ヴィレッジのレビュー・感想・評価
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フィクションとしてのどん底感を楽しむ
どん底にいる人たちの物語ってやはり魅力的だ。メンタルで病んだ人、借金で首が回らない人、キャンブルに依存する人、そしてどうしようもないほど悪いやつ。たいてい主人公はろくでもないことをやって取り返しがつかなくなる。そんな彼らを見て安全なところからエンタメとして楽しんでしまう。でも、自分はそんなことしないと言い切れるだろうか。
自分ではどうしようもない流れってものがある。いい方向にも悪い方向にも。本作はそれをエンタメとしてうまく演出していた。いや、もちろんあの村の存在や置かれた状況、住民たちの反応、すべてフィクション感が強い。フィクション感が強いのに横浜流星の廃れた感じや古田新太、杉本哲太の悪どい迫力でなんとなく持って行かれてしまった。藤井道人って監督は映画としての訴え方がうまい。でも、彼は社会問題として訴えたいんじゃない気がする。あくまで映画というエンタメ作品として提示しているだけ。それは彼が様々なジャンルの映画を監督しているところからも想像できる。そしてどれもそれなりに面白い作品に仕上げてくる。
本作もそれなりに突っ込みどころはあるが最後までエンタメとして楽しんでしまった。次はどんなタイプの映画にするのだろう。今から楽しみだ。
救いのない夢物語
監督と主演の上映前舞台挨拶付きの回を鑑賞。
ストリートビューでロケ地の村を探したとか、シナハンに横浜くんも同行して役作りしたとか。
事前募集の質問で、穴から聞こえてくる音の録音方法は?というのがあって、監督が秘密と仰ってて。その後映画を観て理解しました(そりゃ観る前には言えないよ。なぜその質問選んだ?)
山々に囲まれて小さくて閉鎖的な村で起こる物語。加害者家族である主人公とゴミ処理場問題、村の伝統である「能」が不気味さを加速させる。
観終わった後に深いため息を吐いた。
主演の横浜流星はじめ役者陣も良く、透役の一ノ瀬ワタルには本当にムカムカした。ゴミ処理場の同僚役の奥平大兼が最後に主人公に向けた表情が印象に残った。
汚れた「ふるさと」を象徴的に描いた作品
本作の監督である藤井道人監督作品と言えば、2019年に「新聞記者」を、2021年に「ヤクザと家族 The Family」を観てきました。いずれも非常に面白い作品だったので、本作も期待して観に行きました。
前々作「新聞記者」は東京を、前作「ヤクザと家族 The Family」は地方都市を舞台にしたお話でしたが、本作は山村を舞台にしたものでした。こうして俯瞰してみると、藤井監督は都会から田舎まで、この日本の現代社会を隈なく描こうとしているのではないかと勝手に解釈したところです。
肝心の本作ですが、
「兎追ひし彼の山
小鮒釣りし彼の川♪」
で始まる童謡の「ふるさと」を地で行くような、言い換えれば日本人の原風景のような山村で暮らす人々と、そこで起こった事件を描いていました。「霞門村(かもんむら)」と名付けられたこの山村には、藁葺き屋根の旧家や田園風景が広がり、恐らくは数百年の歴史があるのではないかと思われる薪能の伝統もあるのですが、ただ一つそれらに全く似つかわしくないものがあります。それが本作の真の主役とも言うべき廃棄物の最終処理場でした。
10年程前に建設されたこの処理場、建設前には反対運動もあったようですが、今や時代はSDGs。リサイクルとか環境保護とかいう身の毛もよだつ流行りのお題目を使うことでこの処理場が今や村のシンボルになり、テレビの取材も来るほどの存在になっていました。実際は国だか県だかから出る補助金が目当てで造られた側面も大きく、そのために国会議員だか県会議員だかに大橋修作村長(古田新太)がキックバックを払っていることが暗示されてしました。また最大の問題は、暴力団が深夜に産業廃棄物を不法投棄していて、しかもこれは村長らもグルになっていたというのだから、この腐敗ぶりは凄まじいもの。日本人が心に抱く「ふるさと」が、実は都市部にも負けず劣らず汚れた存在になっていたことが描かれていました。
