劇場公開日 2023年6月2日

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怪物のレビュー・感想・評価

全961件中、1~20件目を表示

4.0ビッグバウンス宇宙と怪物

2023年6月4日
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 どうしてこうなってしまったのだろう。
 昨日観終えた直後は、軽やかな疾走感と美しい緑、そして心に沁み入る音楽に包まれ、不穏な2時間を経て穏やかな気持ちになれた。けれども、一日経って日常の中で思い返すと、子どもたちは行ってしまい、大人たちは置いてけぼりにされたという思いが、じわじわと迫ってくる。朝ごはんを食べながら、小学生ふたりに尋ねてみたら、「…やっぱり、−−ということだと思う。」という返事。あまりにもあっさり反応が返ってきて、少し愕然とした。大人になってしまった私は、決定的な何かを見落したのかもしれない。
 母親、先生、子ども。それぞれの視点で物語が語り直されるたびに、印象が反転する。後からは何とでも言えるのは承知だけれど、母親は押しすぎ、先生は流されすぎた、のかもしれない。とはいえ、その時々の焦りや軽々しさは誰にでもある。母親は、学校に行くために何度も仕事の折り合いを付け、深夜の通院の翌朝も日課をこなしたのだと思うと、何ともやり切れない。さらには、序盤では怒りさえ感じた校長先生に、終盤に至って救われる気持ちになるとは、思いもよらなかった。
 誰かが意図したわけでもないのに、事態が絡まり悪化した大きな要因は、いくつもの噂や、無関心の連なりだろう。そして決定的な打撃になったのは、幾度となく繰り返された、手近な材料での辻褄合わせだ。彼らは、もっと何かあるかもしれない、何かを見落としているかもしれないと考えるのをやめ、あっさりと結論を下してしまった。すぐそこに待つ不吉な予感にさえ、目をつむって。
 湖そばの公園の塔で、子どもたちがビッグバウンス宇宙について話すシーンが美しく、忘れ難い。宇宙が閉じた場であれば、いつしか宇宙は膨張から収縮に転じ、時間は逆戻りするという。創造と破壊が繰り返され、大きく循環するなかで、わずかなゆらぎから、銀河のもとととなる突起も無数に生まれ得る。ならば、映画に描かれた人びとの世界が、本作を観る私たちの世界と反転するのは、良くも悪くも、ごく当たり前のことなのかもしれない。そして、怪物もまた、自在に姿を変えながら跋扈し続けるだろう。
 帰り道、「親に気を遣って大変だねー」「大変だよ、自覚しなよ」と子とやり取りできたのが、ちょっとした救いだった。

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cma

4.0怪物という蜃気楼

2023年6月2日
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鑑賞方法:映画館
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ニコ

3.5Japan's Burning Tire Pit of Adolescence

2024年12月13日
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鑑賞方法:VOD

Just what Japan needs: another film to show the hardship of raising a child as a single-mother. Koreeda as one of Japan's best auteurs of the moment shows a perceptible disparagement to public education admins, perhaps something audiences understand all too well. The strongest point is the emotionally hypnotic soundtrack by Ryuichi Sakamoto, his final before his death prior to the film's release.

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Dan Knighton

4.0人の目線には死角がある

2023年6月30日
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鑑賞方法:映画館

長野の諏訪市を舞台にしているのだが、真ん中に湖のあるのがいい。特に夜、俯瞰で街の全景を何度か見せているが、夜には湖がぽっかりと開いた黒い大穴のように見えて、その闇に吸い込まれそうな気分になる。あの闇には何があるのかと考えたくなる。
「怪物、だーれだ」という問いかけがなされるこの映画は、誰かを怪物と思いたくなってしまうその心象こそが怪物であり、街にぽっかりと開いた闇のようなものだと、そう問いかけられているような気がした。
同じ事件を3つの視点から描き直すこの映画を観ると、一度信じたものを崩され、どんな人にも見えない死角があることを自覚させられる。視覚効果による表現である映画は、カメラの向きは一方向を向くので、どれだけ真実を透明に映し出しているように見えても死角が存在する。これは、その映画の弱点に自覚的だから作れる作品だと思う。あの街の真ん中の闇のように見ようとしてもなかなか見えないものが、社会にも人間関係にも必ずある。そのことを忘れずに世の中を見つめることの大切さと難しさが見事に表現されている。

