イニシェリン島の精霊のレビュー・感想・評価
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自分も「考える人」になって観ないと気づけない
2人の争いは同時に起こっている内戦の比喩なのでしょう。
指を切り落とすのは明らかに異常な行動だけど、あれほど拒絶されているのにしつこくつきまとう方もまた異常。
彼らの行動は異常なのに、そこに至るまでの彼らの気持ちには共感してしまう部分もあって、状況によっては誰しも異常な行動をとってしまう可能性があるのかな…?と考えてしまった。戦争の始まりも、最初はこういう感じなのだろうか。
パブの店主の「彼(コルム)は考える人だ。彼女(パードリックの妹)も考える人だ。お前(パードリック)は違う。いい奴だが、考えない人だ。」というセリフはあまりに的確で、スッキリした。
考える人は、考えない人と一緒にいるとフラストレーションが溜まり、いつか耐えきれなくなる。いい奴だけど「考えない人」であるパードリックは、相手の苛立ちや悲しみに気づけないから、本当の意味では「いい奴」ですらない。(可哀想だけど)
美しいけど閉鎖的で退屈なあの島で、倫理観のイカれた暴力警官や、不気味な老婆、嫌味な売店の店主に囲まれながら死ぬまで暮らしていかなければならない。
そんな中でこれからの人生について考えた時、パードリックから距離を置きたいと思ってしまう妹やコルムの気持ちにも共感できた。
気を抜くと気付けないような些細な描写が実はそれぞれ意味を持つ、繊細さがとても良い映画だった。
きっと自分も見逃している事が多いだろうから鑑賞した人達の色んな考察が聞きたくなる内容でした。
淡々と時間は流れ、粛々と物事は進んでゆく
何処にでも転がっている極些細な、でいてとても奥深い題材を、寂れた田舎町の風景と閉塞感漂う人間関係を軸に描いた不思議な映画。
主題は「星の王子さま」で、王子とキツネの会話に出てくる「飼いならす」と構造的に同じで、それを誇張しつつも実に生々しく描いています。
最終的に「どちらが良いの悪いの」を越え、「正義の反対はもう一つの正義」的に、正解を明示しないで終わります。
これを「奥が深い」と捉えるか、「答えが無い」と捉えるか、「意味不明」と捉えるか…
観た人間にゆだねられるところが多い、評価が分かれそうな作品です。
私は結構楽しめました♪
なので★4つ!と行きたいところですが、話が全体的に暗く、わずかですがグロイ描写もあり、何度も見たくなるような作品では無い(★-0.5)かなぁ?
でも、1度は観て、自分なりに嚙み砕いて、解釈してみて欲しい作品です。
私には向いてませんでした。
戦争の不条理さや人間の愚かさを表現したいのだと思いますが、それっきり丸投げで救いが描かれてなく、伝わってくるのは人間に対する絶望感だけでした。この作品を高く評価する人を否定するつもりはありませんが、私は映画に救いや希望や感動などを求めるタイプなので、問題提起や批判だけしてオチもなく終わってしまう類の作品は好みではありません。あと、ストーリーの奇抜さが私の許容範囲を超えていました。
今までに見たことない復讐エンターテインメント!
東京国際映画祭にて鑑賞。
やられたらやり返すのではなく
やられても、相手にぶつけない
今まで見た復讐エンターテインメントを
大きく外してくる、
報復について深く考えさせられる映画でした。
ウクライナ情勢が叫ばれた2022年の公開に
相応しい時代を象徴する映画だったと思います。
アイルランドのイニシェリン島という
田舎や離島ならではの人間関係の煩わしさ
狭いコミュニティで起こる悪意と連鎖が、
非常によく描かれていました。
この鬱屈とした状況に辟易して島を出る
主人公の妹の気持ちが痛いほどわかります。
日本でも共感する人は多いのではないでしょうか。
日々の鬱憤を他人にぶつけてしまった
自分の中で消化できない
そんな自分と映画の人物を対比させてしまい、
エンドロールのタイミングで、自然と涙が出ました。
アイルランドでは大変評価が高いとのことですが、
派手な演出がなく淡々と展開されるため、
日本では賛否が分かれると思います。
1923年のアイルランド内戦時代を描いたとのことで、
100周年という意味でも今作られるべき映画だと思いました。
アイルランドの美しい風景と現代に通ずる人心の貧しさ
全編を通してアイルランドの美しい風景、歴史ある家屋、文化施設、その一方で描かれる1920年代だが、現代にも通ずる人と人のコミュニケーションの難しさ、そうしたものが描かれてます。背景にはアイルランド独立戦争があり、とても考えさせられました。
自他ともにいい人でいるのは難しい
わかるわー
ワタシなんぞ自分で自分の事を結構いい人だと思っていますが
相当離れていった人が多いもんね。
それにしても島民が自分のことしか考えていない
