神々の山嶺(いただき)

劇場公開日:

神々の山嶺(いただき)

解説

夢枕獏の小説を谷口ジローが漫画化した山岳コミックの傑作「神々の山嶺」を、フランスでアニメーション映画化。エベレスト初登頂をめぐる未解決の謎に迫るクライマーたちの姿を描き、第47回セザール賞でアニメーション映画賞を受賞するなど高い評価を獲得した。記録上に残るエベレストの初登頂は1953年だが、伝説的なイギリス人登山家のジョージ・マロリーが1924年6月にエベレストの山頂付近で消息を絶っていたことから、「マロリーが初登頂を成し遂げていたのかもしれない」という説もささやかれていた。ある時、取材でネパールのカトマンズを訪れた雑誌カメラマンの深町誠は、長らく消息不明になっていた孤高の登山家・羽生丈二が、マロリーの遺品と思われるカメラを手に去っていく姿を目撃する。羽生を見つけ出し、マロリーの謎を突き止めようと考えた深町は、羽生の人生の軌跡を追い始めるが、尋常ならざる執念で危険な山に挑み続ける羽生という男の人間性に次第に魅了されていく。やがて2人の運命は交わり、冬季エベレスト南西壁無酸素単独登頂に挑む羽生に、深町も同行することになるが……。日本版は堀内賢雄、大塚明夫、逢坂良太、今井麻美ら実力派声優が吹き替えを担当。

2021年製作/94分/G/フランス・ルクセンブルク合作
原題:Le sommet des dieux
配給:ロングライド、東京テアトル
劇場公開日:2022年7月8日

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(C)Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinema / Aura Cinema

映画レビュー

3.5原作ファンの我儘とは知りつつも

2022年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 夢枕獏の原作小説と谷口ジローの漫画版を愛してやまない。好き過ぎて実写映画は観に行けなかった。実写よりはアニメの方が、絵面が写実そのものでないぶん割り切って観やすく感じるのではなどと期待して鑑賞。

 94分はちょっと短いな、と事前に思ったのだが、実際観るとうーんやっぱりちょっと短すぎるかな。エピソードのいくつかは削られて当然、それが映画化ということなのだと覚悟はしていたが。
 エピソードが体感3分の2くらい削られてる感触があって、物語の手応えがちょっとスカスカした感じになってしまった。2時間超えるくらいの長さになってもいいから、もうちょっとエピソードを増やして厚みがほしかった。原作を知らない人には、どんな風に見えたのだろう。

 深町などのキャラクターの目がみんな小さくて、フランス人には日本人がこのように見えているんだな、という感じだった(見慣れれば気にならない)。吹替でキャラクターは日本語をしゃべる。オリジナルはフランス語なのだろうが、登場人物はほぼ日本人なので、吹替の方が言語面ではよりリアルなのだと思うと不思議な気がしたりした。
 山岳風景の映像は圧巻で、美しさとリアリティが同居していて、高さを感じる迫力があった。羽生たちが山にアタックする時の動きは漫画版を踏襲している部分が多く、漫画だと当然静止画であるシーンを動きとして見るとより分かりやすくなっている点もよかった。羽生役の大塚明夫さんの声がよく合っていた。

 原作ではこの内容に、ざっくり言うと深町個人の背景や人生観に関わる部分、文太郎の姉涼子が絡む恋愛パート、映画のラストの後に深町がひとりで登山するパートなどが加わる。小説漫画ともに、心理描写がかなり克明だ。羽生が遭難して文太郎の幻を見る場面は、原作では羽生の手記という形で描写され、小説でも漫画でも鬼気迫る場面になっているが、その手記も省略されている。
 映画だけ見ていると、深町がどういう思いで羽生の取材にこだわり、過酷な登山についていったのかが伝わりにくくなっている気がした。キーアイテムのマロリーのフィルムの顛末も違って(これは小説と漫画とでも違う)、原作ではもっとドラマがある。
 谷口ジローが大人気のフランスでアニメ化までしてくれたことは素直に嬉しいし、94分の中に盛り込むならエピソードの選別はおおむね妥当だとも思う。それでもやはり「神々の山嶺」はこういう話か、と自問すると、これでは薄いと思ってしまう。原作の呪縛から逃れられません。ごめんなさい。
 映画で初めてこの作品に触れた方はこの機会に、是非原作小説か漫画(このふたつのクオリティは同等で違う良さがある)も読んでほしい。アルピニストの心に、より深く入り込めるから。

 余談だが、映画.comの特集記事で本作にコメントを寄せている坂本眞一の漫画「孤高の人」、その原作である新田次郎の同名小説も登山家ドラマの白眉なのでお勧め。

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ニコ

5.0憧れは止められない

2022年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作は、実在の登山家ジョージ・マロリーはエベレストに登頂したのかという謎をモチーフに独自の物語を展開する。しかし、その謎を解き明かすということよりも、マロリーの有名なセリフ「なぜ、山にのぼるのか。そこに、山があるからだ」の精神性に深く切り込むことに重きをおいた作品であると思う。
なぜ危険な登山に挑むのかという問いに対して、合理的で明快な答えはない。そこに山があるかぎり挑まざるを得ない、そういう心持ちがあるのだということだが、その正体はなにかを劇的なドラマで描いている作品だ。
映画は理屈ではない情動を描くことに向いていると思うのだけど、本作ほどそれを証明している作品はなかなかお目にかかれない。危険な山になぜ魅せられるのか、見たことのないいただきの風景にどうして人は突き動かされてしまうのか。この映画を観ればそれが明快にわかる。人は道への憧れを止めることはできないのだ。
本作のように、日本にアニメ市場では拾われにくい原作を海外で映像化してくれる事例がもっと増えるといいなと思っている。普段日本でアニメ化されやすいもの以外にも本当に多彩な作品があるので。

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杉本穂高

4.0フランス製作チームの7年越しの情熱を称えたい

2022年7月11日
PCから投稿

胸に迫る、骨太な作品だった。当初、私の頭には本作に関して「アニメーション手法によって登山シーンを芸術性豊かに表現した映画なのだろう」くらいの想定しかなかったのだが、いやはや、登山シーンの壮大かつ息詰まる表現も素晴らしければ、東京で展開するヒューマンドラマ部分も見応えがある。これは山を介して交錯する”二人の男”の物語。それも一人の写真家の視点に立って、消息不明の登山家の身に起こった出来事を丹念に辿っていくミステリーだ。序盤ではマロリーが遺したカメラがマクガフィン的に用いられるものの、次第に語り手の焦点が「孤高のクライマー、羽生」そのものへ移行していく流れも研ぎ澄まされている。彼らはなぜ登るのか? 山に身と心を捧げた者にしか理解しえない境地とは何なのか? こういった心境を表現する上で、アニメーションという手法がこれほど有効だったとは。7年の歳月をかけて完成させたフランスの製作チームを称えたい。

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牛津厚信

3.0美しい

2024年4月6日
スマートフォンから投稿
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まゆう