劇場公開日 2023年8月18日

「豪華俳優を使ったフェティシズム全開映画」クライムズ・オブ・ザ・フューチャー ヘルスポーンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0豪華俳優を使ったフェティシズム全開映画

2023年8月18日
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オリジナリティに富んだ映画が好きだ。

寝ている人の痛みや不調を和らげるベッド"オーキッド"、食事の補助をする椅子(本当に補助になってる?笑)"ブレックファスター"、そして伝説の器具と言われている人体解剖装置"サーク"

本作はこういったオリジナリティ溢れる器具の生々しい生物感や音響や、近未来と謳いながら街が退廃的で世紀末感漂う雰囲気などで構成されており観たことのない世界を見せてくれる。

レア・セドゥ、クリステン・スチュワート、ヴィゴ・モーテンセンという豪華キャスティングで、一見ブレックファスター等の器具はバカバカしく見えてしまいそうだが、ヴィゴ・モーテンセンが座ればそれだけで説得力抜群である。また、オーキッドに横たわるヴィゴとレアの裸体はまるで絵画のように美しく、渾身のシーンだったと思う。

これは未来のセックスだ!と美女の裸体を斬り刻み、また、ソールはジッパーという自分のお腹に新たな性器とでもいうべき内蔵への入り口(ジッパー)を作り、そこをカプリースに愛無され官能的な表情をみせてくる演出など、80歳になってもデヴィッド・クローネンバーグ変態過ぎる!!(笑)

ニュー・バイスという未来犯罪専門の課からやってきた刑事や、プラスチックを食べることができる"新人類"を崇める団体など、フィリップ・K・ディックのSF小説に出て来そうな良い設定のキャラクターが出て来ているだけに、それぞれの要素が消化不良でクライマックスも地味で少し物足りなかった。昔のクローネンバーグだったらソールはもっと歪な生き物になって(変体化して)大暴れしてくれそうだったが。。

しかし、もし人類が感染症から解放され痛覚を失ったら?というフィクションからここまでの世界を創り上げたのはさすがの想像力だと言いたいし、オープニング映像から小道具に至るまでデザインが行き届いていたところは良かった。

もう少し予算が付けばかなりの大作SFになりそうなポテンシャルがありそうだが、オレたちのデヴィッド・クローネンバーグ作は午後のロードショーで観れそうなこれくらいが良いのかもしれない。

歳をとっても尚自分の異常な性癖をアートに昇華してしまうような元気なクローネンバーグ作をリアルタイムで観れてよかった。

ここ数年ではジュリア・デクルーノ監督の「チタン」もかなり変態だったが、彼女はデヴィッド・クローネンバーグの影響化にあるということや、息子のブランドン君も順調にカルト映画監督に育っていきそうで、クローネンバーグの影響はもはや血を超えて拡がってい?(笑)、最近撮り終わったという次回作も楽しみである。

ヘルスポーン