帰れない山

劇場公開日:

帰れない山

解説

イタリアの作家パオロ・コニェッティの世界的ベストセラー小説を映画化し、2022年・第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した大人の青春映画。

北イタリア、モンテ・ローザ山麓の小さな村。山を愛する両親と休暇を過ごしに来た都会育ちの繊細な少年ピエトロは、同じ年の牛飼いの少年ブルーノと出会い、一緒に大自然の中を駆け巡る中で親交を深めていく。しかし思春期に突入したピエトロは父に反抗し、家族や山と距離を置いてしまう。時は流れ、父の悲報を受けて村を訪れたピエトロは、ブルーノと再会を果たす。

「マーティン・エデン」のルカ・マリネッリが主人公ピエトロ、「ザ・プレイス 運命の交差点」のアレッサンドロ・ボルギが親友ブルーノを演じた。メガホンをとったのは「ビューティフル・ボーイ」で知られるベルギーの俊英フェリックス・バン・ヒュルーニンゲンと、「オーバー・ザ・ブルースカイ」などで脚本も務める俳優のシャルロッテ・ファンデルメールシュ。実生活で夫婦でもある2人が共同で監督・脚本を務めた。

2022年製作/147分/G/イタリア・ベルギー・フランス合作
原題または英題:Le otto montagne
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2023年5月5日

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(C)2022 WILDSIDE S.R.L. - RUFUS BV - MENUETTO BV - PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS - VISION DISTRIBUTION S.P.A.

映画レビュー

4.5同じ場所に止まるか、動くか。人生の二種択一

2023年5月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

都会育ちの少年、ピエトロが、山を愛する両親と共に過ごした北イタリアのモンテ・ローザ山麓で出会った牛飼いの少年、ブルーノとの交流を振り返る形で物語は進む。2人は同い年で性格もまるで違うが、各々が歩んだ人生には誰もが思い当たる根本的な生き方の違いが反映されていて、思わず胸を突かれる。 ピエトロが山麓を離れてから世界中の山々を制覇し、作家としての地位も固めていくのに対して、ブルーノは故郷の山に止まって貧しいながら牧畜業に専念する決意を固めるのだ。 人生には大まかに言うと2つの選択肢がある。止まるか、動くか、そのどちらかだ。 北イタリアをメインに、大自然の美しさと残酷さ、そして、時の流れに翻弄され、それでも旧友を思いやる男たちの変わらぬ友情を描いた本作は、果たして、自分の人生はどうだったかと言う問いを我々に投げかけてくる。でも、後悔したところで時間は戻らない。鑑賞後に残る複雑な余韻は格別なものだ。

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清藤秀人

5.0雄大な自然映像と普遍的な人間ドラマが胸を揺さぶる

2023年4月30日
PCから投稿

ベストセラー小説の映画化だが、大自然をめぐる雄大な映像に触れた時、これは「映画化されるべくしてされた物語」だと確信した。北イタリアのモンテローザ山麓で交錯するのは、二人の幼なじみの人生だ。都会育ちのピエトロはいつしか自分の居場所を探して世界中を旅して回り、自然の中で生きてきたブルーノは「ここでしか生きられない」と村から一切動くことはない。そこに亡くなった父をめぐる記憶がノスタルジックに重なり、さながらこの映画は過去と現在が溶け合わさるかのように、有機的な感慨となってゆっくり流れていく。荒々しくも神秘的な輝きに満ちた山々。土の匂い、木々の香り。対照的ながら共感せずにいられない二人の生き様・・・。監督は本作について「コロナ後における地球との再接続の意味を込めた」と語っているが、なるほど、映像と人間ドラマによって意識がみるみる覚醒するかのようで、その言葉の意味するところが身に染みてよく分かった。

