正欲のレビュー・感想・評価
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第36回東京国際映画祭2冠達成の圧倒的傑作!
予告を見た時、傑作の予感がしました。ちょうど観る前に、第36回東京国際映画祭で最優秀監督賞と観客賞を受賞したことを知り、期待が高まりました。
久々に前のめりになって、映画に没入しました。
物語の内容は多様性に触れつつ、マイノリティとフェティシズムを主題に挙げていると感じました。
フェティシズムは、犯罪と紙一重だなと思います。誰もがフェティシズムを持っていると思いますが、一般人から見れば「あり得ない」と反感を買います。
マイノリティやフェティシズムについては、「人間はこうあるべきだ」と押し付けるのではなく、多角的な視点を養う必要性を問うた作品だと思います。
人間は、生まれた時から世間の常識というレールの道が敷かれていますが、脱線することもありますし、個々人が一番幸せと感じる道を法に触れない範囲で歩んでいけばよいと思います。
登場人物毎に話が構成されていて、寺井(稲垣吾郎)と桐生(新垣結衣)の話は、かなり共感しました。
水しぶきの映像の撮り方も上手く、芸術的な作品だと思います。
ダイバーシティダンス
多様化を表向きは賞賛する時代を問う問題作と感じました。
普通の人たちのように生きていかれない孤独を感じるマイノリティたちの繋がりと救済を描きながら、現実の容赦のなさが差し込まれてきます。
例えば数年前ならば、このお話のラストは、多様性を受容し罪のないマイノリティたちに救いの手を差し伸べた正義の検事が、妻と子と手を取り合って多様性ダンスを披露して喝采を浴び歌い踊りながら手拍子の中ハッピーエンドするのかもしれない。実際海外映画で観たような気もしますね。
しかし現実にはそんなことは起こらない。作中よりももっと酷いことも起こりうる。
そんなことを考えさせられました。
ラストの新垣結衣のセリフと、それを受けた稲垣吾郎の表情が心に残りました。佐藤寛太のダンスがすごく素敵でした。
ぜひ沢山の人に見てもらい、感想を聞きたい作品であると思います。
朝井リョウの同名ベストセラー小説を、稲垣吾郎と新垣結衣の共演で映画...
朝井リョウの同名ベストセラー小説を、稲垣吾郎と新垣結衣の共演で映画化。「あゝ、荒野」の監督・岸善幸と脚本家・港岳彦が再タッグを組み、家庭環境、性的指向、容姿などさまざまな“選べない”背景を持つ人々の人生が、ある事件をきっかけに交差する姿を描く。
新垣結衣演じる夏月が、最後に発する言葉ひとつひとつが、、純愛。いいね!
つながりたい気持ち
“普通じゃない”人たちが感じる生き難さ、苦しみ、劣等感、罪悪感、孤独、そんな感情が画面を通して伝わり胸が苦しくなりました。彼らのような所謂マイノリティではない私ですが、共感するところは多々あり、特に前半はとても辛かった。世の中が「普通」と定義していることが出来なかったり難しくて、普通になれない自分を追い詰めてしまう様が、大袈裟ではなく淡々と描かれているので、尚更哀しく切なかったです。
だからこそ、誰かと理解し合える喜びや、普通っぽい毎日を送れることの嬉しさが伝わる後半の展開には希望を感じました。ひとりじゃないと感じることで得られる安心感や満ち足りた気持ちって、とても素敵で貴重なものだよなぁと、改めて思います。
彼らがこれからも、一緒に生きていけますように。
新垣結衣で癒されないのはつらいのではあるけど
いつまでもこちらの思いばかりを言ってても仕方がない。
何しろ人妻だ。
原作は知らないが映画としては、そこで終わる?と言う感じ。
LGBTにQまで加えるとああなるでしょう。
