首のレビュー・感想・評価
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狂気を引き出すコメディの妙。そのバランス感覚がすごい。
◯作品全体
本作のポスターにも書いてある「狂ってやがる」な人物たちとは対照的に、バランス感覚のある作劇だった。織田家の中でも重臣同士で探りあいがあり、あわよくば上手く出し抜いて突き落そうとする関係性は、言ってしまえば北野監督の『アウトレイジ』と同じ文脈だと思う。しかし、そこにコメディチックな演出や同性愛の要素を入れることで人間味を醸し出し、シリアスとコメディの雰囲気、どちらにも偏りすぎずに物語が展開されていく。
これをシリアスな要素だけに傾けるならば、やはり『アウトレイジ』になるし、シリアスとコメディを切り分けると『ソナチネ』になってしまう。さらに言えば過去2作品はどちらも現代を舞台としていて、「日常の中にある狂気」が一番の特色になっていた。本作では戦国時代である以上、時代劇という背景が付いて回る。その時代の日常ももちろんあっただろうが、今とは異なる生活を見せたところで狂気が引き立つとは思えない。
だからこその、コメディなのだと思う。コメディの写し方は徹底して秀吉、秀長、官兵衛をトリオユニットのように写す。3人が映るカットはほとんどがフルショットで、現代に放送されているバラエティ番組のカメラのようだ。しかし話す内容は光秀への策謀であり、曽呂利の使い捨て方だ。コメディチックな雰囲気をまとうのは各シーンのわずかな時間だが、策謀で生み出される因果の生生しい描写によって「人間味ある狂気」という不気味極まる絵面が作られていた。
物語の流れだけ追ってしまうと、本能寺の変を取り巻く策謀を秀吉と光秀を中心に描いた歴史ドラマ、という大河ドラマや正月特番で見たような作品だ。しかし、戦国時代の人物たちの考えや行動によってもたらされた結果がどれだけ惨たらしいものだったか、というのはドラマでは綺麗に撮られすぎているし、教科書では「倒した」で終わってしまう。グロテスクなだけでは「それがあたりまえ」の映画になってしまうという凄惨さをコメディによって絶妙なバランスで映しているのが、この映画の凄いところだと思う。
コメディと狂気を内包するラストの首実検のシーンは、まさしく集大成だった。数多く転がった首を整えさせ、三人でそれを吟味する。やっていることはグロテスクそのものだが、あの時代での大将の判別はそうするしかないし、当然の行為なのかもしれない。それでも茂助を思い出し軽口を叩きながら首を眺める3人は、コメディであり狂気だ。その2つの要素が絶妙に同じ画面でひしめいているのが、とにかく不気味で、面白い。
◯その他
・序盤で茂助が一番狂ってると思ったけど、最後まで見ていると一番の常識人だとわかる。庶民が狂気の世界に踏み出したことでわかりやすく狂ってしまったけど、一番狂ってるのは狂っているのかわからないぐらい狂気の世界に浸かったやつらなんだな、と。最後まで友人の幻影を見ているところで、狂いきれなかった茂助が透けて見えた気がした。
・なんか『真田丸』っぽいキャラが多かった。徳川家康のちょっと抜けた感じとか、般若の佐兵衛がまんま出浦昌相だったりとか。でも北野監督の気持ちはわかる。出浦昌相やってる寺島進かっこよかったもん。本作もやっぱりかっこよかった。
・信長がバリバリの名古屋弁っていうのがツボだった。「やっとかめ」って歌以外で初めて聞いた。
Origins of the colloquial term
Kubi is the perfect pairing to Shogun, featuring part of the story of the TV series and some of the same characters with their original names. It’s among the most ambitious Japanese historical productions in recent memory, perhaps since Sekigahara. Based on Kitano’s novel, he balances Japan’s feudal history with his own career achievements. A bloody and stylish look at Japan’s fascinating past.
