クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのレビュー・感想・評価
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内なる美
ホラーのサブジャンルに"ボディホラー"というカテゴリがあるそうで、正に監督はその第一人者であることは明白である 『裸のランチ』でもそうだったが、内蔵系のグロテスクさを演出させながら、その画力と強引に結びつけるストーリーテリングにまんまと心を奪われてしまう 気持ち悪さの連続はもはや快感に取って代るという、今作の多々あるテーマの一つを体感してしまっているのである
一種のSFなので、荒唐無稽な前提ではあるが、"苦痛"(作品内のそれは痛さの度合いが低くなってしまっている、もしくは他の感覚に変化している)から人々が解放された世界に於いての、二つの物語がやがて絡まる展開として作劇されている 一つは人体内に出現する新たな臓器と、それを切除するパフォーマンスをするアーティスト 又一方は、後半判明するのだが、新しい臓器で有害物質に対応する消化器系を移植し、環境問題を目指す団体の話である
まぁ、かなりストーリー自体が飲み込みにくいし、初めに説明する件もなく、やたらと官能的且つ、玩具のような生活具もしくは医療具(ベッド、椅子、手術台)を使用している様が、滑稽で痛々しく、なんだか面はゆい、居たたまれない羞恥感漂うカットであり、さすがクローネンバーグ、始めからトップギアである 女優を次々裸体に晒す脚色、子供を使ってのまるで"蔘鶏湯"のレシピのようなオチ、道徳感を逸脱した女性二人の電気ドリルによる頭骨穿孔の暗殺方法、一部の好事家が興じる刺青やインプラント等の人体改造等々、これだけの世界観を"松花堂弁当"の如く綺麗に盛付け、尚且つ未来への警鐘のような魔術に落とし込んだ今作品の胡散臭さと、尤もらしいエクスキューズに、総合芸術の悪魔の側面を垣間見てしまった希有な作品である 老監督の集大成と言ってもよいグロテスク且つ猟奇、そして皮肉な環境提言と言った、ハイコンテクスト作品であろう
惨敗感…
公開規模が小さく、そもそもこの作品が丸の内ピカデリーでかかるのが意外でしたが、公開週土曜の午前11時からの回はある程度の客入り。個性的な名作を作り続けているベテラン監督の新作と言うことで、客層はおそらく「往年の映画ファン」であろうオジサンが多いです。
かく言う私も紛れもないオジサンなのですが、往年がつくほど過去の映画は観てきておらず、今作上映前に自分がどれだけ「クローネンバーグ作品」を観ていたか確認してみるとたったの3作品。そんな具合ですから勿論「クローネンバーグ作品」という意識もないわけで、こんな調子で新作に挑めるのか心配になり、慌てて未鑑賞作品ばかり9作品を配信で鑑賞。そして感じたことは「私にクローネンバーグの新作のレビューを書く自信がない」と、結局本作を観る前からネガティブ感情。何せ、兎に角難解。ただ、少しでも解った気になれると面白味を感じるから癖にもなる。でもそれは、他人の考察から得たのものではなく、自分で見つけるからこそ「噛めば噛むほど」の味わい深さとも思います。
前置きが長くなっていますが、正直、今作はまた輪をかけて難しいと感じました。独特で奇妙な世界観を受け入れようと必死に観ていても、新しい登場人物が出てくる都度、その立場や目的までを追いかけるのにまた必死になり、さらには、少しずつ明らかにされるそれぞれの関係性に、「と言うことは、さっきのって??」とついて行き損なうと、気が遠くなってお手上げ。。もう淡々と観続けるしかありません。
正直、ここまでの惨敗感は久しぶりですが、とは言え、けしてつまらなくはない。が、向き不向きはあってそうそうお薦めできるような作品ではありません。もし興味があるのなら、いきなり本作ではなく、やはり過去作からご覧になった方がいいと思います。
はてさて、私もこの映画を理解できる日が来るのだろうか。また少し先の未来に、クローネンバーグ作品を通して観直してどう感じるかという楽しみ方が出来る、それだけ世界観や作品性というのがきちんとある巨匠ですね。今は観念、まだまだ勉強が必要と感じました。
クローネンバーグの世界を堪能
好き人にはたまらないが、そうでもない人からすると「さっきからずっと何やってんの」って映画w。
なんだかチョコプラのコントを思い出してしまった。
本作はストーリーや演出を語るようなものではなく、クローネンバーグ個人の趣味を余す事なくぶち込んだアブノーマルな世界を一緒になってニヤニヤしながら楽しむお祭りのような作品である。
クローネンバーグは「戦慄の絆」以来のファンだが、不気味な造形の手術器具や人体への尋常じゃないまでの興味がここに来てとうとう爆発した、もしかしたらこれが最後?と思わせるようなある意味集大成のよう。
冒頭の変なベッドで心を鷲掴まれたが、白い骨のような椅子はたまらなくツボだった。
あれに座ってスプーンを口元へ持っていけないのは操作が難しいからなのかと思ったが、よく見たら自分の手でスプーンを持ってたので何でが止まらなかった。
誰にも文句を言われずに好きな映画を撮れる数少ない監督の異常な世界をご堪能あれ。
肝に銘じる
変態的な趣味嗜好を覗き見る愉しさは味わえる
