ヴィレッジのレビュー・感想・評価
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人は能面を被っている
ある村。
周囲を美しい自然に囲まれ、神秘的な“薪能”が伝統として受け継がれている。
それだけなら魅力的だが、村の実態は…
閉塞的で、息が詰まるほど重苦しく…。住人たちも生気が無い。
村の生計を支えているのは、巨大ゴミ処理場。
過酷な労働現場のみならず、パワハラや賭け対象の暴行が蔓延り…。
深夜には違法投棄を請け負う。
村長や村長の息子、ヤクザ、一部の者が権力を握る…。
この村で暮らす青年・優。
昼はゴミ処理場で働く。村長の息子・透に目を付けられ、徹底的に標的になっている。
夜は違法投棄を手伝う。ギャンブル狂の母親の借金の肩代わり。
優が村の商店に買い物に出掛けたり、行事に参加するだけで、住人たちはあからさまに陰口。
「どうして居るの?」「よく居られる」「居なくなって欲しい」…。
優は何をしたのか…?
いや厳密には、優は何もしていない。したのは、優の父親。
ゴミ処理場建設時反対運動が起き、その急先鋒だったのが優の父親。賛成派の人を殺し、家に火を付けて自殺…。
犯罪者の子供が!
当人に罪は無くとも、周囲はそうレッテルを貼る。こんな閉塞的な村なら尚更。
職場でのイジメ。周囲からの差別。日々受ける不条理、理不尽。
死んでるようにただ生き、孤独に堪え忍び…。
行き場の無い叫びは枕に顔を押し付けて喚くしか…。
何故優はそれでもこの村を出ていかないのか。
行く当てが無い。例え村を出たってどうせ…。
このままこの村で朽ち果てていくしか…。
そんな優の人生が一変する出来事が。
幼馴染みの美咲が村に帰ってきた。
村役場で働く。ゴミ処理場を活かし、村のイメージアップPRに努める。
そのガイドに優を抜擢。
根暗な性格の優の抜擢を透らは嘲笑する。優も当初は断る。
が、美咲の後押しを受けて引き受ける。
すると、大好評。再びツアーガイドの申し込みがあり、TV取材や観光客も増え…。
村にツキが向いてきた。
優の人生も上向きに。名物ガイドとして人気者になり、ゴミ処理場での過酷な労働や深夜の違法投棄にも携わなくなり。
垢抜け、生気の無かった表情に輝きが。
村の若者たちの羨望の的ともなり、美咲の弟・恵一は優を“ヒーロー”と。
何より、美咲と恋人関係に。あの時彼女が信頼してくれ、支えてくれたから。
どん底だった人生が一転、順風満帆。
…これで終わって欲しかった。
成功すれば、それを妬む者も。
透。
以前にも増して優を目の敵に。
以前から美咲に好いていて、ある時強引に…。
助けに入る優。
透の挑発に堪えていたが、それも限界。
遂に取っ組み合いになるが、透の方が体格も力も圧倒的。
ボコボコに殴られまくる。
その時…
透が行方不明に。
それを尻目に活性化の村興しが続く。
今や全国有数の注目スポットに。
村に伝わる能の演目の如く、その栄華はほんの一時。
ゴミ処理場から違法投棄物が見つかる。
村長からその揉み消しを命じられる。
さらに処理場の地中から、腐敗した透の遺体が…。
殺し。村を出、刑事になった村長の弟が遺留品から容疑者として目を付けたのは…。
優は事の収束に奔走。かつては犯罪者の子供として理不尽なレッテルを貼られていただけだったが、今度は本当に過ちを犯してしまう…。
『新聞記者』『ヤクザと家族』の藤井道人監督×スターサンズ製作。
名プロデューサーだった故・河村光庸の最後のプロデュース作。
社会に切り込んだ意欲作を発表し続け、本作もまた。
人間社会の業、地方の闇、逃れられない己の運命…。
悪循環とでも言うべき負のスパイラル。
それらを炙り出す。
この監督、このプロデューサー、このスタジオならでのダーク・サスペンス。
個人的には昨年の『流浪の月』で大開花。本作でもまた横浜流星が見事な熱演。
前半の虚ろな目、生気の無い佇まい。
後半の垢抜けて、爽やかな好青年。
その演じ分けと、追い詰められ一線を越えてしまう焦燥感と緊迫感…。
ラストカットの表情が忘れ難い。
演技力や存在感はもはや頼もしいくらい。
今若手実力派で気になるのは、松坂桃李と彼だ。
一ノ瀬ワタルが『宮本から君へ』に続き、凄みとムカつきで見る者を圧迫。
古田新太もさすがの威圧感たっぷり。杉本哲太、西田尚美、木野花ら住人皆、クセ者。
中村獅童が魅せる理性と複雑と苦渋の眼差し…。歌舞伎役者の本領を発揮する能の美しさ。
ベテランや実力派の中、奥平大兼と作間龍斗の若手が印象的。
そんな中、黒木華に救われる。
透を殺したのは…。
優はある人物を追い詰め傷付けてしまう。不条理と理不尽を押し付けられていた優が、今度は自分がそれを押し付け…。
村が最優先。また不祥事を揉み消そうとする村長。その時言い放った冷徹な言葉。
罪深いのは誰か…?
