小さき麦の花
劇場公開日:2023年2月10日
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解説・あらすじ
2022年・第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品。
2022年製作/133分/G/中国
原題または英題:隠入塵煙 Return to Dust
配給:マジックアワー、ムヴィオラ
劇場公開日:2023年2月10日
スタッフ・キャスト
受賞歴
第72回 ベルリン国際映画祭(2022年)
出品
コンペティション部門 出品作品 | リー・ルイジュン |
---|
劇場公開日:2023年2月10日
2022年・第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品。
2022年製作/133分/G/中国
原題または英題:隠入塵煙 Return to Dust
配給:マジックアワー、ムヴィオラ
劇場公開日:2023年2月10日
コンペティション部門 出品作品 | リー・ルイジュン |
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2022年10月20日A slow-baked tale of life in the Jintao to Xi Jingping transition stage of Chinese history, in Northern Central China. With Alibaba in the production, it's a bighouse film strewn as arthouse picture. It's intresting that this film was allegedly a threat to Chinese rule, and its heartbreak tale of poverty was whittled down. It's the latest lens into Chinese society. Good music by Iran's Yazdanian.
この映画を観ようと思ったのは、公私ともにお世話になっている経営者の方から「仕事をしていく上で色々と気付かされる映画だった」と、オススメされたのがキッカケです。
とても気づきのある映画だったので、あらすじや感想などまとめてみます。
<映画内容>
2011年、中国西北地方の農村が舞台の作品です。
貧しい農民のヨウティエと、内気で体に障がいがあるクイイン。
互いに家族から厄介払いされるかのように、見合い結婚し、夫婦になったところから物語は始まります。
ぎこちなく、それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていく、そんな2人の様子が描かれています。
<感想>
この映画の印象は、良い意味で「派手さがない」です。
映画全体を通して、農村地域の何気ない日常が描かれています。
だからこそ、そこで描かれている主人公夫婦の関係性の変化や、2人で掴んでいく幸せ、逆境が、実際にもありそうで、自然と自分自身と重ね合わせることができ、映画の世界に入り込んでいきました。
特に印象に残っているシーンは3つあります。
①少しずつ、主人公夫婦の家の者が増えていくシーン
元々、生活していく上で必要最低限のモノしか置いていなかったところから、徐々に壁の装飾や明かりが増えていく様子が描かれます。
モノが増えると、2人の幸せが増えていく様子を表しているようで、観ていてなんだかほっこり、暖かい気持ちになりました。
②2人で力を合わせて家を造るシーン
上記①と近しいのですが、ヨウティエが障がいをもつ妻のクイインと、2人の暮らしの象徴である家を一緒に造るシーンが印象的でした。
この瞬間から、クイインは「守られる対象」から、「一緒にモノをつくる仲間」になったように感じ、この夫婦がとても力強くなったと感じました。
③貧困層と富裕層との描写
ここは私にとって、とても印象に残り、そして違和感を感じたシーンです。
富裕層は外車を乗り回し、装飾品が多く身に付けている。
その一方で、貧困層はとにかく質素で、政治など外的環境による悪影響を真っ先に受けてしまうような描写が度々登場します。
個人的には、ここまで露骨に貧富の差を描いていることに違和感を感じました。
(他の映画でも描かれているけど、私が今まで目を逸らしていただけなのかもしれませんが。。)
そんな貧富の差が大きい環境の中で、ヨウティエが、富裕層である兄から差し出されるモノを受け取るシーンがほぼなかったことが、とても印象に残りました。
