は、天下人から農民まで、己の首をかけて相手の首を狙う、血で血を洗う戦国時代の惨たらしさを訴えているのかもしれません。その一方で、首をかける人々の行動を冷ややかに笑い、他人の命が失われることを意に介さない秀吉の冷酷さを描いているのかもしれません。
キャストは、ビートたけしさん、西島秀俊さん、加瀬亮さん、中村獅童さん、木村祐一さん、遠藤憲一さん、寺島進さん、浅野忠信さん、大森南朋さん、他にも名の知れた俳優をずらりと並べた、かなり豪華な布陣です。それなのに、コミカルな雰囲気を醸すビートたけしさんの演技が(これはこれで嫌いではないですが)、本作の雰囲気からは浮いているように見えて、他の役者との相乗効果を生み出せていないように感じました。あと、年齢的にも、信長役の加瀬さんよりずいぶん上で、史実と大きく異なるのも気になりました。また、加瀬さんを始め、聞き取りにくいセリフが多かったのも残念でした。三河人の私でさえこうなのだから、他地域のかたにはなおさらだったかもしれません。
戦国時代の話だけど“サムライ”が出てこない
残酷場面に弱いんでそのへんは、あぁいやだなと思いながら観に行ったんですけども、思ってたより大丈夫でした。
戦国時代の話ですけど、いわゆる“サムライ”が出てこない。「武士道」だとか「侍魂」だとか、そういうヒロイズムやらダンディズムやらを帯びた登場人物がいないんですね。みんながパワーゲームに振り回されるプレイヤーであって、一喜一憂右往左往の滑稽さを俯瞰で見る感じの映画。だからあんまり登場人物に感情移入することもないから、それぞれの死に悲壮感とか陰惨さを感じずに見進めることができましたね。最近観たスコセッシの『キラーズオブザフラワームーン』をもっと乾燥させた感じの印象でした。悪趣味なまでの人命軽視は、最近の世の中への逆説的な批判というか風刺というかで、「芸術映画監督の北野武」というよりは「TVタックルとかのビートたけし」らしい映画だなって感じましたね。
オールキャストの戦国絵巻
んー、ん〜… 良かったと言いたいポイントを探してるけど、うーん… ...
男色の戦国の世
今年のNHK大河ドラマとなった戦国時代を舞台に、北野たけしが監督・脚本・主演も手掛け、たけし色がかなり強く染み出た戦国絵巻。史実を元にしながらも、信長、秀吉、家康・光秀、官兵衛、村重等のキャラも大いにアレンジする中で、戦国武将達が密かに抱える野望と策略が描かれている。
北野作品だけあり、大河ドラマでは決して描くことができない、刀を突きさし、血しぶきが舞う戦闘シーンや生首を切り落とすシーンが、ふんだんに盛り込まれている。実際の戦場は、きっとこんな感じだったのだろうと思わせるリアルさが伝わってきた。北野監督が『アウトレージ』等でも魅せた、血生臭いバイオレンス・アクションシーンをしっかりと受け継いだ集大成として、壮大なスケールの戦乱の世が描かれている。
そして、何より驚かされたのは、光秀、村重、そして信長までもがオッサンズ・ラブの構図になっている事。光秀を演じた西島秀俊は、『きのう、何食べた?』でも、内野聖陽との恋人関係を演じ、なかなか好評だったが、今回の村重役の遠藤憲一や信長役の加瀬亮の男色シーンは、正直、目を背けたくなった。しかし、これも北野作品でなければできない演出なのだろう。
物語は、信長が天下統一に動き出す中で、傍若無人の信長に認めてもらえない家臣・荒木重信の謀反を起こすが、失敗に終わる所から始まる。逃げ延びた村重を捕える為に、信長は跡目相続を餌に、大名達を重信捜索にあたらせた。しかし、その裏で秀吉は、信長を亡きものとして天下人となる為に、黒田官兵衛や実弟・秀長等と共に、明智光秀を信長討伐大将に担ぎ上げようと策略を練っていた。そして、本能寺の変から明智軍の全滅へと結びついていくのだが、ラストシーンは、あっけない幕切れで、物足りなさも感じた。
出演者については、たけし監督の元、これまでに彼の作品出演に声のかかった日本を代表する豪華な俳優陣が集結した。誰もが主役を張れる中、秀吉の北野武、秀長の大森南朋、官兵衛の浅田忠信の3人で語るシーンは、台詞と言うよりコントを観ているようで、アドリブ合戦の様相で笑いを誘う。そんな中で、信長役の加瀬亮と百姓上がりで秀吉に憧れる難波茂助役の中村獅童は、これまでにない役回りで異彩を放っていた。
今年の大河ドラマでも、その史実とは違う脚本に異議もあがったようだから、本作については、それ以上に賛否両論となるだろう。
面白かった。光秀の歪んだ恋と、秀吉の現実的な農民っぷり、 忍者のか...
下郎、わしの首が欲しいか。
冒頭の、水辺にほったらかしにされた兵の死体の映像を見ながら、やってくれるなあと期待が高まって、加瀬亮の尾張弁丸出しの信長を目の当たりにして、こりゃいいぞと前のめりになった。
だが、いわゆる出オチ。その後、誰が出てきても、何を言っても、どんどんシラケる。たけしの秀吉はコスプレだと思ってるから気にもならないが、他が半端に寄せようとしてるから気に障る。だいたい、なんで信長だけ尾張弁なんだよ。ピエロかよ。映像は凝ってはいるけれど、むしろその金をかけた分と内容の稚拙さのギャップが酷くて、鑑賞に耐えられない。
オッサンズLoveに全振りするのは構わない。だけど、そっち寄り(史実かどうかこの際どうでもいい)にするのなら、もう少し言葉が現代風なのを改めてくれないかな。結局、ラストの秀吉のセリフが肝なんでしょ。くだらないものに拘っていることへの皮肉が。だけど、設定が我慢できないほどにめちゃくちゃ。西島がニッコリするたびにイラっとしていた。それならどうかコメディにしてくれ。
首はどこじゃ
ヒーローとして描かれてきた戦国武将を別の角度から描いた作品。
織田家の重臣だけでなく足軽や忍び、落ち武者狩りの農民に至るまで、江戸明治期に美化され作品化されてきた戦国という世の中の雰囲気を、当時のリアルにより近いもので感じることが出来る。
北野映画であるかどうかに関わりなく、今作のようないびつで汚い殺し合いの時代、命が今よりずっと軽かった時代、男色が当たり前にあった時代がそのままの価値観で描かれた作品が世に出てきたことに大きな意味があったように思う。
ビートたけしとしての力量によるブラックジョークに満ちた脚本やアドリブに思わず笑ってしまう場面もあり、時代ものとしての演出と現代の作品としての演出がはっきり提示されていたこともよかった点であった。
終わり方も好印象でした。
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