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杉本穂高

4.5是枝裕和監督と同時代に生き、作品に触れられる僥倖

2023年6月8日
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鑑賞方法:試写会

坂元裕二氏が脚本を手掛けているだとか、今回は子役に脚本を渡して撮影に臨んでいるだとか、そういった部分はきちんと取材をしたインタビューをご覧ください。
ここでは多少の主観も交えながら……。これはいつからだったか、是枝監督と同時代に生き、作品に触れられる幸せというものを、噛み締めるようになりました。
黒澤、小津、溝口など、日本映画界に燦然と輝く名匠たちの作品にも数多く触れてきましたが、やはり同時代を生き、時には撮影現場で取材をしながら息をのむ瞬間を目の当たりにすることが出来るのは、幸せなことだと再認識しなければなりません。
ほかにもシンパシーを感じる同年代の監督たちとの出会いも含めて。

是枝監督は、「これが是枝監督の集大成」みたいな表現を嫌がります。当然ですよね。監督ご本人が「これが僕の集大成」と発言するのならばともかく、他者が決めつけることではありません。今回も「集大成」ではなく、是枝裕和という映画監督の通過点であると考えるべきです。この先、もっともっと世界中の映画ファンを楽しませてくれることを切に願いながら。

それにしても、田中裕子さんの演技にはたまげました。
是枝組の常連であった樹木希林さんとは対極の位置から仕掛けてくるアプローチに仰天させられます。安藤サクラ、永山瑛太の芝居も、堪能してください。

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大塚史貴

5.0怪しくて やがて哀しき 藪の中

2023年6月2日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

知的

安藤サクラが演じるシングルマザー・早織が、小学生の息子・湊が担任の保利(永山瑛太)からモラハラと暴行を受けていると確信し学校側へ説明と謝罪を求める序盤のかなり早い段階から、心臓のあたりがぞわぞわするような、なんとも不安で不快な気分が長い時間続いた。

坂元裕二による脚本がカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞したことを報じる記事などで言及されていたように、本作の物語構成は、芥川龍之介の小説「藪の中」、またその映画化である黒澤明監督作「羅生門」に似て、真相がわからない一連の出来事を複数の当事者の視点から語り直す手法が採用されている。この「怪物」においては、主に早織、保利、湊の視点の順で(ほかに田中裕子が演じる校長の視点も少し入るが)、学校での数日間に起きたことや、湊と同級生の依里(より)とのかかわり、台風の一夜の出来事が多面的に語られ、当初は不明だった事実が徐々に明かされていく。

だが、坂元の脚本と是枝裕和監督の演出は、“たった一つの真実”が存在しそれを明らかにしようとするのではなく、むしろ各人の考え方感じ方や立場によって事象のとらえ方が変わってくる、言い換えるなら“認知のゆがみ”が生じうることを示唆しているのではないか。たとえば序盤、早織に感情移入して観るなら校長や教員らの心のこもらない釈明や謝罪は役人の答弁のようで腹立たしいことこの上ないが、保利先生ら学校側から語り直すパートでは早織がモンスターペアレントのように映る。

得体の知れない存在や体験したことのない状況を怪しむ、恐怖する感覚は太古から受け継がれてきた自衛本能だ。自分の命やアイデンティティー、家族やパートナー、よりどころになる家庭や職業・職場が何ものかによっておびやかされると感じた時、その何ものかが“怪物”として映り、自衛のため必死に抗おうとする。だがそうして抗う自分もまた、自分のことをよく知らない相手から“怪物”に見えているのかもしれない。

認知のゆがみが「事実でないことを私たちに見せる可能性がある」という理解に基づくなら、ラストシーンも見た目通りのとらえ方とは別に、180度異なる解釈もありうるのではないか。その解釈に思い至ったとき、改めて坂元裕二脚本の深遠さに震えた。

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高森 郁哉

4.5是枝裕和監督作品の中で「テンポ」は最も速い。「深さ」についての感じ方は人それぞれか?

