不思議の国の数学者

最初は学園ものかと思って観ていたが、途中から急に政治まじりの立体的なストーリーになってきて引き込まれた。脱北者に対する差別が社会問題になっているのも初めて知った。πソングやリーマン予想など、実際の数学が絡むシーンが多いのもよかった。三角形の面積の問題では見事に自分も引っかかってしまった。おじさんがオイラーの公式にいかに心酔しているかが伝わってきたし、それに対する主人公の反応の薄さに落胆するのも共感できた。

韓国映画をちゃんと見たのは、美術館の隣の動物園以来20年以上ぶりだったかも。久しぶりにみる韓国の街並み。ハングルの看板だらけの路地を歩くシーンが、昔、出張で行った韓国の街の匂いを思い出させた。

学問は試験や受験の為にあるものではなく、出題者の意図を汲み取り、それを解く過程が大事。数学は勇気。今日解けなくても明日解いてやろうという勇気。幾つも明言あり、本当にそうだなと思う。少年と脱北者である警備員の交流は清々しく、少年の健気さに次第に心開いていく。少年の無実を証明した授賞式でのスピーチのシーンは良かった。もう少し息子との回想シーンがあればより良かった。

小説家を見つけたらの数学版韓国映画でした。
自転車に乗りながら「Over the Rainbow」が流れるラストには敵わないかなと。
全く別の映画としては普通に感動できる映画だった。

学問と受験スキルは別物。日本以上の学歴社会韓国では教師も即効性のあるスキルを教えるほうが評価が良くスキルアップできるのでしょう。日本でも同じですよね。地頭が良くても秀才のお金持ちには敵わないのではないでしょうか。

本作は現代の効率化や即効性を良しとする社会に問いを投げかけているように感じました。北朝鮮との関係や息子への葛藤も描いていて人間ドラマ的にも面白かったです。今後は量子コンピューターやAIでテクノロジーの進化もますます加速していきますが、ハクソン先生の様な懐の大きな人物はテクノロジーでは作れないですよね。AIでできるようになるのでしょうか？それはそれで凄いかも。