クズだらけなのは笑いました。
着地点が見えない映画はしんどいけど。
70点
3
MOVIX京都 20230129
凄いものを観てしまった。
向こう岸で起こっている戦争の黒煙と遠い爆発音に悪態をつきながら主人公の廻りで起こる不可解な切れつ、最初は冗談混じりに始まり次第に抜き差しならない状態に、後半大人しい主人公と過激な友人の関係性が逆転していく過程が怖い、色んな比喩が込められた物語に思える主人公と友人のラストでの会話が唯一の救い。
むしろホラー映画
(部分ネタバレ)
民話の宝庫アイルランド。
想像力が豊かなケルト人。
マーティンマクドナー監督の映画を見るとそれが納得できる。
劇作家だったが映画業へ乗り出すと寡作ながら高品質で注目されスリービルボードで時の人になった。
不条理なブラックユーモアと紹介されていて、生ぬるい共鳴をはじき返すようなストーリーをつくりだす。
たとえばスリービルボードで言うと、さいしょ観衆は娘を失ったヘイズ(マクドーマンド)に同情を寄せる。だけど露命のウィロビー署長(ハレルソン)にも同情の余地がある。
生ぬるい共鳴をはじき返す──とは、観衆がシンパシーを寄せる人物が変転したり複合したりするような両義性をもつという意味だ。同様に一元な憎まれ役も存在しない。
そんな善悪の定まらない人物配置を寓話の気配が覆う。
非情であったり残酷であったとしても人の営みを高みから眺めているような滑稽さがある。
イニシェリン島の精霊もそんな話だった。
日本語で精霊というとおとなしい印象だがBansheeは恐ろしい存在らしい。
旧世代で洋楽をかじった人ならSiouxsie And The Bansheesをごぞんじだろう。奇矯な格好で奇声をあげるイメージが残っている。
Bansheeで検索すると、どの画像でも邪教のようなマントを羽織りフードをかぶった女が絶叫している。
『バンシー(英語: banshee、アイルランド語: bean sidhe)は、アイルランドおよびスコットランドに伝わる妖精である。人の死を叫び声で予告するという。』
(ウィキペディア:バンシーより)
映画にもBansheeとおぼしいお婆さんが出てきた。マント姿で水死体を引き寄せる鉤のついた杖を持っている。町民の命運をつかさどる、ありがたくない案内人だった。
イニシェリンには美しい自然が広がっているが、娯楽と言えばパブくらいで、見知った者どうしがぎすぎす生きている。遠くで内戦をやっていて風向きによっては音が聞こえる。島生活は平和だが退屈だ。眺望がよくのんびりムードなので、安楽な気分で見始めると、苛烈な表現に度肝をぬかれる。
パードリック(ファレル)は長年の友人であるはずのコルム(ブレンダングリーソン)から突然絶縁されてしまう。理由も分からず動揺を隠せないパードリックは妹のシボーンや隣人ドミニクの助けも借りて何とかしようとするも、コルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と言い渡される。
コルムは器用で才能がある。パードリックは善人だが退屈だ。
コルムはパードリックと馬鹿話をしながら無為に過ごすことで、後世に名が残らない人生に嫌気がさし、友人関係を絶つことにした──とパードリックに説明する。・・・。
海外評からは悲劇と喜劇/ユーモア/ウィット/哀愁/ほろ苦さなどなどの言葉が多数見られたが、個人的にはアスターのようなホラー映画と言って過言ではなく、たいへんなストレスをおぼえた。
そもそも“指を切り落とす”というのがはったりでも比喩でも言い回しでもない。
むろんそれがはなはだしく誇張されたユーモアだというのはわかる。全体として滑稽な寓話になっているのもわかる。
ただ、わたしは片手全指を切り落とすコルムの極端な思い込みにある程度の現実味を感じた。やるやつはどこまでもやっちまうもんだし、人間関係だって脆いもんだ。良好にみえる人と人どうしが、ふだん互いにどんな気持ちで接しているのかなんて解らないもんだ。
──と同時に、友人から絶縁され妹にも出ていかれ島にとりのこされたパードリックの気分を共有して暗澹たる気分にもなった。
退屈なわたしはパードリックと同様に、唯一の友だったロバにも先立たれ、ひとりぼっちで毎日黒ビールを飲んでくだまいて孤独死する──ようなもんだろう。わかりきった将来とはいえ気持ちが落ち込んだ。転じてたいへん見ごたえがあった。
現実ではグリーソンよりファレルのほうが器用だろう。ファレルはイケメンもマッチョもランティモスもKogonadaも何でもこなせる。本作では、あの太眉が八の字を描き、困り顔が真に迫った。マクドナー作品やロブスターなどでも感じたが華やかなスターが完全に庶民の顔になれるのがコリンファレルのすごさだと思う。
またバリーコーガンがえぐいほど上手だった。ゴールデングローブとアカデミーにノミネートされた他、幾つかは受賞したそうだ。