2023年6月2日
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是枝裕和監督作品と言えば、大きな特徴として「何気ない日常を切り取る」というのがあります。
そのため、物語はゆったりと流れていくような傾向がありますが、本作では矢継ぎ早に物事が動いていきます。これは、デビュー作以外では監督自身で手掛けてきた脚本を、「花束みたいな恋をした」などで知られる坂元裕二に任せた面が大きいと思います。
もしかしたら、これまでの「是枝裕和監督作品を見る」という姿勢でいると違和感を持つかもしれません。
それは、何の予備知識もなく作品の世界に身を置くという姿勢でいると、珍しく「時系列」が行ったり来たりするため頭が混乱するからです。
親切な作品であれば「(安藤サクラが演じる)母親目線の場合」「(永山瑛太が演じる)担任教師目線の場合」といった切り替えのタイミングを明示してくれますが、本作では似たトーンで映像が続いていきます。
要は「コンフィデンスマンJP 英雄編」などと似た構造にあり、様々な視点から眺めると物事の見え方が変化していくといった手法で、私たちに「種明かし」をしていきます。

「今は誰の目線で、どの時間を描いているのか」を的確に探り当てる、シーンの切れ目を自分で見つける必要があります。
これのヒントの1つはビルの火事でしょうか。
近頃ニュースでは似たようなビル火災が続きますが、本作では「ビルの火事は1回の出来事」なのがポイントです。
さて、そのような映像上のトリックを見極めた後は「結局、どのような全容なのか」を把握するために、組合せを頭の中で行う必要があります。
その結果、どんな物語が見えてくるのか?
私は、結局のところ「是枝裕和作品」という印象でした。
ただ、本作では「理由のない嘘」が少なくなく、これを連発すると「真相は藪の中」となり、やや気になる点でした。
良い点は、クセの強い人物が多く登場し、「この人物はどういう人なのだろうか?」と気になる独自性があり、その優れた「人物像構築」などで第76回カンヌ国際映画祭で「脚本賞」を受賞したのは納得できます。

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細野真宏

5.0今さらレビューする俺が怪物

2025年5月3日
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鑑賞方法:映画館

見てから二年以上経った今、俺はレビューする

誰の心のなかにも巣くう怪物
人間は愚かで心がけ弱く、自分の見える一方通行の世界のみしかわからない
そんな人間こそ怪物

二年以上経った今レビューしてる心境はというと、なかなかいい

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Rei

3.5噂話と憶測による誤解

2025年4月28日
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鑑賞方法:VOD

難しい

3人の目線で描かれる、ひとつの物語。
1人の目線からでは知りえないし、噂話でそう思い込んでたら尚更。
いくつかの謎は残るものの、3人の目線から見ると納得出来た。

ただ、担任と校長のクレーム時の態度がありえなすぎて…

それでも、やっぱり是枝監督は子役の使い方が上手いのは間違いない(^^)b

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n.yamada

5.0観賞後も深く心に残る

2025年4月22日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

すべての謎が解けたとき、もう一度観たくなる。
二度目には全然違ってみえるだろう。
登場人物それぞれの立場になってみると、何も不思議なことはない、「怪物」なんていなかったと気づく。
映画って本当に素晴らしいですね、と言いたくなる映画。

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みゅう

4.0もう一度見るべきかも

2025年4月21日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

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たつじん

3.0さて、怪物はだ〰れだ

2025年4月18日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

一つの事象の流れを子どもの母親、担任教師、子ども本人といった複数の視点で描く、なかなかに興味深い作品。
でありながら、湊の母親が学校に子どもの問題で抗議に訪れた際、担任の教員はヘラヘラと笑ったり飴を頬張ったりしたが、ここは母親の視点でしか描かれていない。なぜ笑ったか、なぜ飴を舐めたか。
子役も可愛いし、芝居も上手だ。いい役者が揃っているとも思う。
でも、そういう疑問点があったりするので、全体的にはまあ、ふつうかな。

