劇場公開日 2022年11月3日

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「内戦後の寓話や神話のような」パラレル・マザーズ コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0内戦後の寓話や神話のような

2022年11月5日
PCから投稿

タイトルの示す子どもの取り違え・入れ替わりっていうのは、実は二次的要素だと思いました。
内戦で虐殺された曾祖父ら村人たちの遺体を回収して弔えるかどうか、それにより自己のアイデンティティがどこにあるのかを常に考えて生きるのか、というのが主軸だったかと。
そんな出来事を通じて「家族」とは何かを描くような作品でした。

1930年代のスペイン内戦の歴史をベースに、理不尽極まりない状況を冷静に考え、
「歴史を受け止めること」
「間違えた他人を責めないこと」
「当事者意識をもつこと」
「嘘をつかないこと」
「自分に出来うる誠意ある生き方をすること」
「母から子へ愛は受け伝えていくこと」
などを実践する主人公ジャニス(ペネロペ・クルス)の眼を、観客がいかに受け止めるのかを試されている気がしました。
戦争のあとに人はどう生きるのか、という寓話というか新しい神話みたいな重みを持たせていて。

平和な日本人にはピンとこないですが、内戦や侵略に晒された国々では響くものがあるんじゃないかと。

だから、エンタメ文法の「物語」「キャラクター」からは真逆に行く作品でもありました。
子どもの取り違えにまつわる二人の女性の悲喜劇を期待して観にいくと、あっけに取られて、結構欲求不満のもやもやのまま終わる感じなので要注意。
「え?そんな簡単に解決しちゃうの?」とか「え?そんな放りっぱなしで中途半端なままなの?」とかいうことがいくつもあります。
その点では、本作の宣伝は誠実ではなく、嘘ばかりだったようで、そこが皮肉めいて面白かったです。

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コージィ日本犬