母の聖戦のレビュー・感想・評価
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父親に本気で苛立つ
冒頭にしか現れない娘ラウラは松嶋菜々子や浅野温子にも似ていてかなり可愛い。その時には別居中の夫に対して生活費の要求も言い出せなかった母親だが、娘の誘拐に対して誰にも頼れないと知った主人公は徐々に変わっていく。当然、別居中の夫に相談に行くが、役立たずどころか大バカで浮気相手の若い女の方がまだマシなくらい。一緒に身代金の受け渡し場所に行っても交渉どころか一言も発さず、犯人にスッと封筒を渡すのみ。通りで殺された不明女性の死体が棺桶屋に安置されているというので確認に行くと、遅れて着いてきた夫は、何でこんなとこに来た、怖いじゃないか、と半べそ。更に、身代金のせいでお金がなくなったからであろう若い女に去られ、ノコノコ家に戻って来て「やり直そう」と言う。アホか‼︎ 舌打ちしてしもたわ。
警察は犯人達と繋がっている可能性があって当てにならないと言われており、1人で犯人を探していたが、たまたま近くで軍の車列を見て堪らず近づき助けを求め、異動して来たばかりで癒着がない中尉が助けになってくれる。これだと、警察は腐った組織で軍部の方がまともということになるが。また犯罪組織は公的な権力的地位にはないが、序列があり、権力者の近くにいる者もいるし、息子を誘拐されて犯人の目星がついていても我慢している場合もある。
原題は「市民」、権力者に対して、虐げられた普通の人々の苦しみや闘いについてなのに、邦題では母は強い、みたいな扱い。母親だから強いんじゃなくて、男がバカ、姑息、腰抜けなんだよ。
肋骨1本と娘のDNAが一致したと言う。肋骨1本しか見つからないというのは確かに腹立たしいが墓地から肋骨1本が発掘されたら生きている可能性はないだろう。ただDNA検査は正しいのか?という疑問も浮かぶ。そしてあのラストは…、狡いね。
頑張れ、お母さん!
母は強し!ですね。家事しかしてこなかった様な普通の主婦が、銃弾が飛び交ったり、いつ襲われるかわからない状況でも娘を探すのですからね。引き込まれましたが、真相はわからないし、最後に現れた人物は誰?にフラストレーションが残ります。
【歪んだ社会構造の一端を目撃】
娘をマフィアに誘拐されて、狼狽えてる間に身代金を奪われるも娘は戻らず。警察に訴えるが邪険にされまともに取り扱ってもらえず、別居中の腰抜け腑抜けの夫も全く以て頼りにならない追い詰められた状況下、軍に直談判を決行、自身の行動力で解決への接点を見出し娘の居処に迫る。
主演のアルセリア・ラミレスがごく普通の市井のおばちゃん顔から、修羅の如き鬼気迫る表情へと変貌してく様がとにかく秀逸。音楽を極力排したドキュメントタッチの演出も臨場感が高まって素晴らしい。
貧困が故に日常茶飯事に起こる、誘拐や殺人を始めとした凶悪事件を切り口に、歪んだ社会構造への強烈なメッセージをぶつけてくる作品。昨年鑑賞の『息子の面影』『ニューオーダー』同様、加害者が加害者に至る背景にも割り切れなさと歯痒さを感じざる得ない。
ラストシーンは観客に委ねられる。母親がふと顔を上げ表情を強張らせた先には、一旦は身元不明死体とDNA鑑定で一致したと思われた娘が戻ってきてくれたのか?それともマフィアの報復が迫ったのか⁇それとも⁉︎
決着はすれど、結末は見えず
BGMはなく、戦闘の混乱ではカメラがブレ、ドローンなどの大掛かりな撮影もなさそう。
徹底して派手な演出を避け、現実感を与えるつくりに、制作者の想いを感じる。
流れとしては、主人公が手がかりを見つけ、軍の協力を得て追い詰め、それでも娘が見つからない、の繰り返し。
飽きがくるという意見も分かるが、これが果のない闘いに疲弊しつつ、それでも折れない母親像を引き立てているように思う。
結局はたった一本の骨で納得するしかない無力さを以て物語は終わる。
捕まった男の言葉の真偽も、黒幕の正体も、この『誘拐ビジネス』の闇はまったく明かされない。
“死”という真実でシエロの物語は区切りを迎えるが、何も終わらないし、何も解決しない。
実際の事件もそうなのだろう。
“物語”を描く作品なら失格だが、恐らくこれは“真実”を描く作品だ。
エンターテインメントではないが、意義のある作品だと感じる。
レイトショー 中尉がいないと 眠気勝つ
21:30からのレイトショーでみてきました!