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ぶっち

4.0「かいぶつだ~れだ」

2025年4月10日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

興奮

知的

遊びの名前です。私は遊び自体は知っていましたが、この呼び方は知りませんでした。
さて、この映画の物語は怪物が居るか居ないか、誰が怪物なのか、複数の登場人物に視点が切り替えられて同じエピソードを辿ることにより、質問を繰り返して真実に近づくという構造になっています。
この構造は流石、是枝監督です。
前半は主人公の少年の母親の視点で事件の流れが示されて、なんて嫌な奴らなんだと観客に思わせますが、次に別の人物に視点が切り替えられて同じ事件を追うと、母親の視点から観た物語が全く違う様相を示します。次の人物、また次の人物と視点が切り替えられるたびに冒頭で示された伏線の意味が次々に明らかになるのはある意味心地よいです。
そしてクライマックス。
結末の余韻の残し方は、この斬新な映画の末尾を飾るにふさわしいものでした。

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さとうきび

2.0大げさすぎると思うのだけど…

2025年3月30日
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鑑賞方法:VOD

単純

万引き家族と同じ手法だよね。

所詮はつくりもので、作り手が、描きたいように作った作品ということ。

映画だからそれでいいのだけど、なにか社会に物申すような感じはどうも好きになれない。

あなたは、神か…。

あっ この映画は、是枝監督の自省録のようなものか。さすが世界の是枝監督!

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うさぎさん

視点が、母親、担任の教師、子供、の視点に変わっていく事で新たな事実...

2025年3月27日
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泣ける

知的

難しい

視点が、母親、担任の教師、子供、の視点に変わっていく事で新たな事実も加わりつつ真相が見えてくるミステリー的な要素も素晴らしかったが、この作品は人間愛と、発言について深く考えさせられる作品だったなと感じる。

1人の人を好きになる、その対象が同性なのか異性なのか、それだけの違いによって人権がなくなって言い訳がない。人を色眼鏡で見ずに好きになる、愛することができるその尊い純粋な心をどうして、大人が、ましてや親が、踏み躙ってしまうのか。

同姓を好きになった自覚から、自責の念が生まれるなんて世の中が、いつか、本当にいつか来なくなればいいと心から思う。
こんな世の中だがどうか、子供たちには真っ直ぐに生きてほしい。

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01

4.0「怪物」とは。

2025年3月20日
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「怪物」と題されたこの映画。
このタイトルから「怪物」とは何か?という視点でこの映画をみることになると思います。
それがこの映画の狙いではないかと考える。

「怪物」という言葉から受ける何らかの悪がそこにはあるのではないかという先入観で観ると、その先入観は見事に否定されます。
知らないうちに、自分がいかに一つの事実に対して、見て得た情報だけで判断しているかを思い知らせる。また、それが正しいと疑いなく思ってるいることかも。

この映画は、自分が見たのは本当に事実の一部しかないのに、それをもって判断していることに気づかせ、そしてその愚かさを体感できる作品です。

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おかず

5.0鑑賞後の後味が思ったものと違う

2025年3月18日
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てけと2

4.0余韻が深い。

2025年3月14日
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難しい

もやもやしたまま終わらされたので、鑑賞後もふと考え続けてしまいそう。

主観が登場人物分あるように、結末(真実)も観客の人数分ある。
実世界の世間話やワイドニュースと同じで、私たちは自分の中で結末を考察するんだ。それが正しいかなんてどうでもいいんだよな。

安藤サクラのパートが1番心がザワザワした。
いくつもある伏線が終わりにつれ少しずつ回収されていくが、根幹にあるような複線(というかストーリーの真実?)は放置されている。細かい複線回収の気持ちよさといつまでも教えてもらえない肝心なところにヤキモキするバランスが是枝監督のテクニックだなぁと感心している。

ああ、こんなにざわざわさせられてはまた映画が好きになるではないか。

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もち米太郎

3.5面白かったけど

2025年3月13日
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penguin

3.5難しい

2025年3月9日
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