さらに興味深かったのは、処理場が建設されたのが、村の氏神様が祀られ、村祭りの時には薪能が演じられる神社の裏山の頂上付近だったということ。つまり長年村の守り神とされてきた神社の後継かつ上位概念として、現在は廃棄物処理場が存在しているということが示されていたことでした。
話の内容は、この処理場で働く片山優(横浜流星)の行き場のない閉塞感や絶望、幼馴染の中井美咲(黒木華)の登場でほんの一瞬だけ訪れた華やいだ時間、そして再度のどん底への転落を通して、現代日本人及び日本社会の惨状が、日本中至るところまで蔓延してしまっていることを、観るものに訴えた作品だったように感じたところです。
俳優陣で感心したのは、村長の弟で、村を出て刑事になった大橋光吉を演じた中村獅童でした。薪能の伝承者でもある光吉が能を舞うシーンが少しありましたが、流石は歌舞伎役者、動きに全く淀みがありませんでした。また、劇中で演じられた「邯鄲」という能(昔の中国にあった蜀国の邯鄲という街の宿屋に泊まった盧生(ろせい)が、不思議な枕で昼寝したところ、紆余曲折を経てやがて一国の王になるが、全ては栗ご飯が炊きあがるまでの「一炊の夢」だったというお話)も、絶望のどん底で喘いでた主人公の優に一瞬訪れた春とその後の転落とオーバーラップしており、なかなかニクイ創りになっていました。
主役の横浜流星も、昨年公開された「流浪の月」で演じたDV夫同様、目の下に隈が出来るような悲惨な状況に立たされた人物の内面を実に上手く表現していたと思います。
以上、結論を言えばかなり暗い作品であり、鑑賞後スッキリ出来る内容では全くありませんでしたが、藤井監督の過去作品と並べてみると、監督の問題意識が分かるような気がする作品でした。昨今の社会の動きを鑑みると、次回作はもっと暗くなりそうですが、2年後(かな?)楽しみにしています。
もっと有意義な映画をつくってください
予想していたとはいえ、冒頭からひたすらこころ寒くなるような陰鬱な描写が続き、おまけに近くの席のおっさんが外から持ち込んだお菓子かつまみのビニール音をカサカサ鳴らし続けるので、途中でもう帰ろうかなと思ったのだけど、いつの間にか映画の世界に引き込まれていました。
というわけで『ヴィレッジ』。
物語は、ずうーっと、ある「秘密」を抱えて進行します。ドキドキして、後半までそれなりに楽しめたのですが、蓋を開けてみれば「秘密」も想定内のことで、全体を通して見ると、安っぽい感じのする内容でした。
以下、鑑賞中に思ったことを箇条書きにします。
①横浜流星は、ほんとうにイケメンだな。男前というだけでなく、なかなかいい役者だ。
②黒木華は魅力的、というか、男を吸い込む魔力のようなものを持ってるな。顔の(お肌が荒れてるのか?)ぶつぶつが妙にエロチックだ。
③夜中に廃棄物を人力で埋めていたが、なぜ重機をつかわないのか?
④あれだけボコボコにされたのに「メイクで隠せるだろ?」って、隠せるわけないだろ。
⑤人が行方不明になってるのに、何事もなかったようにみんな平然と日常をおくっていて不自然すぎる。
⑥あれだけ顔に負傷しているのだから、真っ先に優が疑われて、すぐに犯行が露見するはずだ。
⑦この村の警察は機能していないのか? 能を舞っている場合ではない。
⑧あれだけボコボコにされたのに、怪我の回復が異常に早い。不自然だ。
⑨エアバッグのついた車に乗るべきだ。
⑩こんなことはないだろうが、これに似たようなことはあるだろうし、彼らに似たような人はいるだろうな。
――などなど(映画の中の世界について、あんまり細かいことを言うのはよくないね)。
とにかく物足りなかったです。
もっと意表をついた、「そう来たか!」というような展開にしてほしかった。村社会の暗い因習のようなものが起因したストーリーなのかと思ったのだけれど、そうじゃなかった。不満です。土着的な要素や「血」(血統)の扱いかたも中途半端だし、能を取り入れた必然性もあまり感じられなかった。
お金を払って、2時間を費やして、いや~な気分になっただけでした。べつに見なくてもよかった。
厳しいことを言うようだけど、多額の製作費をつかって何やってるんだろうという気になっちゃいました。
もっと有意義な作品をつくってもらいたいものです。
なんで高評価?