【追記 2人が共有し隠しているのは水フェチだが、水フェチは他人に理解されずフツーじゃないと言われるものの象徴。】水しぶきはたぶん何かの隠喩。オーラを消しても萌える。
【追記】
レビューを上げた後、みんなのレビューを見て1つ驚いたレビューがいくつか有ったので、急きょ追記することにした。
映画で出てきた水フェチだが、これをただ 「水の流れを見るのが好きな人」レベルのフェチとみなしていると思われるレビューが散見されるが、とんだ大間違いだ。2人の水フェチは水の流れに性欲、エクスタシーを感じるレベルで、なおかつ人間に性欲を感じないのだ。だから理解されず、おかしいと思われるかもしれないと思って隠す。
僕はまさかガッキーが自慰の場面を演じるわけないよなという思い込みから、しばらくは僕のスケベ心のイヤラシイ勘違いだろうと思っていた。だけど後半、2人が正常な人のセックスってどんなものなのかなと服を着た真似事をする場面を見て、さっきの場面はヤッパシ○○で2人の水フェチは性欲、かつ人間には性欲を感じないんだと確信した。この性欲は2人にとっては正欲(正しい欲)だ。
水のしぶきや流れが好きなレベルの水フェチならともかく、それにしか性欲を感じないのは他人に言ったら理解されなくてフツーじゃないと思われるから知られたくないと考えるだろう。もしそれも分かった上で、この水フェチとLGBTは隠さなくても今の日本なら全然大丈夫だよって言われてしまったらこの映画は成り立たない。取りあえずはフツーじゃなくて異常と思われるかもしれないから隠しておきたい何かの象徴ととらえるしかない。
【以上、追記終わり】
夏月(新垣結衣)と佐々木(磯村勇斗)は、ほとばしる水しぶきが大好きだ(噴水が好きなのではない)。中学のとき壊した蛇口から噴水のように吹き出る水しぶきにまみれて喜びにひたる2人。こんな変なことが好きで喜ぶなんておかしい。他人には絶対理解できないに違いないし、人に言えばきっと変な人だと思われるから胸に秘めている。しかしここに奇跡が起こる。こんなワケわからん嗜好を持った2人が同級生として出会うのだ。有り得ん。神様のイタズラだとしか思えん。
こんな自分は誰にも理解してもらえない。自分はひとりぼっちだ。この事はずっと心に閉まって生きて行かなくてはならない。そう思っていたのに、自分と同じ者がいた。この喜びを分かち合える者がいたのだ。それが例え1人でもかまわない。自分はひとりではない。自分のことを分かってくれる者がいた喜びは何物にも代えがたい。それも自分と同じクラスにだ。
しかし別れが訪れる。佐々木が横浜へ転校してしまう。ひとりポツンと残される夏月。ここで映画の技法だと思うんだけど、画面上で夏月がキューっと小さくなって見てるこっちに夏月の喪失感、寂しさが伝わってきた。夏月かわいそー。映画見てる観客もうみんな普通ここで泣いちゃうだろ。ワシは泣かん、男の子は泣くなと言われて育った世代だからじゃ(アホ)
で、有り得んことにまた神様がイタズラする。佐々木が地元へ戻って来る。女を自宅へ連れ込んでしけこむ佐々木と、あとをつけて様子を伺う夏月。ストーカーだがストーカーではない。夏月には佐々木に対する恋愛感情がないからだ。理解し会える同志だ。たまたま女と男だっただけだ。この後2人は結婚するが(籍は不明)恐らく二人には恋愛感情というものがないし、分からないのだと思われる。結婚という形が恋愛感情というものが無いことを隠す隠れミノになるから回りにバレない。夏月が寺井(稲垣吾郎)に初めて会ったとき、奥さんぽい雰囲気があると言われたのも夏月の自信と安心感から来るものだろう。
そういうわけで、ガッキーが佐々木の家のガラス窓を叩き割ったのも当然だ。あの時、夏月は佐々木が正常の世界へ行ってしまったと思い込み、世界で唯一の仲間を失った悲しみと怒りを目一杯ぶつけたのだ。
