パラレル・マザーズのレビュー・感想・評価
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頭フル回転の2時間、血の繋がりは最強なのだろうか?
様々な要素がてんこ盛りの濃密な作品だと感じた。
予告編に印象操作されてはいけない典型の作品ですね。
印象的だったのはジャニス(ペネロペ・クルス)が子供を手渡すことになる場面でバッグを持つシーン、一気にメイドさんのような寂しい姿になってしまったところでした。
あまり接触がない、本作で言えばご先祖様たちとかならば血の繋がりが大事であって、なんとか一族の元へ葬ってあげたいと強く思うことは当然だなと思うのだけれど「親子」や「きょうだい」として密接な関係で生活をしていたとするなら、そこでは血と実際の生活、どちらが勝るものなのだろう。
うーん、悩んでしまうなぁ。
せめて、この作品だけを考えるなら、将来に渡ってみんなが良い関係でありますようにと願ってしまう自分がいた。
歴史の知識があればもう少し最初から没入できたのかもしれないが、色々と考えさせてくれた良い作品でした。
主人公に共感できず、テーマにも納得できない
自分の子供が、自分とは血が繋がっていないと分かったら、真っ先に産院に連絡して、事実関係を確認するのではないだろうか?いくら、今育てている赤ん坊に情がわいて、可愛いと思っていたとしても、そのこととは別に、自分の本当の子供を探し出そうとするのではないだろうか?
それなのに、誰にも真実を告げずに、自分一人で他人の子供を育てて行こうとする主人公の心情が、まず理解できない。
さらに、そうした固い決意をもって子供を育てていたはずなのに、本当の母親が我が子を亡くして落ち込んでいるわけでもなく、主人公が隠しごとをして悩んでいるふうでもないのに、なぜ、あのタイミングで真実を打ち明けたのかもよく分からない。
主人公と若い母親が、ああいう関係になってしまうことにも驚くが、あれでは、子供への愛よりも、その母親への愛が方が優っているように見えるし、もしかしたら、恋人との新生活のために、子供を本当の親に返したのではないかとさえ勘ぐりたくなる。
かと思えば、スペイン内戦での犠牲者の遺骨発掘の話になるが、それまでの子供の取り違えや男女のパートナーの話とは、どうにもしっくりとは繋がらず、違和感を覚えてしまった。
主人公に対する共感の感じにくさと、テーマのチグハグ感が引っ掛かって、最後まで物語に入り込むことができなかった。
スペインの歴史と二人の母親の葛藤から、人としての在り方を考えさせて...
スペインの歴史と二人の母親の葛藤から、人としての在り方を考えさせてくれる
子供を取り違えたっていうのは現実には冗談じゃない話しだけど、映画全体のトーンからしたらちょっとした面白いアクセントのように感じた
自分の子供がすでに亡くなっていて本来入るはずのないお墓に入っているシーンと内戦で亡くなった方が今もちゃんと埋葬されていないってところに共通点のようなものを感じた
パンフとレビュー見て考え直す部分が多すぎた...
監督やキャストにスペイン出身の方が多いようなので特別思いがあるのかな
スペインはサグラダファミリア、フラメンコを始め、情熱や芸術的なイメージしかわかなかったけど、内戦の傷跡の側面を知ることができたのが良かった
血縁の重み?
いやぁ。なんか、赤ちゃんの取り違え問題と、スペイン内戦時の親族の遺体(遺骨)発掘の問題が、どうつながるのか、つなげるのかと言うナゾナゾに近い謎、ですよ。
生まれてから、ここまで育てた娘を、いとも簡単に実の母親に返してしまう ジャニス。娘を抱き、その夜のうちに家を出て行くアナを、泣きながら見送るだけなんて、ちょっと考えられねー!って思うんですが。
内戦時に虐殺された曾祖父の遺骨を「発掘」する件。娘のエピソードの言わんとするところは「関係性より血縁」である。内戦で負った傷=血縁の恨みは、今、この国の中の状況が、政治がどうなろうとも、癒されることは無い。って事?