だいぶ頭悪い映画だと思うんだけど…
こんな頭悪い人たちしかいない村ある?ツッコミどころ満載というか、ツッコミレベルが低すぎて、何処を突いてもおかしい点ばかりで日本の文化レベルが低い事を認識。
一番ツッコミどころは、あのジャイアンを殺⭕️場面。アレを編集上勿体ぶる理由は?中学生でもわかる事なのに、実は…て編集されても「いや、知ってるわ」って言いたくなる
展開の波がいい意味で疲れます
物語全編がとある地方の村。これくらいのスケールの映画が好きなんですよね。私は面白かったです。
最初は不幸な働かせられ方で我慢の展開から、自分の仕事の新しい方向性で開ける幸せな展開、ある事件や不正発覚からドン底の展開、全てがなくなり夢が覚めたようなラスト(エンドロール後)と凄まじい展開が逆に新鮮で面白かった。
こういうラストだったらさらに良かったのに!という私の希望の演出を一つ言うと、
エンドロール後のケンイチ君が最後に村から去る所で終わりますが、劇中ではしどろもどろの話し方で発達障害気味だったケンイチ君が最後の最後で堂々と流暢な言葉を使い含み笑いで終わると言うのはどうでしょう?
ベタですかね(笑)
「藤井道人、横浜流星のタッグ」
今年53本目。
横浜流星の髭姿格好いい。男性人生で一度位髭生やしたい時あると思います。奥平大兼君金髪新鮮。映画「MOTHER」、ドラマなど見て来て金髪初めていい。黒木華さんが日本一の女優だと感じているので、映画に出演されるとその作品の作りが一段階上がると思います。藤井道人監督は表情を撮るのが本当に上手い。「新聞記者」も最後あの表情だし今作も最後表情。少し時間をとって撮る所に役者が応える、気迫を感じます。
清濁併せ呑む
こういった限られた世界でモノを動かすことには、「清濁併せ呑む」事が求められて、一度「濁」を飲むとドンドン深みにハマって行きますね。優は、始めは犯罪者の子で、母親は借金まみれの酒飲みと言う不遇な境遇から、昔の彼女(?)の登場により、スポットライトのあたる境遇へと変化していくが…。
面白かった
最初の燃えてるシーンからみさきが来て幸せな王様になってそっから夢が覚めて元の火事に戻ったってコト!?
穴の中から音を出してたのは未来のおデブだったんだね
少年のアビスみたいな幼馴染の三角関係を感じる映画でした。奥平大兼と横浜流星がかっこよかった
戦犯は無駄な正義感笑
面白かったです。映像も綺麗で能は全体的に奇妙さ怖さを出してくれているのでいるものだったのでは。
映画の感想としては「1年間の楽しいことは夢だったね〜」
横浜流星が広報やってたらそりゃ行くわ
めちゃめちゃ会いに行くわww
作間も戦犯だったけど演技上手でよかったね!!
イチオシは金髪の子!!殴られて「俺の番すね」の演技!!似合うな!!!最高か!!!
・横浜流星の憂いを携えた眼付き。台詞よりも眼光に力がある。 ・画力...
・横浜流星の憂いを携えた眼付き。台詞よりも眼光に力がある。
・画力はすごくある。それだけで物語を引っ張る力がある。特に、能との絡みが良い。
・黒木華と出会ってから生きる意義を取り戻す流星だけど、表情の変化にグラデーションがあるわけではないから、広報やることになった時に急にコミュ力高くなってどうした??みたいなギャップがある。隠キャが急に陽キャになったかのような。
・結末が読める。物語としてはありがちな展開。台詞での仄めかしもあるし、意外性がない。最近だとティモシーのボーンズアンドオールも似たような展開だが、あちらはもっと先を行っている。
・色んな社会問題が要素として詰め込まれているが、あくまでも人間ドラマにフォーカスされていて、背景が深掘りされてるわけじゃないから、単なるモチーフに落ち着いて残念。もっと描きようはあったはず
・木野花ももう少し活かし方があったような、、、
ラストシーンが不可解❣