役者冥利に尽きる戦国顔見世興行
北野武が構想に30年を費やしたという戦国時代劇は、ジャンル映画のルーティンをことごとく駆逐して痛快極まりない。
ネタになる"本能寺の変"をいったいこれまで何回見てきたことだろう。かつて、そこには武士のこだわりと執念と、運命がもたらす悲劇が描き込まれていたはずだが、武版"本能寺の変"では武将たちが男色で繋がり合い、首を取った取らないで一喜一憂している姿が皮肉を込めて描かれる。権力者の野望なんて、所詮そんなものだと言わんばかりに。
明らかに、NHKの大河ドラマで描かれてきた戦国ものに対する反論を感じる。その向こう側には黒澤明が晩年に監督した戦国絵巻があるかも知れない。監督が敬愛する大島渚の『戦場のメリークリスマス』や、特に『御法度』の影響も感じなくはない。
でも、北野監督がベースにして来たお笑いのセンスが本作をユニークなものにしている。嬉々として武将たちを演じる俳優陣の乗りは、見ていて羨ましくなるほど。これは役者冥利に尽きる戦国顔見世興行なのだ。
北野作品らしい奇抜さと過激さ
北野武監督が織りなす異色の戦国時代劇は、彼にしか成し得ない奇抜さと過激さに包まれた劇薬だった。首、それは斬ってもそのままでもシュールの極み。戦国版『アウトレイジ』とも呼ぶべきこの危なっかしい智略と暴力のバトルロワイヤルにおいて、信長役の加瀬亮が頭のネジがぶっ飛んだ切れ味の鋭さで非道の限り(饅頭シーンは夢に出そう)を尽くしたかと思えば、秀吉役ビートたけしは信長の前では決して出しゃばらず、己の館に帰ると息のあった部下達とコントのように計略を練っては、笑いと冷酷さのはざまを器用に行き来する。彼ら猛獣達に振り回されっぱなしの西島秀俊が彼にしか務まらない実直な役どころを巧みにこなす一方、木村祐一がしゃべりの得意な”芸人”として飄々とした存在感を発揮するのが面白い。監督自身の職能とも相通じる特殊な役をあえて戦国鍋へ投じて化学反応の行方をじっくり見つめるところに、奇才ならではのユニークさ、斬新さがある。
浅草芸人から“世界のキタノ”になったたけしが、百姓あがりの天下人・秀吉を演じる必然
ある時代の暴力と上下関係を伴う男性社会の群像を、男色の要素を加えて解釈するという点で、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」(1983)と「御法度」(1999)の影響を感じる。前者では監督デビューする前のビートたけしが国際的合作に初めて抜擢され、大島監督の遺作となった後者では主演。タブーに挑戦し続けた巨匠の遺志を継いだ北野武監督の集大成的作品でもある。
「本能寺の変」を題材にした本作でたけしが演じるのは、百姓から身を起こし織田信長亡きあと天下人へのぼりつめる羽柴(のちの豊臣)秀吉。脚本も手がけた北野は、秀吉の駆け出しの頃を思わせる元百姓の雑兵・茂助(中村獅童)と、落語家の始祖と言われる曽呂利新左衛門(木村祐一)という2人のキャラクターを配して、浅草芸人の見習いから出発し映画人として世界的に名を成した人生をかえりみるようでもある。
1994年のバイク事故の後遺症がなければ、秀吉の台詞回しの滑舌ももっと良かっただろうか。だが、ビートたけしの今のありのままを映画の中で秀吉に重ねることが、監督・北野武のたどり着いた境地なのだろうとも思う。
音楽と同じで、映画にも好みはある。 万人受けするものと万人受けはし...
音楽と同じで、映画にも好みはある。
万人受けするものと万人受けはしないけどコアなファンが付くものと。この映画は後者かなって思います。今までにない目線での歴史的有名な事件。おもしろいとは思うけど個人的には武将たちにはかっこよさとかロマンを感じてしまっているから(笑)ちょっとなんかなーってなってしまった。まあそうゆう映画を観ればいいってはなしで、どれも不正解じゃないからなーって、感想です。有名な俳優使わなかったほうが逆に良かった説ある。
北野武さんらしい映画でした。
戦国武将同士の戦いが見たかったけどコメディー映画だったし、タイトル通りって言ったらそうなのかもしれないけど間に恋愛的な要素があって、自分は思ってたのとは違いました。
でも今まで見せて来れなかった首を表現していて良かったです!
主要人物ジジイ過ぎやしねーか!
コントっぽいやり取りがあったりこれはこれで面白かったです。
光秀が信長を裏切る事に決める下りも戦国物じゃあんまり見ないような流れだな〜と感じました。
惜しむらくはやっぱりみんなジジイすぎやしーなかな!?