地味に社会性ありの内容ではありますが、二つの問題のつながりが、ちょっと分かり難くって、ココロの中で頭を抱えながら、ペネロペ・クルスって美人さんやね、ロッシ・デ・パルマって存在感あり過ぎじゃね、なんて思いながら、劇場を後にしたワタクシでした。
スペイン映画は、やっぱり少し苦手でみたいです。
あ。それと。
その薬莢、デカ過ぎだけど。重機関銃で至近距離から撃ったのかと。遺体の損傷程度と一致してないやんw
つまらなくはないが…
10本分の映画のネタを1本に纏める凄まじさ
観終えた後、かなりの疲労感と達成感にやられました。なんと言うか、目の前でクワッドアクセルを決められた時みたいな感覚です。うまいこと言えませんが、それくらいの衝撃です。
なぜなら今作には非常に多くのテーマがあって、ざっと覚えてるだけでも
↓
望まれていなかった妊娠
シングルマザー
赤ん坊の取り違え
内戦の惨禍で虐げられた人々
LGBTQ
アイルランド関係…については、ちとわかりませんが
子どもを抱える女性の社会進出の難しさなどの課題も含めると、ざっと10課題ほどのテーマが拾える今作。
本来であればひとつひとつを別の映画にしてしかるべきところを、えいやと纏めてしまったのがこの作品です。
なので、映画監督を生業としている方が観たら、多分頭を抱えてしまわれるのではないかと。
いや、ほんとによく纏められた。さすが旧知の名優&名監督コンビと言うか。ペネロペ・クルスとアルモドバル監督という、何度も作品を重ねてきた2人だからこそ成し得た偉業でしょう。他の俳優と監督なら、多分主題が多すぎて空中分解してたと思います。
なお、全然主題とは関係ないでしょうが、個人的にはラストのある場面での描写がとても気になりました。過去付き合っていた人間と現在付き合っている人間が同じ空間にいるという。
現夫はわかってんのかな……?
ま、いいか。
日常としての悲劇
内戦後の寓話や神話のような
タイトルの示す子どもの取り違え・入れ替わりっていうのは、実は二次的要素だと思いました。
内戦で虐殺された曾祖父ら村人たちの遺体を回収して弔えるかどうか、それにより自己のアイデンティティがどこにあるのかを常に考えて生きるのか、というのが主軸だったかと。
そんな出来事を通じて「家族」とは何かを描くような作品でした。
1930年代のスペイン内戦の歴史をベースに、理不尽極まりない状況を冷静に考え、
「歴史を受け止めること」
「間違えた他人を責めないこと」
「当事者意識をもつこと」
「嘘をつかないこと」
「自分に出来うる誠意ある生き方をすること」
「母から子へ愛は受け伝えていくこと」
などを実践する主人公ジャニス(ペネロペ・クルス)の眼を、観客がいかに受け止めるのかを試されている気がしました。
戦争のあとに人はどう生きるのか、という寓話というか新しい神話みたいな重みを持たせていて。
平和な日本人にはピンとこないですが、内戦や侵略に晒された国々では響くものがあるんじゃないかと。
だから、エンタメ文法の「物語」「キャラクター」からは真逆に行く作品でもありました。
子どもの取り違えにまつわる二人の女性の悲喜劇を期待して観にいくと、あっけに取られて、結構欲求不満のもやもやのまま終わる感じなので要注意。
「え?そんな簡単に解決しちゃうの?」とか「え?そんな放りっぱなしで中途半端なままなの?」とかいうことがいくつもあります。
その点では、本作の宣伝は誠実ではなく、嘘ばかりだったようで、そこが皮肉めいて面白かったです。
いろいろな考え方がある良作。まよったらおすすめ。
今年320本目(合計595本目/今月(2022年11月度)7本目)。
序盤こそ、「自分が生んだ子、本物かな?」といった、ミステリー要素がどんどん出てきますが、オープニングでそれと無関係にスペイン内戦の話も出てきて、いわゆる「お飾り」で出てきたのかな、と思えば、実は映画全体の理解としてこの「スペイン内戦」がテーマでした、というお話です。
ただ、それは全体の話であって、特に「子育てパート」の部分に切り離してみることも可能で(なお、スペイン内戦に関してはそれほど深い知識は要求されず、前日にぐぐっておく程度でも違います)、その場合、その「子育てパート」では男性は大半出てこないので、女性どうしの連帯もの(いわゆるシスターフッド系。2021年度の「プリテンダーズ」等)まで感じました。フェミニスト思想を感じるTシャツを着ている子(この映画、主人公を1人には決められないと思いますが)が出るなどです。「私たちは男性女性関係なくフェミニスト」という趣旨のTシャツですね。「男性女性関係なく、配慮すべき点・合理的な範囲で女性を理解する」という考え方であり、この考え方は私も賛同できます。
さて、生まれてきた女の子(セシリアちゃん)に隠されていた秘密、さらにその奥に隠されている「スペイン内戦に関する当事者の思い」とは何か…。ここからははネタバレですね。ぜひ映画館で見てほしいな、と思います。パンフレットも結構良心的で詳しく書かれていましたしね。