ヨウティエは、豪華なモノより、地に足がついた状態で自分で手に入れるモノを誇りに思っているのだと感じました。
ヨウティエが唯一兄から受け取ったのは、妻のためのコートでした。
地に足がついているかどうかではなく、素直に妻に喜んでほしくて、そのコートを手に入れたのだと思うと、ヨウティエの妻に対する愛の深さ、そして心の豊かさがより素敵に強調されたように感じました。
<最後に>
元々、ハリウッド映画や邦画が好きだったこともあり、私にとって中国映画はあまりなじみのないジャンルでした。
そのため、事前に公式サイトを調べてみたところ、
この映画は、公開後2ヶ月近くが経過してから異例の大ヒットとなったことを知りました。
特に20~30代の、とりわけ大都市に暮らす層がSNSなどで話題にしていた、聞いて興味がそそられたこともあり、オススメされてからすぐに配信サービスでチェックしました。
私も影響されたように、SNSやインターネットの普及で、気軽に色んな情報が得られる時代で、どうしても周りと自分を比べてしまうことが多くなったような気がします。
今は、映えること、バズること、周りにすごいと思われるような何か大きなことをしなければいけないのでは?と、考えてしまう時代なのかもしれません。
ですが、今ある環境の中で、自分のできる最大限を毎日コツコツと継続していくことが、小さな幸せを生んでいくのだなと感じました。
また、私があの中にいたら?と考えました。
私なら、今ある環境を我慢して受け入れるのではなく、「もっと」を望むのも、別に悪いことではなく、むしろ人間の本能だとも感じました。
どうせ努力するのなら、やっぱり望んだもの全部が叶う人生が良いなと思いました。
ただ、それには、それ相応のリスクを選ぶ覚悟が必要なんだなと、改めて気付くキッカケにもなりました。
時代は2011年、現習近平政権への交代前年。
家族のお荷物の男女が追い出されるように縁談を取り付けられ結婚。
農村部で極貧生活の中地道に生きていくお話です。
全体的に地味だけど、色んな意味で中国という国について考えさせられるとても良い作品でした。
中国内の貧困格差は凄まじく、貧困地帯の命はあまりにも軽い。
作中、主人公が富裕層への輸血のために何度も協力させられるシーンがありますが、中国での違法な臓器売買を連想させます。
また後半、あっけなく妻のクイインは川に落ちて死んでしまいます。
ラストの解釈は色々とあるようですが、個人的にはヨウティエは後追い自殺したのだろうと思っています。
身辺整理し全ての人へ借りを返して、妻が自分に食べさせたかった卵を食べ、遺影を見つめ、草のロバを手に横たわる。作中、ヨウティエが「草のロバはいい、餌もいらないし、こき使われることもない」と言っていましたが、自分ももう誰にも搾取されなくて済むと思いながら亡くなっていったのかなと思いました。
また、その奥に意味深なボトルが配置されているのが印象的。
(同時期、中国の農村部では服毒自殺の割合がとても高かったそうで、作中のボトルは毒を象徴しているのかなと。。)
ラストは唐突に兄が「ヨウティエも町に住むのか 新生活だな」という台詞があり、物語は終わります。またエンドロールの最後でも中国語で「ヨウティエさんは政府と熱心な村人たちの援助により新しい家へ引っ越し、新しい人生を始めた」のいう内容が書かれています(英語訳の記載はなし)。
意味深すぎる。。。これも勝手な憶測ですが、中国政府の検閲により自殺シーンを改変・政府の政策PRにつなげたのではと。
作品の描写やストーリーからも、そして現実面からもあらゆる面で中国という国を考えさせられるとても興味深い作品でした。
繰り返しの日常。
幸せとはなんなのか。
この映画は映画がとても大好きな知り合いにおすすめされて友人何人かと一緒に観賞しました。
観賞後のそれぞれの感想や意見・考察がわかれるのがとても興味深い作品でした。
とある町に住む男性と女性の結婚から始まる話。
決して裕福ではない二人には理不尽なことが起こったり、自分たちのせいではないことまで問題がやってくる。
ただ、それは誰しも生きていれば起こりうること。
男性はそんな理不尽なことも受け入れ、約束したことを律義に守って生きていく男性だった。
妻が障害がある人でも決して文句も言わず、二人で困難を乗り越え続けていく話はみていて地味ではあるけれど、それが幸せなのかもと感じました。
私は二人が土のレンガが台風で崩れてしまうのをおさえようとするシーンが好きでした。
ただ、そのあとの悲劇がとてもつらく、なんてあっさりと人はいなくなってしまうのだろうと、、。
男性の最後はどういう結末なのか友人と考察しあいましたが、捉え方は人それぞれだなと感じました。
自分にとっての日常は幸せなのか、生きていく中で一番の幸せとは何なのかを考える映画でした。
約束を守り続ける男はかっこいい。
そんな生き方をしていこうと決めました。