ある男のレビュー・感想・評価
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濃厚骨太な‘鑑賞’すべき邦画
浮遊した【個】なんて存在しない、つまり何かしらのルーツや社会などの集団、評論家の西部邁さんが仰っていた【真空パック】状態の個など存在し得ない。
その十字架とでもよべる運命を背負った人たちの、もがきながら懸命に生きる物語だ。
全編を通して出てくる自分とは違う境遇の人への無理解・無神経・差別意...
全編を通して出てくる自分とは違う境遇の人への無理解・無神経・差別意識・排他意識・・・
そんなものにあてられつづけて、しんどいしんどい、、
でも、人と人 としても関われる。捨てたもんじゃない!と!!
おもしろかった。そして、役者さんたちがすてき!
本物はどこに
この物語は、戸籍偽装をテーマにした話でありタイトルからは考えられない映画でした。
キャストは豪華であり物語も奥深いので自分には話として難しかったかなって所でした。小説版でも話が異なるそうなので読むタイミングがあれば読んで追記をまたしに来るかもです。
素敵な映画、そして安藤サクラ
安藤サクラの演技を見るだけでも価値がある
冒頭のシーンの表情から凄い。
もちろん映画としてのできも素敵
「人とは何か」を練られた構成で、しかし静かに落ち着いたテンポで考えさせる。
ひとつひとつのシーンに込められた意味が迫る。
ラストシーン。そう、他人の人生を語ることが自分の来し方行く末を考える事になる。
演技に魅せられ、ずっしり心にくる映画
キャストが豪華で割と楽しみにしていた作品。
序盤から窪田さん安藤サクラさんの静の演技に引き込まれた。
さすがだった。ずーっしり重ーいあの感じが出せるのすごいなって。
でも、自分の理解力無さすぎて、妻夫木さんが調査してる途中の場面で混乱しかけた。
親のこととか家柄とか生まれた時から決まってしまっていること、どうしても変えられない過去、いろいろ抱えて抱えきれなくなってこの映画のある男のようになってしまっている人が現実世界にいてもおかしくないよなぁって思えた。
最後の最後に主演がなんで妻夫木さんなのか種明かしされるあの終わり方も好きだった。
愛する人のなにを見ているだろうか。
肩書きやカテゴライズされた要素はどれ程の意味を持つのだろう。誰かを愛するとき、その人のなにを見ているだろう。そんな問いかけを感じました。
平野啓一郎原作の脚本は期待を裏切らない密度で、平野さんが提唱する分人主義をベースに、戸籍ロンダリング、死刑制度、ヘイトスピーチなどをテーマに取り入れています。哲学的でありながら物語である意味を強く感じる主張がありました。
「戸籍を入れ替え生き直す。それぐらいのことをしなければ生きていけない人もいるんだ」特に印象に残った台詞です。
ミステリー要素も濃く、サイコホラー感もあり迫られるような音の使い方は追い詰められる、逃れられない、そんな登場人物の感情と観客をリンクさせる演出で追体験させられているようでした。映画館で映画観てるなあ。という実感を強く持ちましたし、素直な感想は「怖かった」です。
場面によって主人公が変化する構成も面白かったです。複数人の人生に焦点を当てているため登場人物も多いのですが、煩雑さもなく流れが入ってきやすかった。
極力情報入れずに観たため、次々出てくる演技派俳優に驚き、笑みが溢れてしまうほどお芝居に圧倒され続けられました。
里枝の息子役坂元愛登さんもお芝居素晴らしかったです。間の取り方空気の作り方の事実っぽさたるや。この2人のシーンは台詞演出ともに良いものばかりで見どころの一つです。
買わないと何か悪い店には入りづらい
結婚相手の男が実は誰なのかが分からない。
その理由をひもといていくミステリー。中々面白い作品である。
物語の流れで主人公が変遷する。
良い点
・お経のリズムに敏感な妹
・刑務所の人
悪い点
・難解な交換
・そっくり
・むしろややマザコン
その他点
・在日
・調査費用
現代版「砂の器」
人間の宿命を描いた不朽の名作「砂の器」を思い出した。
ところどころ分かりにくかった部分は原作を読んでフォローしたいと思う。