人類の進化の過程として、痛みを感じなくなったり、新たな臓器が作り出されたり、プラスチックを消化できるようになったりするという設定は面白いし、珍妙でグロテスクな装置の数々や、古ぼけていて薄汚い近未来の世界観も楽しめる。
その一方で、臓器を摘出する手術を「芸術」と位置付け、「娯楽」として鑑賞し、そこから性的な「快楽」を享受するという感性と感覚には、ついて行くことができなかった。
起伏の乏しい単調な物語に付き合いながら、それでも、人類の進化を規制しようとする側を、進化を促進しようとする側が打倒する「革命」のようなカタルシスが用意されているのではないかと期待したが、尻切れトンボで不完全燃焼なエンディングには、物足りなさを感じざるを得ない。
残念ながら、デビッド・クローネンバーグの変態的な性的嗜好には、共感することも、納得することもできないが、それを覗き見る愉しさだけは、存分に味合うことができた。
これは、そういう映画なのだろう。
それにしても、クローネンバーグといい、宮崎駿といい、「わがまま老人」ぶりを発揮して、やりたい放題で映画を作れてしまうところを見るにつけ、「つくづく幸せな監督だなぁ」と思えるのである。
人体という宇宙。その深淵に触れる作品。
クローネンバーグは我々に問いかける。
人体は宇宙だ。であればその内なる宇宙である胎内を巡る事が出来るのが手術の時だけ、というのはおかしいのではないだろうか?
内なる宇宙を求める旅はもっと自由であっていい。
医療行為だけでなくアートだって良い。セックスだって良い。
だがそれらを現実には阻害する因子がある。
それが感染症や痛み、或いは倫理官…というリスクだ。
本作は未来、それらのリスクは皆無だ。
感染症や痛みから解放されて、人体との向き合い方に奔放になった未来で。
我々は何を得て、何を失い、何を創造しうるのか。
この映画はそんな作品だ。
一見するとバイオレンスに見えるだろうが、実際に見ると非常にセクシャルで官能的な映画だ。
そこには"生きる"という実感への渇望が満ち溢れていた。
悪夢と偏執的な愛
前衛的と言えばそうだ。しかし前衛的は一般には理解されないから前衛なのだ。
確かにこの監督 鬼才 かつ 前衛的
臓器🫀だけで血が流れないので、グロテスクにもイマイチ到達しない。
一番の問題点は ホネホネ骨
頭の後ろとか手の下に生えてるのですが
観てて邪魔くさい。
わざわざ 動きがぎこちなくなる骨の進化は ムリムリ
レア・セドゥ ほか女性陣が 体を張っている❓のだが
残念ながら、ストーリーが奇妙キテレツすぎて
エロティシズムに浸る感覚わかず。
無理クリ最初の海沿いの未来施設ノ描写邪魔だし
耳のたくさんある人が踊るのは意味不明
コレ 骨🦴 は捨てて 内臓に絞って
内臓にタトゥー入れる手順をもう少しわかりやすく書けば・・・
プラスチックが何の意味❓
ビィゴ・モーテンセン グリーンブック の時より随分と老けたな、役作り❓
ツーか最後までストーリー理解できず。
もう少しストーリーは有機的に・・とは思うが
岡本太郎先生の 芸術は爆発だ❗️ と同じく前衛芸術は【何のこっちゃわからないけど】爆発だ❗️なのだ。
ただ、とにかく 骨☠️が邪魔なのはイラついた。余計な骨要らんがな❗️
有料パンフは紙に包まれ、この監督の過去作とか紹介あり
購入はした。でも疲れちゃったから見ないでイイや。
あ、マリグナントとは違うんだ❗️
ガジェットと設定は面白い
ザ・クローネンバーグ映画の復活!!
ん〜、先ずは「すごい・・・(苦笑)」の一言
カルト側に振りきっている超上級編なので、デヴィッド・クローネンバーグ監督作品が好きな人、もしくはどんな作品を見せられても文句言わない人以外にはオススメしません
本格的に趣味として映画を観るようになった中高生の頃とその付近、ちょうど「スキャナーズ」「ビデオドローム」「デッド・ゾーン」「ザ・フライ」「裸のランチ」といった私にとってのクローネンバーグ監督黄金時代と重なり次々に公開される傑作群を夢中で観に行ったのが懐かしいです
昨今ではすっかりオリジナリティが失われパッとしてませんでしたが、本作は20年以上温めていた監督のオリジナル脚本で正真正銘の”ザ・クローネンバーグ映画”、ヤバさMAXで振り切ってます
人類が痛みの感覚を無くした近未来
それによって体を傷付けることに興奮を覚える人々
体内で新しい臓器を生み出す男(ヴィゴ・モーテンセンさん)
その男の腹を切開しその臓器を取出す女(レア・セドゥさん)
プラスチックを食べる少年とそれを受入れている父親とその仲間
と羅列していくだけでもヤバさが伝わると思います
人類がヤバい方向へ進化する事を助長させる人々と、それを止めようとする人々・・・
ストーリーは正直 私には難解で正確に取れてないと思います(クローネンバーグ作品ではいつもそうなので気になりません)が、何となく監督の人類の進化に対する方向性と倫理観への警鐘と捉えました
プラスチックを食べる、と聞くと”うえ〜”と思いますが、現代の多くの人々がカップラーメンや冷凍食品を常食しており、少なからずマイクロプラスチックを食していますので、その延長線とも言えなくはないですよね
そういう現代に危機感を感じているのでしょうか
最後に、ヴィゴさんもレアさんも怪しさMAXで最高ですが、それを上回る妖しさを魅せるクリスティン・スチュワートさんが相変わらずすごく綺麗でした
君はニュータイプになりたいか?