映画批評を読み「新聞記者」の藤井道人監督作品なので鑑賞。山深いゴミ焼却場と環境問題、村人に虐げられている片山優(横浜流星)。東京から出戻った幼馴染中井美咲(黒木華)が彼を支える。美咲に懸想する大橋透(一ノ瀬ワタル)、能を教え舞う大橋光吉(中村獅童)。美咲の支えで順調に立ち直った優だが・・・・。ラストシーンが不可解❣
展開が読めなくてハラハラ
続きが気になる〜気になる〜であっという間で圧巻の2時間。あーゆー毒親ってこの映画みたいに更生することってあるんですかね?こういう展開だとなかなかハッピーエンドにはならないけど、そうなって欲しい自分がいた。
能いる?説について考える。
村のゴミ処理場に反対して村八分になった父親の呪縛を背負う主人公は、里帰りした幼なじみの存在がきっかけで、ゴミ処理工場の広告塔になり・・・
以下ネタバレ気味
いわば村の代表に成り上がるも、施設が違法廃棄物処理に加担していたことが公になり、主人公は村のスキャンダルの全責任を背負わされる。負の呪縛から逃れきれなかった主人公は、ついに村の中枢を破壊する。
▼能は必要だったのか説について考える
・この映画のテーマとして、ルッキズム(外見至上主義)に対する痛烈な批判があるのではと思いました。
・「犯罪者の息子」という表面的な評価をするだけで、主人公の父がどんな心情だったかには興味ゼロの村人たちによって、主人公は村八分に遭い苦悩する
・そんな主人公はメディアに取り上げられるも、「若手のホープ」というところだけに食いつかれ、犯罪者の息子という経歴についてはノータッチ。ゆえに主人公は返り咲く。
・能に幼い頃から親しみがある美咲は、「能は意味は分からなくて良い」「己と向き合うもの」としているが、ルッキズムに支配された現代人は、能を見ても、退屈な動きとしか感じ取れず、能が描く精神世界さえ、理解する感性を失ってしまった。
・処理施設は、地下水への浸透といった目に見えない自然への影響には関心が及ばなかった結果、水質汚染が進行し、村が破滅する未来が示唆される。
・つまり、現代人は、他人の心情を慮るどころか、目に見えない自然の理などに思いを馳せる精神までもが失われてしまっていることを、能が鍵となってあぶり出される。
・そして自然が神だった時代は終わり、金が神となった現代は、自然よりも利益を優先した結果、最終的に自らのいる地を住めない場所にしてしまう。
・そして、冒頭では、「長い年月にわたって栄華を誇ったところで、終わってしまえば、ただの夢だ」という主旨の能を引用し、劇中で度々登場する。
・資本主義に転じるまでは、悠久な歴史の中で、自然が神だった時代があったわけですが、資本主義に転じてからの自然破壊のスピードはすさまじく、まさに自然が豊かな時代が夢のようだった時代に、我々は突入しようとしている。
・以上のことを描く上で、能を引用することが効いているのではないかなと思いました!
・水俣病をテーマにしたジョニーデップ主演の「MINAMATA」の落とし所は、「水俣病は過去の出来事じゃなく、水俣のような出来事は世界各地で頻発していき、やがて地球規模の災害になりうる」というところだった
・そんな感じで、今作も、ひとつの村を描いているようでいて、実は世界全体の縮図こそが、この映画に登場する村なのではないかとも考えることができるのがまた、味わい深い。。
・この映画のなかで、とにかく不幸になっているのは、前時代的な人間、つまり、資本主義よりも自然を優先してきた人間たちばかり。
・そういう反資本主義な人にとっては、現状の世界というのは、「この世界こそが夢」と言い聞かせなければ生きていけないほどにしんどいものなのでしょう。。
▼単なるシンデレラストーリーで終わらなくて良かった。
・シンデレラ的に成り上がって終わるんじゃないか!?と思ってからの激動がすごかった。
・主人公の呪縛の発端となったゴミ処理施設によって、主人公は貶められ、そして返り咲き、最終的には施設と自分の立場を守るために仲間まで売ろうとするところまで大変身する振れ幅のデカさが豪快。
・人間のエゴさ、愚かさ、グロテスクさを見事に描けていたし、しっかり演じ分けられてたのでは!!
