劇場公開日 2022年11月3日 PROMOTION

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パラレル・マザーズ : 特集

2022年10月31日更新

娘は他人の子だった…では本当の“私の子”はどこに?
シングルマザー2人の運命が交錯、自分ならどうする?
少なくとも5回の衝撃!アカデミー賞&世界的高評価作

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衝撃的な物語。しかし、重すぎない鑑賞感が不思議と心地いい――。

「オール・アバウト・マイ・マザー」をはじめ、世界中の映画ファンを魅了してきた巨匠ペドロ・アルモドバル。彼が20年もの間、構想を温めてきたという「パラレル・マザーズ」が11月3日より公開を迎える。

各国の映画祭や批評家賞で絶賛され、主演のペネロペ・クルスに対しても「キャリア最高の演技」との声が上がっている本作のいったい何がそこまですごいのか?

この特集でその魅力の秘密を解き明かしていく。


【予告編】同じ日に出産した2人のシングルマザーの数奇な運命──

【見どころ】世界的巨匠が20年も構想した渾身の物語
魂を刺激するテーマと演技が評価…アカデミー賞候補に

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●ストーリー

フォトグラファーのジャニス(ペネロペ・クルス)は、出産を控えて入院。そこで17歳のアナ(ミレナ・スミット)と出会い、2人は同じ日に女の子を産む。ともにシングルマザーとなる決意を固め、再会を誓い退院する。

ジャニスはセシリアと名づけた娘に愛情を注ぐが、娘の父親である元恋人(イスラエル・エレハルデ)からは「肌の色が違うね……自分の娘とは思えない」と告げられる。不安に駆られDNA鑑定に踏み切った結果、セシリアがジャニスの実子でないことが判明する。

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病院での取り違えがあったのでは……? 疑念を抱くも、ジャニスはこの事実を心の内に封印することを決意する。だが1年後、偶然アナと再会を果たし、アニータと名づけられた娘が亡くなったことを知らされる。


●主演:ペネロペ・クルス、全身全霊の熱演がアカデミー賞で高評価
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ジャニスを演じるのはペネロペ・クルス。アルモドバル作品には欠かせない“盟友”であり、なおかつハリウッド大作にも数多く参加し、ウッディ・アレン監督作「それでも恋するバルセロナ」でアカデミー賞助演女優賞に輝くなど、日本でも高い人気を誇る。

本作では、娘に愛情を注ぐも、残酷な“真実”に直面するシングルマザーを熱演。葛藤や孤独、罪悪感に苦しむ彼女の複雑な内面を見事に表現し、第94回アカデミー賞では主演女優賞ノミネートを果たした(同じくアルモドバル監督作「ボルベール 帰郷」以来、2度目)。


●監督:スペインの巨匠アルモドバル、20年間温めた悲願の企画
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約20年前に構想されたというが、それはアルモドバルにとって「オール・アバウト・マイ・マザー」や「トーク・トゥ・ハー」などで世界的名声を得ていた時期。なぜ本作の実現にこれほどの時間を要したのか?

その答えはペネロペ・クルスにある。当初、ペネロペを若きアナ役に想定していたが、彼女自身がむしろ強く惹かれたのがジャニスだった。ゆえに、ジャニスを演じられる“時機”が来るのを待つことを決断。ペネロペも私生活で母となったタイミングで、満を持して製作が開始されたのだ。

また、自らの人生を脚本に反映させることが多いアルモドバル。だが本作では、初めて“私”を離れ、スペイン人の実存に深くかかわる“スペイン内戦”をもうひとつのテーマに据えている。国家が抱える歴史問題を彼らしく、命を紡ぐ“家族”のドラマに昇華させた。


●世界的評価:映画賞で83ノミネート・23受賞! ロッテントマトでも96%支持!
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新作が公開されるたびに各国の映画祭で話題を呼ぶアルモドバル作品だが、本作は映画賞におけるノミネート数は83を数え、そのうち受賞数は23におよぶ。

なかでもベネチア国際映画祭ではペネロペに最優秀女優賞をもたらし、第94回アカデミー賞でも主演女優賞と作曲賞の2部門にノミネートを果たした。

米映画評論サイト「ロッテントマト」でも96%と批評家たちから圧倒的な支持を集めており「監督・アルモドバル×主演・ペネロペ」に対するファンの期待を裏切らない、間違いのない作品となっている。


【ありがちな展開ではない】5回、衝撃が待っている…
先行作品とは異なるテーマ性が、予想外の感覚を与える

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乳児の取り違えを題材にした本作で、アルモドバルは幾重にも“衝撃”を仕掛けている。そのなかで以下の4つと、プラスαをネタバレにならないようにご紹介していこう。


①:「自分の娘じゃない?」と疑念…検査すると ②:DNA検査の結果、自分の子ではないと発覚する ③:ではこの子は誰の…? 同室の“あの子”…? ④:再会、自分の娘が亡くなっていることを知らされる