愚かなのは誰か…?
悪しきなのは誰か…?
己の弱さか、それともこの“村”がそうさせているのか…?
閉塞的な村で起こる惨事。
まるで横溝ミステリーのような渦巻くドス黒い人間関係、古めかしい因習…。
舞台は現代。今、こんな事が起こり得るのか…?
実際に村八分の事件も起きている。
村とか都会とか関係ない。
罪、闇、悲しみ、苦しみを作り出してしまうのは、人だ。
本作の象徴とでも言うべき能。
人は能面を被っている。
能面の下に全てを隠して…。
一見、美しい能を舞う。
能面と向き合うと己が見えてくる。
隠した本当の顔が露になっていく…。
それはまるで、人個人個人やこの村、本作そのものを表しているかのよう。
村意識、閉塞感は…
あるけど、ステレオタイプというか、見終わったと、何も残らなかった。補助金を貰いながら不法投棄を隠蔽している村がいきなり観光地となって(何で急に観光地になれるのかが全くリアリティなし)、やがてはそれが明るみになり、死体まで出てきてしまう話。衝撃的ラストがあるわけでもなく、拍子抜けした。
横浜流星の代表作
ゴミ焼却炉を巡って過去に起きた事件と、現在その焼却炉によって村の暮らしが成り立っている。その事件の犯人とされる人物の息子、優が必死に生きる姿と彼を支えようとする人物、引き摺り下ろそうとする人物、村の活性化を考える長老らが引き起こす新たな事件。なかなか面白い構成。
昔から優と仲の良かった美咲は久しぶりに村に戻って(美咲が東京で何があったのかがもう少しわかると良かった)優に優しく接する。同級生で焼却炉の責任者の同級生の息子透は優に敵意むき出し、嫌な仕事をさせ、何かと引き摺り下ろそうとする。観ていてとても不愉快で嫌な奴。焼却炉で働く人たちをきっと小馬鹿にしているんだろう態度や、喧嘩をさせたり、不法投棄の闇仕事をさせたりと、とにかく悪い奴。その親父は優の努力を認めてくれているようにも見えるが、どうも腹黒であり。
美咲と優と透の間で起こる事件、予想通りの結末だけど、確かにあんな奴はゴミとして捨てられてもしょうがない。でも、そりゃあ見つかるよね。
最後、美咲はどうしたのか?弟が街を出ていくところがラストって、とても上手い演出。
櫛木理宇の「鵜頭川村事件」。wowowでドラマになったが、村、ゴミ焼却炉をめぐってのいざこざ、不法投棄、村の伝統など少し似ていると思った。松田龍平主演。
今作、横浜流星がとても良かった。ゴミで汚れ汗に塗れて働く佇まいから、ネクタイ締めてこざっぱりした佇まい、どちらも素敵。悲しげな表情も、憎しみの表情もとても上手い。今後とても楽しみですね。
難しいところ
閉鎖された村を舞台に自由とは、何か?問いかけている作品なのかなと感じた。
この作品が作れる前には、爆発的なコロナウィルスの感染の影響で架空の村では、あるのだけど、今の世界に生きる人達がそれぞれ孤独で閉鎖された社会に生きているんじゃないの?と言われてるような気がした。
狭い社会だからこそ自分達とは、違うという事だけで自分の都合のいい言葉や人達を集めて、自分達が正しいと誇示しているなと感じた。
リアルな世界というよりももっと内面の部分を投影しているような気もする。
スマホの普及によって、誰かとコミュニケーションを取るのも目と目を合わせて、対話するのではなく、スマホでのやり取りばかり。
主人公の父親は、村社会の為に反対の行動に出ていたのにも関わらず村八分にされてしまった。
それによって、事件を起こして、犯罪者になる。
その事がきっかけで主人公も地元では、村八分にされている。
これは、ちゃんと向き合うべき事を誤魔化して、生きていけば都合よく生きていけるのに余計な事をしやがってみたいな感じを思われているのだろうと感じた。
なので、最後の主人公の行動もどんどんそれが正しいと言わんばかりに、今までの自分とは、全く違った行動に出るようになってしまったんだろうなと思った。
この作品は、村社会を忠実に描いた作品というよりも比喩的な見方をすると色んな見え方のする作品だと思って面白いなと思いました。
横浜流星さんの演技で成り立ってます…かね
脚本への評価は残念ながら。
横浜流星さんの演技は、素晴らしかったです。ストーリーに疑問を持ちつつも目が離せなく、最後まで見てしまいました。
残念な部分ですが、私には能と面の重要さがよく理解できませんでした。
最後のシーンで面をつけて…?と期待していたけどそうでもなくて、アイテムの重要性も低かったですね。