なおイニシェリン島の精霊は絶賛され、多数の賞をとった。
英語のウィキにはList of accolades received by The Banshees of Inisherinというサイトがあり56のアワードや団体での選出やプライズが列挙されている。
自分の事は見えない~
狭くて、島中の人間がすべて知り合いの様な
閉鎖空間的な島で、友達だと思っていた人から
いきなり絶交を言い渡される主人公の困惑と
自分に残された時間を思って
もっと有意義な過ごし方がしたいと
友人に絶交を言い渡す老齢の男。
個人の話の後ろに、
実はアイルランドの内戦と言う
見ようによっては
近しい関係過ぎて行き違いが起きたときに
逆に許せないというような諍いが
重ね合わせられているように思えます。
最後はとんでもない暴挙に出る主人公。
そこまでしなくとも~~
でも、そこまでしても切れない関係って
やっぱり有難いのかな~~
で、月に8回程映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては
私は友達がいません。
だから、この映画を観てて
主人公と絶交しようとするコルムの気持ちと
大事なロバが死んでしまったパードリックの気持ち。
どちらもなんか解る。
私は気が付けば自分の話ばかりしてる。
気が付いて自分の話を控えようと思うと
他に話をすることが無い、相手にあまり興味が無いから。
ロバの話しかしないパードリックに辟易するコルム。
ロバ以外に話のタネが無いパードリック。
パードリックと話していると
狭い島の中で更に狭い世界に
押し込められる様なコルムの焦り。
警官に殴られて意気消沈しているパードリックを
黙って馬車に乗せてやるコルム。
人として付き合いうのは良いのだけど
プライベートでは付き合いたくない。
パードリックは私の様で、
コルムは私の周りの人の様。
個人的に結構キツイ映画でした。
パードリックの妹を演じた
ケリー・コンドンと
ちょっと不憫な役回りのバリー・コーガン
も良かったです。
解説が必要。監督が何を言いたいのか分からんかった。
難しかった。
監督はアイルランド人なので、北アイルランド紛争をモチーフにしてるのかな?
それとも「紛争、戦争全般」を寓話化したのかな?
よく分からんが、些細な問題が回復不能にまでエスカレートしてく様は気味が悪いが、「コメディ」といえるホド滑稽でもなく、とらえどころのない作品だと思う。
なかなか「見るヒトを選ぶ」なあ。
忘れられない心に引っかかるトゲみたいな
そういえば「スリー・ビルボード」もかなりグロテスクだったことを思い出す。人間関係も物理的にも。絶妙な塩梅で後味が悪い。でもおすすめ。
孤島には産業と言えるものはなく、店の女はゴシップに飢えており、ヒロ...
孤島には産業と言えるものはなく、店の女はゴシップに飢えており、ヒロインは読書にしか慰めを見出せず、抱き寄せてくれる男もない身の上を悲しんで、夜、寝床でひっそりと泣く。この先、死ぬまでの長い時間を思って、対岸の死神に引き寄せられる淵まで行く。何もやることがないこと、時間を持て余すということ、これは人間にとって恐るべきことなのだ。
パードリックとコルムもまた、毎日やることがない。ただ、違いは、考える人コルムがこの先をはかなむのに対して、やや頭が弱く、酔うと記憶をなくせる救いがあるパードリックは日々の単調なくり返しに満足できているという点だ。(ただし、コルムの知識人という自負も眉唾物だ。それは、ヒロインからモーツアルトの知識のいい加減さを指摘されたところにも明らかだ)
パードリックの、コルムへの偏愛の深さ、そしてその逆への憎悪の深さは、見ていて異常だ。ふたりは男色の関係にあったのだろうか。そのへんはあいまいだ。が、気になったのは、パードリックのロバへの愛。コルムの犬への愛だ。彼らは動物と、それぞれ肉体関係にあったのではないか。コルムが犬とタンゴを踊るシーンはなまめかしく、それをパードリックに見られた時の慌てぶりがそれを示している。また、ロバが死んだときのパードリックの度を越えた悲しみようも気になる。ロバが死んだのは、コルムの投げた指をのどに詰まらせたからであり、その恨みから彼はコルムを殺そうと決意したともとれる。
ヒロインがロバを毛嫌いする意味もここからわかる。大好きな兄の心を奪うロバに嫉妬してのことだろう。
もちろん、大きなテーマは別にある。こんな狭い孤島で、男同士が反目し対立し、ついには殺し合う。それは1923年のアイルランド本土でも同じであり、その理由はIRAと英国軍の戦争だったのだが、今や島民にもなんだかわからない。戦争をしたいからしているだけのようにも見える。それは、2023年のウクライナ戦争も同じなのだ。
そんな突然。。 そう思ったものの、なくはないよなとも思う。 じわじ...