ボーダーラインが好きだったので「やっぱメキシコやべえなぁ」とか思いながら前半楽しんでまして、
で軍隊を味方にして中尉がボコして処刑してくんでカタルシスを感じてたわけなんですが、
なんかここらへんからラストスパートかけないでテンポ悪くなりウトウトしてしまい、
「中尉は異動になりました。」
とか言うから最後の方はいかに寝ないかの己との戦いでした。
誰にも頼れない中、眠らないようストレッチをしたり、目薬を差したり、すでに氷が溶けた水しかない飲み物を飲んだり。
孤独な戦いは辛いなと主人公に共感しました。
メキシコ映画、誘拐事件に巻き込まれた母の変容が見どころ、メキシコの警察を批判しているとも取れるので本国での反響が気になります
メキシコに7年住んでいた記憶が蘇る映画体験でした。こんな街並みあったな、トルティア屋さん、警察に罰金(止まれをしっかりしていないといちゃもんつけられた)多めに取られたな、など思い出しました。
映画館は金曜日の午後、女性三人でした。今朝の新聞でこの映画について読んできたという女性もいらっしゃいました。直接には描かれませんが拷問器具など出てくるので苦手な方は注意が必要です。
主人公は車を燃やされ、家に銃撃を受けても勇敢に立ち向かい、対比的に夫は逃げ腰、女性監督の視点もあるのでしょうか?監督はルーマニアにルーツを持つベルギー在住の監督、テオドラ・アナ・ミハイ、次回作があれば見に行きたいです。
ユーチューブで初めて映画感想やってみましたので、よろしければご覧ください。
(検索ワード KSクッキー、母の聖戦)
不可知の敵と戦い、不可知であることを受け入れる。
2021年。テオドラ・アナ・ミハイ監督。メキシコで暮らす母と娘。ある日、デートに行くと言って出かけた娘が帰らず、母親には誘拐犯から接触が。警察に連絡して娘の身に万一のことが起きることを恐れた母親は別居中の夫とともに身代金を支払うが娘は帰ってこない。母親はあきらめずに軍に頼って娘の行方を探るが、、、という話。
背景となっているのは犯罪組織「カルテル」だと思うが、犯罪組織の巨大さ、組織の縄張り争い、軍や警察との抗争、その内部の腐敗構造に触れていないので、人々の警察や軍への不信感の意味がわかりにくい。とにかく無条件で母親は一人で娘を救い出そうとしているように見える。しかし、それは意図的なものだろう。一人の母親の目に客観的な社会のありようなど見えるわけがない。娘の誘拐はとんでもない災難であり、それを引き起こしたのは恐るべき謎の組織であり、軍隊もまた正義遂行のためとはいえ暴力を振るう恐ろしい存在である。巨大な力のせめぎあいのなかに放り込まれた非力な私。個人は力の限りを尽くして奮闘するのだが、結果は神の思し召しにすぎない。こうした中南米の「マジックリアリズム」的風土の感じはよく表れている。
不可知の敵を相手に戦うことが生きることである。肋骨一本が発見されてもそれは娘の死を意味するわけではない。だから、最後に母親に近づいてくる人物の正体もわからないまま。もちろん、これが、肋骨が発見されて死亡と判断された娘であることを疑う観客はいない。
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