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牛津厚信

3.0亡き後も続く「刎頸の交わり」

2024年11月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば> その時、屋根に穴を開けられた山の家を思い出した。 あの家はすでに役割を終え、長くはもたないだろう。 人生には、ときに帰れない山がある。 他の峰々の中央にそびえ立つ山に帰ることはできないのだ。 いちばん高い最初の山で友を亡くした者は、八つの山を永遠にさ迷い続ける。 堅実に生活を組み立て、ラーラという伴侶を得て、子供にも恵まれて「山の民」として生きることが、ひとつの生き方であることは、疑いがありません。 しかし、その一方で、せっかく進学した大学で学識を修めることにも疑問を感じ、これといったあてどもなく旅を続け、あたかも浮き雲のような地に足のつかない生活(作中では「いつまでも学生気分の抜けない生活」)を送るピエトロが、無軌道、放縦な生活に明け暮れているとも、断言できないようにも思います。 ピエトロのそういう「人生の彷徨(さまよい)」が、彼の人格を形づくり、小説家としての人となりを練磨していることも、否定しきれないとも思います。評論子は。 「心に降り積もった雪は、融けて人生になる。」とは、本作の予告編でのキャッチフレーズも、たぶん、その謂(い)いなのだとは思います。 とどのつまり、「人の人生のあり様は、人それぞれ」とでも言ったところでしょうか。 いみじくも「少しずつ冷める愛もあれば、急に冷める愛もある」という作中のラーラのセリフのように、時には唯一無二の親友のように友情が燃え上がることもあれば、まるで他人同士のように関係性が気息奄奄とすることもあるー。 そんな関係のピエトロとブルーノとの親友としての関係が、本作には通底しているとも言えそうです。 (ピエトロが、密かに想いを寄せていたラーラを、何の蟠(わだかま)りもなく、ブルーノに譲ることもできていたのは、やはり根底では、ピエトロとブルーノとの友情関係は、すっかり枯渇してしまっていた訳ではない、根底には、むしろ静かに、厚く存続し続けてはいたのだろうとも思います。) 実際のところ、なかなか評釈の難しい作品ではありましたけれども。評論子には、本作は。 しかし、上記のような評論子の評がもし当たっているとすれば、二人の間の、時代を経ても続いていた友情の温かさを、じんわりと味わうことのできる佳作だったと思います。 これこそが、本当の親友…刎頸の交わりというものなのでしょうか。 山を降りて、都会で教員(?)となったピエトロでしたが、地理的に離れてしまっても、亡き後でも、心の中ではブルーノとの友情は生き続けていたことは、疑いがありません。 本作のタイトルは『帰れない山』であって『帰らない山』ではないということも、そのへんに意図があるのかも知れないとも思います。 そのことに思いが至った一本として、十二分に佳作としての評価に価する一本でもあったと思います。 評論子は。 (追記) ピエトロのお父さん・ジョヴァンニは、いつかピエトロが登山技術で自分を超える日を、実は楽しみにしていたのですね。 どうかすると、当のピエトロは、ジョヴァンニは子供(自分)に無関心だと考えていたようなフシもありましたけれども。 ブルーノが楽々とこなす登山を、同じょうな年齢の自分が(高山病になってしまって)こなせなかったという「負い目」を、長じてもピエトロは、ずっと引きずっていたのかも知れません。 ジョヴァンニがブルーノに山小屋の再建(?)を託したのも、そんな動機があってのことのようでした。 (追記) 寡聞にして、本作で初めて「鳥葬」ということを知りました。評論子は。 大雪に遭って、山小屋に帰り着くことができなかったブルーノの亡骸(なきがら)は、おそらく、鳥によって懇(ねんご)ろに葬られたということなのでしょう。 「山の民」を自称し、山を愛したブルーノとしては。 いかにも「山の民」らしい最期と言えそうです。 (追記) 本作も山が舞台に生っているという点では、「山岳映画」と呼んで差し支えないものと思いますけれども。 それだけに、山の遠景が、作中には多く映されています。 映画館の大スクリーンで鑑賞していれば、さぞかし圧巻だったことと思われます。 (大自然を目の当たりにして、ヒーリング効果も十分に味わえたことでしょう。) その点は、かえすがえすも残念に思います。

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talkie

4.0山という絶対的な存在で繋がる友人、親子を描いた、戻せない時間、戻れ...

2024年11月23日
iPhoneアプリから投稿

山という絶対的な存在で繋がる友人、親子を描いた、戻せない時間、戻れない場所についての物語。美しい山々の光景が残酷な無常の世界を浮き上がらせる。ある種の諦念感を抱えてそれぞれ選んだ人生を生きる2人を描きながら、それでも観終わったあと肯定的なものが残る秀作。

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ピンボール