始まりは、娘の父親であるはずの元恋人が、娘のセシリアを見て口にした「僕の娘とは思えない」という言葉(衝撃①)。

「そんなはずない」と思いつつも、胸によぎる一抹の不安……。そして踏み切ったDNA検査の結果、彼女がセシリアの実の子ではないという衝撃の事実が判明する(衝撃②)。

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では、この子の母親は誰? そして、私の実の子はどこに――? 考えられるのは産院で同室になり、同じ日に女の子を産んだアナ? だが葛藤の末に、ジャニスはこの“秘密”を誰にも明かさず、これまで通りにセシリアに愛情を注いで生きていくことを決意する(衝撃③)。

1年が過ぎ、自宅近くのカフェで働くアナと再会。すでにアナの娘のアニータが、亡くなったことを知らされる。生前のアニータの写真を見せてもらうと、そこにはハッキリとジャニスの面影が……(衝撃④)。

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是枝裕和監督作「そして父となる」をはじめ、出生時の取り違えを描いた作品は過去にもある。しかしそれらと大きく異なるのが、実子がすでに亡くなってしまっているという点だ。

ゆえに従来の作品とは異なるメッセージを含むのだが、物語はまた予想を超えた方向に舵を切る。なんとジャニスは、“真実”を告げぬまま、アナをベビーシッターとして雇い共同生活を送るのだ――。

果たしてどうなる? アルモドバルが描き続けてきた“母”を深化させた物語は、あなたを“さらなる衝撃”へと運んでいく。残酷な真実を前に、ジャニスが下した決断とは――。


【編集部レビュー】実際に鑑賞してみると…
やはり演技と物語に没入 軽やかな演出も好印象の良作

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「面白そう」と思ったはいいが、「でも重たいテーマだから、観るのに心の準備が……」と不安になった人もいるかもしれない。

しかし、本作は“気軽に観られる”という良点もある。映画.com編集部員(一児の父)が実際に観たレビューをお届けするので、参考にしてみてほしい。


●やはりペネロペ・クルスがすごい…観る者すべて“自分ごと化”する名演
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まず印象に残るのは、何といってもペネロペ・クルスの演技! 腕の立つフォトグラファーとして身を立て、仕事のことであれ、出産や恋人との別れであれ、自らの意志で全てを決断し、前へと進んでいく強い女性・ジャニスを圧巻のクオリティで体現している。

だが、目の前の子どもが実の子ではないという絶望的な“真実”は、ジャニスを闇へと飲み込んでいく。DNA鑑定の結果を受け、彼女は弁護士、そして元恋人へと電話をかけるが、電話はつながらない……。

そこに悪意は存在しないのだが、シングルマザーのジャニスは孤独を深め、たった一人で誰にも真実を明かさないという決断を下す。その結果、彼女の葛藤や苦悩、そして罪悪感は深くなっていく。

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こうした複雑な感情の動きをペネロペは繊細に表現。「もしも自分だったらどうするか?」――観客は常にその思いを抱きながらスクリーンを見つめることになる。ペネロペの凄まじいまでの演技力が、この信じられないような事実を、身近な“自分ごと”にしてくれるのだ。

全ての真実を知った上で、アナとセシリアを見つめるジャニス――彼女の切ない心情に自分自身が重なるはずだ。


●嬉しい誤算も…題材は深刻だが、とても“観やすい”軽やかな作風
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と、ここまでで本作の概要や魅力を知り「面白そう!」と感じつつも、「テーマが重たい……」とい う人(特に現役子育て中の親たち)も多いのでは? 実は筆者もその一人だった。

アルモドバル×ペネロペの新作に惹かれつつ、“子どもの死”が描かれる作品は、つらい気分になる可能性が高いため、「観たいけども腰が重い」と思いながら鑑賞した。だが、ここで予想を裏切る嬉しい誤算があった。

確かに深刻なテーマを扱うがゆえ、決して笑いやユーモアにあふれているわけではないのだが、「これ日本映画だったらもっとドーン!と悲しみのどん底に引きずり込むよね?」という場面もどこかカラリと描かれており、ジャニスの決断、意外な結末を含め、決してただ暗い作品にはなっていない。むしろ軽やかでとても観やすい、とすら感じる瞬間もあった。

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そして、ジャニスとアナ以外の“自立した女性たち”にも注目してほしい。

アナの母親は、母であることよりも「女優という自分の夢」を優先して生きている。そしてジャニスの親友は、会社経営者として豪快に働くキャリアウーマンだ。

まさに2020年代の「オール・アバウト・マイ・マザー」と言える作品に仕上がっている。じっくりと味わって、胸の奥で柔らかな感情がじんわり広がっていくのを楽しんでほしい。


●海外メディアの絶賛評:「傑作の域を超える」
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最後に、特集を締めくくるにあたり、海外メディアの声をいくつか紹介したい。

「この映画はあなたを惹きつけ、離さない。―VARIETY」

「これまでで最高のペネロペ・クルスだ。―The Times」

「アルモドバルが描き出す新たな女性たちに深みをもたらす。スペインのレガシーにも挑んだ初めての作品。―INDEPENDENT」

「ペドロ・アルモドバルが届ける小さな喜びの束。なんとエモーショナルな経験だろう。―The Guardian」

「傑作の域を超える。―THE WRAP」

素晴らしい絶賛評の数々。さあ、映画を観る準備はできただろうか?

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