後に佐々木と結婚した夏月が、「もう私ひとりで生きていた世界に戻れんかも」 としみじみと言う場面が印象に残る。
で、また神様がイタズラする。3人目の水しぶき仲間がロリコンで捕まった流れで、佐々木が捕まってしまう。中学のときと同じく1人ポツンと残される夏月。この場面でも夏月がキューっと小さくなる。でも今の2人は中学のときとは違う。検事室で夏月は稲垣吾郎に頼みたかった佐々木への伝言の内容を口にする。「いなくならないから」。佐々木が聞いたら勇気100倍。
この場面では吾郎ちゃんがキューっと小さくなる。フツーな吾郎ちゃんはフツーでない息子を受け入れられず、パートナーと息子を失っていた。フツーな吾郎ちゃんがちょっと可哀想になる。「俺はフツーなだけだ。フツーのに何が悪い?」と嘆くゴローちゃんの叫びが聞こえてきそうだ。
検事の寺井はフツーの人代表。息子がフツーじゃないのが悩みで、息子をフツーに戻したい。学校行くのがフツーだろう派だ。パートナーが泣きながら寺井に言ったセリフが印象に残った。「どうして息子のバグを分かってあげようとしないの」
この映画ではフツーの人がかなり悪者扱いされてて少し分が悪い。
水しぶきが楽しいなんてフツーじゃないだろと言う寺井に夏月が言うセリフもイイ。
「あなたが信じなくても私たちはここにいる」。 てガッキーカッケー、どっかで使ってみたいよ。
大学生の神戸と諸橋についても1つ。ケンカして立ち去ろうとする師橋に神戸は理解できないだろうけどと前置きして自分のことを伝えようとする。もちろん諸橋は分からない。だけど諸橋は、自分とは違う種類だけど”人には理解してもらえないもの”を神戸も抱えて生きていることを知って、「きっとどこかに君を理解してくれる人がいる」みたいなこと言って神戸を励ます。いいシーンじゃないか。ここの部分だけでも原作者のメッセージが伝わって来るよ。ホント映画とか作ってるクリエーターってすごいといつも思わされる。
あと 「セックスってこんな感じかな?ごっこ」の場面が有り得んと思える人は(僕も理解出来ん人)は、アロマンティック、アセクシャルを検索してみるといい。僕は、理解は出来んが、まあ世の中にはそうい人もおるようじゃな、ぐらいには思っている。
ちなみにアロマンティック、アセクシャルの人たちの苦悩、悲しみはハンパない。
感想。
相互理解ってホントむつかしい。理解という言葉を定義するのもムツカシイ。
以前どこかで聞いた”2つの円の重なった部分”ていうのを思いだ出す。
新垣結衣が出ているの知らなかったら、僕はきっとよく似た人だなと最後まで思い続けたと思う。俳優ってたまに、うだつがあがらない地味なヤツの役やるときオーラ消すんだよ。驚くよ。
あと理解というこよについて僕は人は理解しあえない派。 差別については思っていても否認・差別的言動は気を付けてしないようにしよう派。
投げっぱなし未回収。観た人それぞれの判断任せ。
原作未読。
様々な伏線が絡み合って最後にどう回収する?って思ってたら…
そこそこ長い尺有るんだけど登場人物多くて中途半端になってしまったよね。
最後は駆け足感が拭えませんでした。
ガッキーだけがキチンと役を演じきれていた。
宇野さんはある意味ハマり過ぎだけど(笑)
吾郎ちゃんなんてホント勿体無いよね。
奥さんとの葛藤が殆ど描かれなかった。
子供が学校行かない事に納得して応援する母親に検事として父親としての怒りがちょっとしか見えない。
アラン様(磯村くん)にしても佐藤くんにしても後半吾郎ちゃんとの取り調べシーンが絶対大事だと思うんだけどなぁ。
これだけ投げっぱなしが多い作品も珍しいと思う。
原作買わせる計画?