そんな突然。。
そう思ったものの、なくはないよなとも思う。
じわじわと積み重なった不満や不信や、そういった関係性を続けることを困難にする事柄たちが、積もり積もって、ある日、限界に達してしまう。
都会なら、連絡を絶ち、ひたすら相手を避ければよいだけかもしれない。
でも、島の生活でそれは難しい。
そうして始まる絶縁。
しかし、相手にはそんなこと理解できない。そんな風に思ってたことすら気づいてなかったかもしれない。
どちらが悪いというより、相性の問題というか。
だから、なんとかしようとする。
でも、なんとかさせたくない。
心底嫌っていたら見せない優しさがそこにはあって、絶縁を完成させるには、ある程度の過激さが必要だった。
そのせいで事態は悪化していってしまう。
きっかけは些細な日々の何か、、そこからここまでのことになる。
そういう話なのだろうか、とぼんやり考える。
面白くなくはない。
猛烈に地味だが、面白くなくはない。
先にムクレた男のキャラの理解し難さ、
感情移入し難さが最後までネック。
尤もらしいが。
結果、客を放置して幕。
唯一コリンファの退屈凡庸演は買うが。
非支持。
鈍感さと田舎町がもたらす不幸
仲の良いおじさんに、突然絶縁を言い渡された
おじさんの話。
鈍感さがもたらす不幸と
田舎町独自のコミュニティの生きづらさを
ひしひしと感じた作品でした。
主人公のおじさんは、
つまらないし人の気持ちがわからないという
なかなかの曲者なのですが
それに気づかず自分の主張を続けることで
まわりの人を不幸にしていきます。
仲の良かったおじさんをはじめとして
町の他の人や大事な人までも離れていくという
なんとか悲しい展開でした。
人の忠告にちゃんと耳を傾ける、
人の気持ちを考える、
当たり前のことですがそれを怠ると
人間関係が崩壊することを思い知りました。
主人公以外の町の人たちもなかなか
頑固な人が多かったです。
田舎を悪く言いたいわけじゃないのですが、
小さい田舎町でずっと育っていくと
いろんな角度で物事を見れなくなってしまう。
そして外で活路を見出そうとしなくなるんだなと
感じてしまいました。
全体的に暗い作品でしたが、
綺麗な景色とのギャップのおかげで
見入ってしまいました。
人間観察の凄み
元は、というか何事もなければ出てくる人達はほとんどがいい人だ。
警官を除く。
ただ空気を読めるか否か、想像力があるか否かの違い。
イギリスの田舎のちっさい島でありながら日本の能面飾ってる男の家。
そりゃ山羊や羊の話しかしない男と話が合うわけが無い。
それを映画開始わずか数分で悟らせるのだから、もうこの作品の描き方が空恐ろしい。
例えてみれば上手くいってたと思ってた夫婦関係が、実は妻が我慢してたから成り立ってたもので、定年を迎えたら突然離婚を言い渡された夫、のような図式である。
夫=絶交を言い渡された側は何が悪いのかさっぱり分からない。
これが都会であれば他に目が向いて気が紛れるだろうが、何しろ島だ。逃げようがない。自分が拒絶されたってことを常に突きつけられないといけない。これはしんどい。
絶交する側の気持ちも分かる。SNSでもあれば承認欲求も満たされるものを、そんなもん無い時代だ。島を出るには歳をとりすぎた。
状況も人物造形も見事だ。この監督を追いかけていくしかない…完全敗北を認めた(なぜ勝負してるのか笑)。
美しく雄大な自然とロバと犬
何事も、相手への敬意を忘れてはならない。そして、行き違いが起きたときには、思慮の足りない行動、感情に任せた行動、強情な態度は慎まなければならない。
そんな当たり前のことを、対象的な二人を軸に見事なストーリーと映像美で教えられる。
1920年代の孤島と比べて、社会もとても複雑になった。しかし、雄大な景色と同じで、人は簡単に変わるものではないと突きつけられた気がする。
物語の展開がどうなるのか、すごく引き込まれた作品でした。 映画とい...
物語の展開がどうなるのか、すごく引き込まれた作品でした。
映画という技法を最大限に発揮された素晴らしい作品だなぁと感じました。
この映画を映画館で見れてとてもよかったです。
二人の今後の関係の展開も気になりました。
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