スペインというと、たとえば闘牛があったり発音に人気のあるスペイン語などなど魅力も多いですが、スペインは「スペイン内戦」という自国の負の遺産があります。その遺産を決して忘れることなく、そして次の世代へとつなげ…というスペインの考え方(この映画はスペイン映画なので、当然考え方はスペインの一般的な見解に沿うもので作られているはず)には賛同できます。
特に減点対象とすべき点は見当たらないので、フルスコアにしています。
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(参考/女の子の名前が「セシリア」)
・ スペインの名前の名づけとしてはよくあるほうで、一般的な名前であるそうです。
(参考/スペイン内戦について(映画内で求められる知識について))
・ 固有名詞まで出て、ある村のある攻撃がどうこうまでは求められませんので、「スペイン内戦とは何か、どのようないきさつで何が発生し、今日(こんにち)までスペインに何に影を落としているのか」を予習するくらいで大丈夫です。
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【”血縁を大切にする生き方、家族の在り方。”スペイン内戦の犠牲者達の遺骨発掘も絡め、二人のシングルマザーの姿を描く。ペネロペ・クルス演じるジャニスの生き方には、頭を垂れる想いを持った作品でもある。】
ー 写真家、ジャニス(ペネロペ・クルス)が産んだセシリアと、10代のアナが産んだ娘。同部屋だった二人は電話番号を渡して別れるが・・。-
◆感想
・この作品でシングルマザーの存在が、悲観的なトーンではなく描かれている所に、文化度の違いを感じる。
ー アナの場合には、望んだ出産ではなかったが・・。-
・ジャニスが・・”肌が、浅黒いね。セシリアは僕の子ではない・・”と父親と思っていたアルトゥロから告げられ、DNA鑑定検査を依頼するシーン。
ー ジャニス、茫然・・。それはそうだろう。是枝監督の「そして、父になる」を、思い出す。そして、アナの口腔物もDNA鑑定をすると、自分の時は母子確立0%だったのが、99.99999%・・。-
・ジャニスは、アナと再会し、真実を告げ、愛娘セシリアをアナに託す。
ー アナが娘を突然死で亡くしていた事も起因しているだろうが、ナカナカ出来る事ではないよな・・。ー
・一方、ジャニスはスペイン内戦時に罪もなく殺された血縁者たちの遺骨発掘も、並行してアルトゥロに依頼していた。
ー そして、発掘場からは、遺骨が次々と・・。ジャニスは生き残った女性達のDNA鑑定に使用する口腔物も採取している。遺骨との血縁を調べるためである。
彼女が”血縁”を大切に思う女性である事が良く分かるシーンである。-
<今作は、シングルマザー2人の赤ちゃん取り違えに対する対処の仕方だけでなく、アナと母親との関係性、スペイン内戦時の犠牲者の遺骨発掘も描きながら、血縁を大切にする生き方、家族の在り方を鑑賞側に考えさせる作品である。
ジャニスの凛とした生き方には、頭を垂れる想いを持った作品でもある。>
アルモドバル とペネロペの新たな傑作‼︎
アイデンティティの在処
出産間近の産院で知り合った同じ日に出産をする予定の2人のシングルマザーの話。
スペイン内戦に纏わる被害者の子孫という重~い話題の歴史記憶法がなんたらかんたらに始まって、子供の取り違えに転換していくけれど、子供の話しは王道ドラマというかありそうなネタというか…。
そこに多様性を絡めて来ちゃうのは最近の映画らしいけれど。
ところでスペインの法律は知らないし、大昔の話しならいざ知らず、この場合親権はジャニスでは?なんてことも頭を過る。
収まるべきところ、帰るべきところ、血縁等の意味においては確かに被るところもある2つの話しではあるけれど、どうも自分の中ではあまり重なってこないし、話しとして頭ではわかるしつまらなくはないけれど、イマイチまとまりが良くなくて沁みて来なかった。
一歩踏み込んだ人間ドラマ
赤ちゃん入れ替わりドラマ
鑑賞中には分からなかったこと
ジャニスにだってそれなりに言い分はあるはずなのに。
いや、見方によっては〝不都合な真実〟と正面から向き合ったうえに、自分のこどもの不幸まで受け止めたジャニスを責めるなんて…
などと感じてるようだから、自分は浅いんだな、と思わず苦い心持ちにさせられました。
少し時間を置いてから、あらためて振り返ると意外な気付きがありました。
事実を明らかにして、伝えるべき人に伝える。
その事実の〝当事者〟の立場でそれを遂行することが、いかに大変か。秘密を抱え続け、もう少し先送りにすることだってできたのに、ジャニスは自分がすべきと思ったことはちゃんとやる。
取り返しのつかないこと(内戦時の非人道的な行為もそうだし、病院での取り違えもそうだ)を今になって自分も被害者なのだと声高に責め立てるのではなく、救えるものがあればそれを救うことが最優先される。そのために出来ることを粛々と行う。
暴力や威嚇に走りがちな男たちよりも(この映画にはそんな男は出てきませんがひとたび戦争や争いが起きれば明らかです)、よほど人間としての強さを感じるのです。
ペネロペさん、じわっと伝わってくる強さを見事に表現していました。
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