・主人公が成り上がるにつれて、メディアで元犯罪者の息子のレッテルで炎上するのではとミスリードさせておきながら、そうはならないのがナイストリック。
▼この映画好きな人は多分『コクソン』も好き
・ダークトーンで一つの村を描きつつも、社会の闇の縮図のなかで翻弄される人間模様を描いてる
・全体に漂うダークおとぎ話感
・伝統的な慣習を織り交ぜてる
といった共通点がある『コクソン』っぽい作品だなぁと個人的には思いました。
一人の人間の感情の移り変わりを心で感じる作品
抜け出したいけど出れない、アリジゴクのような穴に落ちてもがいている錯覚に陥る。
一人の人間の感情の移り変わりを心で感じる作品。能が能面の微妙な傾きで多彩な感情を表現するのに対し、優は目で感情を表現している。題材となっているムラで起こる事象もこの表情の移り変わりを出すための要素の一つ、社会問題も様々な価値観の人に関心をもってもらいたい要素の一つに思えてくる。(製作者の意図ではないかもしれないが)
死んだ魚の目のような生気のなさ、あきらめ、心の中で静かにマグマのようにたまる怒り、つかみかけた希望、罪悪感、恐れ、主人公の様々な表情が心につきささる。能面の裏に隠された心の叫びが伝わってくる。人間の、社会の、隠したいけど隠せない部分、歪みの象徴としての村。根っからの悪人もいないけど、根っからの良い人もいない。やりたいことができているわけでもないけど変わろうとすることもない。大なり小なり、誰もが経験する見たくない部分を見せつけられる。やっとつかんだものを失う恐怖や長く続かない儚さ。わかりやすい救いがあるわけでもない。それでもなぜか映画に対する嫌悪感は残らない。キャストに人間らしさを感じてしまうからか。それぞれの演技が素晴らしい。
ラストに主人公が見せる表情は、縛られていた鎖を解き放ち心の自由を手に入れた解放感にも見えるし、やっと終わる安堵の表情にも見えるし、眼をかけてくれた人への感謝と決別の表情にも見えるし、結局同じことをしてしまった父親に対する共感とやるせなさの表情にもとれる。あの表情をどう見るかで、感じるメッセージも変わると思う。とにかくあの表情が頭から離れない。そして見終わった後もいろいろなことを考える。自分には何ができるのか。
できれば絶望、あきらめだけでなく、わずかでも希望につながってほしい。エンドロールのあと、まだ変わることができるチャンスは残っているのでは、そんな風に思いたい自分がいる。
ここまでが1回目の鑑賞で感じたこと。2回目はまた違った印象になった。
人々を村に縛り付けていた、心の自由を奪っていた象徴ともいうべき村長の家を、過去からの歴史とともに焼き払うことで、逃れられないと思い込んでいた呪縛から解放する、それをやり遂げた充足感、初めて見せる人間らしい満ち足りた表情。それはまるで、亡くなった父親に”やり遂げたよ”と報告しているかのよう。
穴は夢の始まりと夢の終わりの区切り。
鏡にうつる幸せな場面は、一瞬の夢、虚構、生きている感じがすると思っていた時間は、儚い夢の間だけだった。
そして、犯罪者の息子といわれ苦労してきた自分が、犯罪者だといわれる絶望感。
随所に製作者のこだわりを感じる。そういった考察も楽しめるし、見るたびに違った解釈ができる。そういった寛容性、奥行きの深さを感じるところもこの作品の素晴らしいところである。
映画はそれぞれが自由に感じてよいもの。いろいろな意味で何度も見たくなる作品である。
苦しいのに何度も見たくなる不思議
直視するのが苦しかった、ラストの優の表情。心えぐられるのに、あの表情をまた見たくなる不思議。凄みと説得力を感じ、どうしようもなく惹き付けられた。#ヴィレッジ #ここ凄ヴィレッジ
見ごたえある心理描写、映像美
まずこれは村ホラーじゃないです。格差社会、貧困、負のループの日本社会の縮図を繊細な心理描写で見せた映画。間違えてホラーを期待してはいけない。きれいごとだけ言ってる映画は好きではないので、好みの方面です。
➀オープニングがかっこいい。能、音楽、映像の差し込みがすばらしい。
➁横浜流星がすごい。闇をかかえた姿から明るくなり、また闇落ち。
途中、表はさわやかなんだけど、裏では犯罪に手をそめるなどの複雑な表情や藤井監督 に要求された能のお面のように泣いてるようで笑ってるような表情をみごとに体現されていて凄いなと思いました。
➂脇を固めるキャストもみんないい。特に能を舞っていた中村さんの姿や一ノ瀬さんと古田さんの悪ぶり。古田さんの言葉が何個かつきささりました。
➃一ノ瀬さんと横浜くんの死闘。もう一ノ瀬さんのパンチが本物すぎて迫力がすごい。対する横浜くんのやられっぷりも凄い。あれ、倒れるほうも勢いすごいから。
➄言葉にしないけど、日本人ならわかる圧力や忖度を感じながら進む心理描写を楽しむ?作品。また下手にハッピーエンドにしないのが、いい。社会派ミステリーとして簡単にハッピーエンドにしないのが正解。
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