劇場公開日 2023年8月18日

「変態的な趣味嗜好を覗き見る愉しさは味わえる」クライムズ・オブ・ザ・フューチャー tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0変態的な趣味嗜好を覗き見る愉しさは味わえる

2023年8月19日
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人類の進化の過程として、痛みを感じなくなったり、新たな臓器が作り出されたり、プラスチックを消化できるようになったりするという設定は面白いし、珍妙でグロテスクな装置の数々や、古ぼけていて薄汚い近未来の世界観も楽しめる。
その一方で、臓器を摘出する手術を「芸術」と位置付け、「娯楽」として鑑賞し、そこから性的な「快楽」を享受するという感性と感覚には、ついて行くことができなかった。
起伏の乏しい単調な物語に付き合いながら、それでも、人類の進化を規制しようとする側を、進化を促進しようとする側が打倒する「革命」のようなカタルシスが用意されているのではないかと期待したが、尻切れトンボで不完全燃焼なエンディングには、物足りなさを感じざるを得ない。
残念ながら、デビッド・クローネンバーグの変態的な性的嗜好には、共感することも、納得することもできないが、それを覗き見る愉しさだけは、存分に味合うことができた。
これは、そういう映画なのだろう。
それにしても、クローネンバーグといい、宮崎駿といい、「わがまま老人」ぶりを発揮して、やりたい放題で映画を作れてしまうところを見るにつけ、「つくづく幸せな監督だなぁ」と思えるのである。

tomato