戦国版アウトレイジ
加瀬亮演じる織田信長がなかなかのキレ味でウケた。
暴君の説得力がすごいw
歴史的に有名な戦や政治シーンを真っ向から描きつつも、武士道やその美徳を表現しようとしない時代劇って、実は稀有な存在なのかも。
誰もが知っている本能寺の変前後の戦国時代の武将たちの人間劇と戦模様が、北野武流に表現されてる。
理不尽で暴力的な世界の中で必死にもがく男たちの生きざまは、泥くさく、ずる賢く、情けなく、みっともなくすらある。
その必死さについつい魅入られてしまう。
どの男もよい生き様であった。
戦のシーンの生々しい説得力はさすが北野武。
忍者のご利用は用法用量を守って正しくお使いください。
早速ですが、戦国時代を舞台にした作品で忍者を多用する作品は控えめに言って〇ソです。
もちろん架空の人物を中心とした創作の物語でならまだいいのですが、実在した武将と史実を軸に据えた大河ドラマのような作品で忍者を多用するようでは、コレはもう逃げたな…としか思えません。
確かに忍者は便利です。武将の手足となって、その企みを実現させてくれますし、歴史的事実にがんじがらめで不自由な武将たちに変わってありとあらゆるオリジナルエピソードを乗っける事もできれば、主人公の武将が関わってない美味しい歴史的なイベントにも何らかの形でそこに居合わせたとして絡める事が出来るのです。詳細な活動記録は無いが確かに存在したというあまりに便利で自由な存在、忍者―。
世に溢れる歴史物というジャンルの中で先行作品と差別化を図るのが大変な事は簡単に想像ができます。できるのですが、それでも歴史上の有名人、人気イベントのネームバリューにあやかって作品を作るのであれば、新しい仮説や独自の解釈を駆使して頑張って欲しいなというのが基本的な私の想いです。なので主人公の有名武将をそっちのけで忍者が冒険し、恋愛し、殊勲をたて、実は歴史を裏で作っていました!的なエピソードを多用している作品を観ると、作り手側が歴史から逃げたのだなと思ってしまうのです。
そしてまさか本作が割と忍者成分高めの作品になっているとは思いもしませんでした。
一応、曽呂利新左衛門も服部半蔵も実在の人物ですが映画での扱いはほぼ自由な忍者枠であり、勝村政信と桐谷健太の空中戦は失笑ものです。
メインの登場人物がことごとく利己のために人を裏切り、他人の命を屁とも思っていない中で、このファンタジー枠の忍者たちだけが主君に忠実な姿で描かれ、かなりの活躍を見せますが、そもそも北野武監督は大義だ忠義だ言ったって戦国武将は野蛮な殺人狂という独自の解釈を持っていた訳で、そのコンセプトで作るならファンタジー忍者の忠誠心なんてかえって邪魔だったのでは?と感じるのです。
また今作でのコミカルなシーンのほとんどが、ただのビートたけしのコントを見せられている感じで、映画の雰囲気からは浮いているように見えました。
これも映画の序盤までは良かったと思うのです。利休からの書状を読む秀吉と秀長のやり取りと、それを見る官兵衛の「奉公先 間違えたかなぁ~」と言わんばかりの表情を映すところ等はグッときます。
あくまでも物語の登場人物たちは真剣なのに観客という立場で観ていると、どことなく滑稽でクスッと出来るというのが良いと思うのですが、後半(家康と会うあたりから)は物語の登場人物ではなく演者であるビートたけしや大森南朋がドンドン前に出てきてコントを演じているという風に映ります。私自身が笑い上戸な事もあり、このコントでも笑える事は笑えるのですが、映画の流れの中では不自然に浮いている印象を抱くのです。
もともと北野武監督作品って何でここでこの演出なの?という浮いた印象を抱くシーンが多いのですが、アウトレイジの1、2作目が良かったのは笑えるシーンも含めて映画の流れの中で不自然に浮いていると感じるシーンが無かったからという事もあったと思うので、本作も開き直って同じ様に撮ればよかったのになぁ~と残念に思います。