いずれにせよ今年の映画賞レースのトップを走る作品であることには納得できた。
演技陣も素晴らしかった。
映画を見る事
2022年いろんな映画を観てきた中で1番面白かった作品。
素晴らしい映画体験だった。
エンドロールで感激のあまり震えが止まらなかった作品。久しぶりにそういった作品に出会えたし、生涯のベストに入る作品。
ドラマ的な展開やミステリー要素などを期待すると地味な印象かもしれないが、俳優陣の方々の演技にスキがなくこれほど見応えがある作品は滅多に出会えないと思う。
妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝という豪華なメインキャストの方々の演技は群を抜いてよかった。安藤サクラさんの人妻の色気が漂っていた感じとか、妻夫木聡さんの演じる城戸の葛藤や自分を見つめ直す姿とか。特に窪田正孝さんの役はめちゃくちゃ複雑でやりづらそうなキャラクターだったのにも関わらず、それを上回る様な印象的なキャラクターになっていた。凄まじい迫力を感じました。これはもう助演男優賞になるでしょう。
原作者、平野啓一郎先生が唱える分人主義がテーマになっている本作。対人関係ごと、環境ごとに分化した、異なる人格があるという考え方。中心に一つだけ「本当の自分」を認めるのではなく、それら複数の人格すべてを「本当の自分」だと捉えること。今の世の中は、SNSだったり、職場だったり、学校や環境、過去や現在によってキャクターを演じなければならないシーンと、個人の個性のギャップに悩んだり、もどかしく思う事で疲れてしまうシーンに溢れている。そんなん気にするなとシンプルに考えられる人もいるのかと思うけど、実際状況に合わせて変化させることに疲れている私にとって窪田正孝さん演じる謎の男Xと謎の男を追う中で、自らのアイデンティティを見つめ直す妻夫木聡さんの演じる城戸の姿はとても印象的だったし、刺さるものが多かった。
エンターテイメントとして一級品なのは間違いない中で、映画の見せ方、ストーリーの構造の描き方が感激だった。
映画の構造的に面白いのが、謎の男Xを追う城戸という状態が正しく"映画を見る事"に近い状態になっていて、その城戸を追いかけている観客までもがシンクロする感覚になっている。そしてラストのあるシーンで観客と主人公が混ざり合う様な強烈なカタルシスを味わうことがこの映画の1番の面白さと人生の機微を体験できる描き方が本当に本当に凄まじかった。映画を見る事で自分の内面を見直す、なにかヒントがもらえる事が映画体験の醍醐味の一つ。城戸とXを見つめることで自分のあり方を考えるキッカケになる様に出来ている。
野村芳太郎監督や、松本清張作品、安部公房作品の映画が好きな私にとっては大変心打たれる作品だった
差別
差別を受けた者にしかわからない痛みがある。差別といっても人種、地域、学歴など様々なものがあるが、殺人犯の息子という烙印を押されたこの映画の「ある男」が受けた差別というのは想像するに余りある。戸籍を変えるという決断をするまでの心の葛藤はいかばかりか。帰化しているものの、在日3世であり、その出自にわだかまりを持っている弁護士の城戸は自分も差別を受ける側にいた人間のために「ある男」の身元調査に没頭してしまう。
あからさまな差別の対象になる事実は隠して生きることもできる。「ある男」はもちろんのこと、城戸も帰化して日本名を名乗るというのは、この世から差別がなくなることはないということがわかっているからである。知らせる必要のないことは知らせなくてもいい、よく男女間ではお互い知らないことが多い方がうまくいくといわれるが、そんなことを知らなければ何の問題もなかったのになぜ知ってしまったのだろうと後悔することはよく起きる。
ラストシーンで城戸が「ある男」の元妻里枝に「ここで過ごした3年数ヶ月が彼にとっての人生のすべて。はじめて幸せだったと思います」と伝えると、里枝は「真実を知る必要はなかった。この町で出会い、愛し合い、いっしょに暮らし、子どもが生まれた。それは事実だから」と答えた。