豪華俳優を使ったフェティシズム全開映画
オリジナリティに富んだ映画が好きだ。
寝ている人の痛みや不調を和らげるベッド"オーキッド"、食事の補助をする椅子(本当に補助になってる?笑)"ブレックファスター"、そして伝説の器具と言われている人体解剖装置"サーク"
本作はこういったオリジナリティ溢れる器具の生々しい生物感や音響や、近未来と謳いながら街が退廃的で世紀末感漂う雰囲気などで構成されており観たことのない世界を見せてくれる。
レア・セドゥ、クリステン・スチュワート、ヴィゴ・モーテンセンという豪華キャスティングで、一見ブレックファスター等の器具はバカバカしく見えてしまいそうだが、ヴィゴ・モーテンセンが座ればそれだけで説得力抜群である。また、オーキッドに横たわるヴィゴとレアの裸体はまるで絵画のように美しく、渾身のシーンだったと思う。
これは未来のセックスだ!と美女の裸体を斬り刻み、また、ソールはジッパーという自分のお腹に新たな性器とでもいうべき内蔵への入り口(ジッパー)を作り、そこをカプリースに愛無され官能的な表情をみせてくる演出など、80歳になってもデヴィッド・クローネンバーグ変態過ぎる!!(笑)
ニュー・バイスという未来犯罪専門の課からやってきた刑事や、プラスチックを食べることができる"新人類"を崇める団体など、フィリップ・K・ディックのSF小説に出て来そうな良い設定のキャラクターが出て来ているだけに、それぞれの要素が消化不良でクライマックスも地味で少し物足りなかった。昔のクローネンバーグだったらソールはもっと歪な生き物になって(変体化して)大暴れしてくれそうだったが。。
しかし、もし人類が感染症から解放され痛覚を失ったら?というフィクションからここまでの世界を創り上げたのはさすがの想像力だと言いたいし、オープニング映像から小道具に至るまでデザインが行き届いていたところは良かった。
もう少し予算が付けばかなりの大作SFになりそうなポテンシャルがありそうだが、オレたちのデヴィッド・クローネンバーグ作は午後のロードショーで観れそうなこれくらいが良いのかもしれない。
歳をとっても尚自分の異常な性癖をアートに昇華してしまうような元気なクローネンバーグ作をリアルタイムで観れてよかった。
ここ数年ではジュリア・デクルーノ監督の「チタン」もかなり変態だったが、彼女はデヴィッド・クローネンバーグの影響化にあるということや、息子のブランドン君も順調にカルト映画監督に育っていきそうで、クローネンバーグの影響はもはや血を超えて拡がってい?(笑)、最近撮り終わったという次回作も楽しみである。
クローネンバーグ節
試写会にて。
久々に(かどうか分からないくらい追いかけ切れてなかったが…)クローネンバーグ節全開の、なに言ってんだか分かんない系のビデオドローム方面のやつでした。
が、残念!ノレず!…😢
映像は刺激的なのに、設定が飛び過ぎてて一歩も地に足が着いてないためにどんどんどうでもよくなっちゃった…
もう一歩現実に踏み残して欲しかった…
あとテーマがどうであれ、レア・セドゥの顔をいじっちゃ、ダメ!ゼッタイ!
せっかく美しいフルヌードを披露してくれたのに…
好き嫌いは別として
臓器刺青
未来はますます素敵に滅ぶ。
35年前に「ザ・フライ」で造形と描写のネオゴシックっぷりに打ちのめされた感覚が蘇りました。
あの遺伝子混合の、生体生理への不可逆的な改変という世界観が、進化した臓器が蔓延する世界、という「映画的進化」の結果なのだと直感しました。
それが、私の生理的好悪にどう反応を起こすかどうかは別ですが。
「ザ・フライ」では科学技術が発展した小綺麗な未来が舞台だったもののが、本作では閉塞感溢れる廃墟に蠢く、未来を失った人類へと、変化しています。クローネンバーグが描く「人類の終末」への35年を経た後の絶望感に、背筋が凍ります。
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