この様な環境で起こりえる人間の本性というか醜さのような部分が、表現としてはちょっと浅いなぁと思いました。人間味を感じるまでキャラクターを深掘りできてないというか。
観に行っといてなんですが・・・
逃れられない運命
4月21日公開の「ヴィレッジ」が6月16日からNetflixで世界配信になりました。
(興行収入が2億円ほどで振るわなかったそうです)
観ました。
娯楽性は殆どありません。
「能」の舞台や舞(まい)、
薪能(たきぎのう・・・夜に薪をたいて野外で能を行う)
能面の行列、
伝統芸能の美しさ、
謡曲の調べも聴き惚れました。
(外国人視聴者には、新鮮に映りそう)
内容は暗いです。
片山優(横浜流星)の父親は、かもん村のゴミ処理場の建設反対派で、
賛成派の住民を殺して、自らは家ごと火をつけて自殺した。
優は犯罪者の子と罵られ、母親は酒とギャンブルに溺れて
多額の借金がある。
能の演目に「邯鄲(かんたん)」があるそうです。
意味は、
「栄華を極めたと思っても、ほんのひとときの夢」
優にも栄華の時が、訪れるのです。
幼馴染の美咲(黒木華)との、肩の荷を下ろす憩いの時。
もちろん長続きせずに、悲劇が・・・
横浜流星の演技のギャップが、驚くほどでした。
血走った眼と鬱屈を抱えた前屈みの無口な男。
美咲の愛で見違えるように闊達に話す好青年に。
大した役者です。
目の演技に惹きつけられる。
山の上に聳えるゴミ処理場。
かもん村の厄災の根源にもなるその施設。
利権と悪の温床。
村の利益のためなら交付金詐欺的裏仕事も厭わない村長。
黒木華が透(一ノ瀬ワタル)に襲われるシーン。
透はオートロックもない家にずかずか上がり込む・・
田舎ならではの怖さ。
一ノ瀬のニヤケ笑いが心底怖い。
「サンクチュアリ聖域」でブレークを果たした一ノ瀬は、
ある意味で流星より悪目立ちをした。
ここでも血生臭い殺人事件。
100キロもある大男をどうやって移動する?
そして更なる惨劇。
まるで、金閣寺炎上のように燃え盛る金色。
逃れられない運命の果てには破滅しかなかった。
ムラ意識、因襲、閉塞感、
かもん村が日本の縮図だとしたら・・・
暗澹とした気持ちで見終えました。
重い。ひたすら重い…
2023
52本目
この手の映画は昼間には見られない輩です…
23:30から鑑賞。
この時間からはどっぷり浸かれるんです。
で、どっぷり浸かりました。
疲れた…
誰も幸せになれないのか…負の連鎖は誰が生み出すのか…この2時間の中に嫉妬、強欲、脆さ、儚さが詰まっています。
村長息子(一ノ瀬さん)が表面的に1番悪い。
ただ、優(流星さん)に詰め寄るシーンで目から儚さと脆さが見えた。悪と脆さを演じられる一ノ瀬さんに脱帽。
村長(古田さん)も同様で私利私欲に見えながらも村を1番に考えている?…または母の承認欲求なのか。
主人公である優に対しても悪人とゆう一つの感情ではない何かを感じる事ができる。
とにかく主人公である2人の怪演も去ることながら、脇を固めた俳優陣の安定した演技が重厚感を与え、ストーリーに重さと儚さを積み上げいく。
エンドロール後の龍太(奥平さん)の表情にも注目。
拍子抜け
怖いというかおぞましいけど、とても心打たれた
黒い穴に吸い込まれませんか?
登場人物が多かったので、人物の背景もそこそこに脚本も色々と揃えていたのであっという間の2時間でした。人物像はもう少し見たかったな。冒頭の父親の絶望感などもう少しあっても良かったような
能面を見る楽しさは見るものによって表情が変わるので、自分がどういう顔しているかわかるアイテム。
能面のアップが出てくると、すぐそばで自分がその光景を見ているかのような感覚に襲われます。
また演出なのか、役者さんそれぞれが感情を押し殺した表情をされていて、「怖い、何を考えてるの?」と感情を揺さぶられました。特に母親。悲壮、憤怒、諦め、安堵など。
最後の対峙も、その後の結末も観者に委ねられたかな?
当然、無表情ではありましたが、優は笑みを含んでいた気がします。終焉、達成、謝罪など。
美しい景色とともに光を感じながら外部へと続く道は希望。
そして「どんな形」であれ、彼はまたこの村に戻って変化をもたらすであろう…
追記
横浜流星の悲愴感漂う歪んだ顔は見ものです。
一ノ瀬ワタルがいい感じです
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