差別とはその人の本質とは何の関係もない偏見からはじまる。自分を誰かに決めつけられたり、自分自身で決めつけてしまうことで苦しんでいる人にとって、この映画がそのタガを外す役割をすることを願う。
妻夫木をキャスティングした意図
作品はしっかりしたストーリーで終始楽しめました。
この作品から感じた事は、どんなに努力して手に入れた立派なステータスやどうしようもないコンプレックスがあろうとも人生の幸福度や満足度はその個人にゆだねられているという事だと思います。
変わりゆく多様性の時代へ
いかに自身を強く持てるか
自分の幸せは自分で決めましょう
人間ドラマと形容するに相応しいミステリの奥深さ
これは人間ドラマらしい。評判と共に聞こえてくる声に納得。つい踏み入った感想が流れてくるのもわかる作品。それほど人間は深いのだから。
私の愛した男は、別人でした。そんな衝撃から始まる作品。しかし、意外にも予告ほど不穏なモノではなく、たまたま空いてしまった穴に彼の人生は何が埋まっていたのか、それを静かに掘り続ける作業の作品なのだ。人間ドラマだからという意味ではなく、ある男のドラマなのだと受け入れる。そこになんとも言えない不気味な影と踏み入った表現によって、捻りの効いた味付けへと変貌している。多くは語らないが、よく使われるあの言葉が端的に表現できる。
他人の人生に踏み入ることへの危うさと好奇心が混ざり合いながら、その証明を手繰り寄せる様は時折スリリング。そして、もっていた温かさがまとわりついてくる。観た人たちは一緒に受け入れる。時に、無意識に刷り込まれた外野の言葉と共に。その見せ方が何とも上手く、恐ろしい所でもある。石川慶監督の凄い所は、ドラマの核は外さずとも、見える描写と台詞をバランス良く組み立てながら、分かりやすくも深く付いてくる所だ。光と影が何を映してくるのか、その余白を埋めていく型が何より上手い。
主演は妻夫木聡さん。『愚行録』も観たので、このタッグは何とも嬉しかった。ただ、安藤サクラさんが主演だと思っていたのも事実。どちらかと言うとテラーに近い。そして窪田正孝さん。今更ながら多彩な演技に驚かされる。今年はつくづく痺れることが多い。随所まで配置された豪華さが作品の奥行きを生む。またまた凄い演技力を見せる河合優実さんは本当に凄い女優さんである。一部キャラのディティールに濃淡が薄く勿体なく感じたが、それでも最後まで緊張を切らさない配置は見事だ。
たまたま今日、報知映画賞が発表された。作品賞を獲るのも納得である。そして、観た人でないと見えない真実を語りたくなるのもまた、ミイラ取りの様である。
静かにじっくり観たい
静かに淡々とストーリーが進む。
だけど退屈しないし、自分で推理する余白もある。
メインストーリーはとても良かったです。
けれど自分的には「在日」という言葉が差別用語として連呼されるのが気持ち悪くて意味がわからなかった。
それって差別されるべきことなのかな。
自分が自分である事を 果たしてちゃんと証明できるだろうか
人は産まれた瞬間から逃れられない運命を持っているもので、
それは決して己の力では書き換えれない。
それが運命
誰もがそこから自らの手で幸せを掴むべく毎日を過ごし生きていくものだが、
逃れられない運命を背負うことの苦悩やアイデンティティ(存在証明)を手放し
どこかにあるまっさらな空白のスペースに
全く別の自分の居場所を欲しているのかもしれない。
身近に考えると、SNSのなりすましや匿名投稿性もある意味同じかもな。。と。
「名前」「血族」「容姿」
目に見える確信で判断された結び付きよりも
「心」「愛」「情操」
目に見えない結び付きの方が大切なのかもしれない。
この映画でポイントになる
ルネ・マグリットの『不許複製』という絵画。
この絵画は描かれている人物の疎外感を表している。と言われているそうです。
ラストシーンの 妻夫木聡 さんの余韻は素晴らしくもゾッとした。
窪田正孝 さんと 安藤サクラ さんの空気感はさすがでした。
誰もがXになる可能性を抱えている。
大なり小なり差別や区別されて生きているから。
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