水の音が心地よく、恐ろしい
内容が難しくて理解するまでに時間がかかる作品でした。
見ていると恐ろしく犯罪を犯している場面や精神的に病んでいるシーンが多くあり怖くなりました。
最終的に何を伝えたいのか良く分かりませんでした。
名のある俳優の絶妙な演出
かなりフラットで微妙な内容の作品でしたが、有名俳優の表情やパフォーマンスで絶妙な演出を成し得ているように感じました。決して見ていて楽しいものではありませんが、見て良かったと思える作品でした。
最後まで生き生きとしていた稲垣吾郎と最後までか細い新垣結衣が、思いっきり愕然として密かに幸せを噛みしめるその姿は、何とも言えないものがありました。
もう少し面白く出来たんじゃないかと。
何が言いたいかは分かるが、全体的に薄くて形がぼやける。
水フェチ自体より異性に興味がない事が生きにくくさせてる。何故なら"結婚して子を持ち家庭を作るのが普通だから。"...ってそんな周りの価値観をはねつけ、私は私と生きるのは難しいと感じ殻に閉じこもる。外界に触れなければ、私を否定する人と接する事ないし。それはそれで寂しく…仲間が欲しいのか。
いわゆる世間の言う普通を見せつけ見下しきた同級生の妊婦が一番気持ち悪かった。
正常と異常と偏見
東京国際映画祭の舞台挨拶付き上映会にて。小説は未読です。
登校拒否の小学生がいる家族、田舎の実家で暮らす冴えない女、男性恐怖症の女子大生。
3つの異なるストーリーを少しずつ見ていくうちに、ある共通のものを通じて絡み合っていく…
稲垣吾郎は相変わらずスカした嫌味な役が合うし(褒めてます)、覇気のないガッキーの心の変化や、今年何作出てるの?な磯村くんの空気感も良かった。
正しい欲と書いて「正欲」というタイトル。
正しいとか普通とか何をもってそう捉えるのか、マイノリティが悪なのか。
学校に行けない子供は普通じゃない?
30過ぎて未婚の女はダメな人間?
物語の主軸となるある「欲」にピンとこなくても、そこから派生するこういったことは身近であり想像しやすい。
意識高い系大学生の「私は多様性に理解あります」感は皮肉。
ラストに向けての展開に驚いたが、自分自身もそういう偏見を持っているのではないか?
と突きつけられた気分になった。
大丈夫、きっとそれはどこかには繋がっている
何もかもが真理をついていてグゥの音も出ない。ロマンチックなはずの天沢聖司が好みの系譜の隠語みたいに見えてくる。
好きなものは知らぬ間に繋がりを作っていくけど、同じ好きの中にも細かく分類があることがしんどさを生み出している。楽しみが辛さとセットってどんだけしんどいのか。
多様性の中の多数の中にも多数と少数がある事を知る。マイノリティの中でのマジョリティは多様性で認められるけど、そうでは無い人にとっては多様性という言葉すらしんどいらしいことを学んだ。
一見狂気に見えるものも、実は多様性の一つにすぎない、のかもしれない。
人との違いを個性と呼ぶけど、その個性も多数からみての常識から多くをはみ出さないことで認められている。
人の数だけ個性があるとして、それを擦り合わせて納得いく所で常識ができているのかな。
誰しも生きづらさを抱えているものだけど、こんな種類のしんどさもあるのか、と思った作品。こんな風に明日をみたことが自分はなかったな。
佳道と夏月の共有したものとは。
個人的に印象に残ったのは、部屋が水で満たされるシーン。ああこういう風に表現するのかと感動した。とても納得。こんなに満たされた気持ちになるのね。
心が満たされる状況をこんな風に目で見えるように現すのって面白いしわかりやすいなと思った。
なぜ皆んなと同じように生きられないのかと悩んでいる人たちに観てほしい。
大丈夫、きっとあなたの好きに繋がる人は必ずこの世のどこかに居るから、と伝えたい。
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