またシリアスとかコミカルとか関係なしに何人かの役者の演技が時代劇的雰囲気が皆無なのも気になりました。特に遠藤憲一と大森南朋が顕著で、この浮きっぷりは一体何なのか?木村祐一にはそもそも演技力など期待していないので彼の演技についてはまぁいいのですが、その木村祐一が結構出ずっぱりなのも含めて、ここら辺の演出意図が自分にはよく分かりませんでした。ただそのせいもあり、血統もキャリアも上等な中村獅童が本作でのヨゴレ役を好演しているのが際立ち、とても印象深かったです。
この映画で一番武勲をたてたのは中村獅童だったのではないかなと思いました。
お高くとまった『歴史好き』の鼻ぶちおるコント
北野武映画の型破り感、これが最大化されるのが、ヤクザ映画のようなジャンル映画として固まってるもの『型』があるものを取り上げる時だと感じていて、今回『時代劇』はまさにシナジーがあるテーマ。っていうかアウトレイジも組織内の紛争なのでやってることはほぼ一緒。
そもそもコントもそうで、設定があって観客が『この役や立場の人はこう動くであろう』という予想を馬鹿馬鹿しく裏切ることで笑いを産むものなので、武さんの強みはここにあると感じている。
本作、大河ドラマや時代劇で描かれない汚い部分、もっと言うと観たくない部分を詰め込み、今までこのジャンルで描かれてきた歴史像の逆張りに徹しており、そこに凄く好感をもった。
ドラマではイケメンがクールに演じる信長は、方言丸出し男色狂人。
憎悪と裏切り者の代名詞光秀は、ハンサム西島がそそのかされながら本能寺へ。
田舎者、切れ者、俊敏、口達者が絶対条件の秀吉は、武さんがもっちゃり標準語でわりと人任せ。
戦の武将の華麗な切り合いや一番槍の誉れは、足軽の泥仕合や武将同士のなすりつけあいに。
時代劇が繰り返しすぎて、それが正解と思い込んでいたり美化している部分を、だれもみてねぇだろと馬鹿にしてくれて痛快だったし、むしろ誠実さを感じた。
基本的に笑いながら観れたが、中村獅童が友達、家族、ついには自分の命を捨ててまで得た出世の鍵となる『首』が、上にとっては大したもんでも無かった落ちにはグッときた。
もっと斬新なバイオレンス描写を見たかった気持ちはあるが、おおいに笑ったので満足。
不謹慎さで笑えない人や、そもそも笑うつもりで観てない人、自分のことを賢いと信じる頭のかたい歴史好きには、受け入れられないだろう。
歴史考証?てめぇその時代に生きてたのかよバカ野郎。
北野映画を初めて見る人間です
・北野映画を初めて見る
・浅い歴史好き。時代劇も好き。考察や解釈にこだわりがあるほど持論もなければ詳しくもない
・ラブシーングロシーンにあまり抵抗なし
・シュールギャグが好き
以上の前提がある私が見た本作の感想としては、面白かった…!!!
最初北野武を筆頭に一部のキャストの年齢が史実年齢と比べてうーん、と違和感があったが、面白かったので途中からは気にならなかった。
ちょこちょこ挟まれるシュールな笑いが面白くて笑ってしまった。主題の首をめぐる殺伐したドラマとちょうどよくバランスが取れていてよかった。
歴史に詳しい人からしたら本作の戦国武将像と解釈に違和感を覚えるのかもしれないが、時代劇やちょっと歴史が好き、くらいのレベルの自分にはこういうのも面白いと思える解釈だったので、ストーリーも終始楽しめた。登場人物がなんだかすごくリアルな人間像で描かれていた。
ただ他の評を見るに、北野映画ファンの方や歴史や時代考証に見識のある方には中々受け入れがたかったのかも…。あとは単純に内容を生理的に受け付けられない方々もいるだろうな…。
ということで非常に人に紹介しずらい作品という意味においてはちょっと悲しい。
最初に述べた何事にも見識の浅い私は普通に楽しめてしまいました…たしかに途中ちょっと長かったけど…。総じて面白かった。
終わり方もめちゃくちゃ好みでした。ラストシーンもう一回見たいな。
(お松)あー、あたし⁉→爆笑
歴史背景をトレースしながらも、ここまでおもろくできるってサイコー。
それぞれのキャラが立ってて、特に信長の台詞回しは好きだな。
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