母の聖戦

劇場公開日:

母の聖戦

解説

誘拐ビジネスが横行するメキシコを舞台に、我が子を取り戻すべく奔走する母親の姿を、実話をもとに描いた社会派ドラマ。

メキシコ北部の町で暮らすシングルマザーのシエロは、10代の娘ラウラを犯罪組織に誘拐されてしまう。犯人の要求に従って身代金を支払うも娘は返してもらえず、警察にも相手にされない。自らの手で娘を救うべく立ち上がったシエロは、軍のパトロール部隊を率いるラマルケ中尉と協力関係を結んで調査していく中で、誘拐ビジネスの血生臭い実態を目の当たりにする。

製作陣には「ある子供」のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督、「4ヶ月、3週と2日」のクリスティアン・ムンジウ監督、「或る終焉」のミシェル・フランコ監督が名を連ね、ルーマニア出身のテオドラ・アナ・ミハイが長編劇映画初メガホンをとった。2021年・第34回東京国際映画祭コンペティション部門では「市民」のタイトルで上映され、審査員特別賞を受賞。

2021年製作/135分/G/ベルギー・ルーマニア・メキシコ合作
原題または英題:La Civil
配給:ハーク
劇場公開日:2023年1月20日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第74回 カンヌ国際映画祭(2021年)

受賞

ある視点部門
Courage Prize テオドラ・ミハイ

出品

ある視点部門
出品作品 テオドラ・ミハイ
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(C) 2021 Menuetto/ One For The Road/ Les Films du Fleuve/ Mobra Films

映画レビュー

4.5こういう現実があるのかと驚愕

2023年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

誘拐犯罪が日常的にはびこっているメキシコで、娘を誘拐されたシングルマザーが単身で犯罪組織と相対していくプロセスを徹底したリアリズムで描く作品。カメラは終始、主人公の母親を捉え続け、観客は母親と一緒に何が真実なのかを探ることになる。警察が信用できないだけでなく、身内をも信用できない。通りかかった軍に協力を要請して、主人公は犯罪組織の実態に迫っていく。
主演のアルセリア・ラミレスが本当にものすごい存在感で、平凡なシングルマザーが驚異的なまでに精神的な強さを見せて、闇の深い犯罪組織の実態を暴いていく。この映画は元々、ドキュメンタリーとして制作しようとしていたらしいが、あまりにも危険な現実を映し出すため、ドキュメンタリーでは難しいと判断されたらしい。徹底したリアリズム描写は、劇映画とはいえ偽物ではない、あまりにも強烈な現実に打ちのめされる。

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杉本穂高

4.5今年最初の衝撃作。女性の連帯は心強い

2023年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

怖い

メキシコでは身代金目当ての誘拐が横行し、被害家族の大多数は組織からの報復を恐れて泣き寝入りするという。そんなメキシコを舞台に、娘を誘拐された母シエロが自らの手で取り戻そうと奔走する。別居中の夫も、警察も頼りにならない。素人探偵よろしく誘拐に関わっていそうな一味を尾行したりするが、当然限界があり、軍のパトロール部隊に直談判して協力を取りつけ、誘拐ビジネスの闇に迫っていく。

BGMを排し、カメラはシエロの視点で彼女の感情と会話、行動をストイックに追う。主演女優アルセリア・ラミレスの起伏に富む感情表現が素晴らしく、精細感が高く巧みにコントロールされた映像も相まって、娘を案じる母の命懸けの戦いに観客もまた飲み込まれていく。

本作で長編劇映画デビューを果たした女性監督のテオドラ・ミハイは、チャウシェスク独裁政権下のルーマニアで生まれ、のちにベルギーに拠点を移す。市民同士が監視して告発しあい誰も信頼できない社会で育ったこと、米国留学でメキシコをルーツとする友人たちができたこと、メキシコを訪れた際に麻薬戦争が起きて市民の日常が危険にさらされるのを目の当たりにしたことなどが、本作の製作につながったという(共同で脚本も書いている)。

思えば、ゴルシフテ・ファラハニがISの捕虜になった息子を救出するために戦う母を演じた「バハールの涙」も、女性のエバ・ユッソンが監督していた。“我が子のために戦う母”の映画を通じて、女性の連帯が広がり強まっているようで心強く、頼もしく思う。

「ボーダーライン」シリーズ2作や、ドキュメンタリー「ミッドナイト・ファミリー」など、メキシコ社会の現実を題材にした作品を楽しめた人なら、特におすすめだ。

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高森 郁哉

4.0【誘拐ビジネスが蔓延る国、メキシコ。ある日、突然娘を誘拐された母親が、自力で捜索する姿を、ダルデンヌスタイルで描いた作品。あのラストシーンをどう解釈するかは、観る側に委ねられる映画でもある。】

2024年11月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

難しい

ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 5件)
NOBU

4.0ラストは制作陣のギリギリの選択

2024年10月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

誘拐された娘の奪還に動く、市井の母親の苦闘を描く物語。

シリアスに全振りした社会派サスペンス。
ヒーローもヒロインもBGMもなく、ただただ母の愛情と犯罪に蝕まれたメキシコの惨状を映します。

警察も友人も頼りにならず、信頼すらさせてもらえない状況に、心が重くなります。
それだけに、自らの危険を顧みず、恐怖に怯えながらも娘を求める母の愛情が心に迫ります。

大向こう受けする作品ではありませんが、完成度の高い作品だったと思います。
私的評価は4にしました。

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共感した! 1件)
よし