劇場公開日 2022年11月18日

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「原作と違うラストシーンに新鮮味を感じました。」ある男 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0原作と違うラストシーンに新鮮味を感じました。

2023年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

原作は既読です。
映画は原作と異なり、城戸が旅先のバーで客と話すシーンで終わっています。
まるで谷口大佑に成り済ましたような城戸。
このシーンに変えた脚本のアイデア、技アリと思った。
違和感を感じる人もいるかも知れないけれど、真面目でやや堅苦しい城戸。
城戸が「自分にも別の人生を・・・」
自分もそんな型に捉われない視点で生きられたら?
そんな柔らかな生き方もあるとしたら少し城戸を楽にしたように感じた。

この真面目な原作に、奥行きと引き出しが増えた感じです。
人間は真面目な城戸弁護士でさえ、別の人生を夢見たり、
別の生き方を選ぶ選択肢が残っている。
もしかしたら、新しい人生を生き直すことも不可能ではないかも知れない。

この考え方は必ずしもこの映画の趣旨とは違うけれど、生い立ちや出自から
自由になることも可能かも知れない。

宮崎県の小さな町で文房具屋を営なむ離婚したシングルマザーの
里枝(安藤サクラ)。
再婚した夫の谷口大佑(窪田正孝)の名前が偽名で、本人ではなかったという
驚きの事実が判明するところから物語りが動き出す。
いったい里枝の夫の大佑は誰だったのか?
里枝は弁護士の城戸に大介の身元探しを依頼する。

そうして紆余曲折を経て、ひとりの男の悲しい過去が明らかになる。

谷口大佑を名乗っていた「ある男」
その過去は非常に厳しい過去で、多分その境遇だったら
多くの人は戸籍を買い取ってでも別人に生まれ変わりたいと願うだろう。

でも後2〜3年したら、戸籍を買い取るなんて無理になると思う。
マイナンバーが普及して別人に成りすますなんて不可能だと思う。

戸籍ブローカーの柄本明。
大火災で殺した人物と入れ替わった「飢餓海峡」
また、別人に成り済ました「砂の器」にもよく似ている。
その2つより「ある男」はそんなに推理小説的な展開はしない。

不幸な男が、戸籍を買って生い立ちを変えてごく平凡な人生に
ルート変更した。
そして事故で死んだ。

「ある男」を探す弁護士の城戸。
城戸もまた在日3世から帰化して、アイデンティティに悩みをを抱えている。

平野啓一郎の言うテーマ。
「分人主義」
人は対峙する相手によって様々な自分が現れる。

自分(私)に何人の自分がいて、何人を演じ分けられるか疑問だが、
人は案外無意識に、その場その場で違う自分を演じ分けながら、
生きているのかも知れない。

特異な物語りが、ラストシーンを変えたことにより、
少し身近に感じられた。

琥珀糖
R41さんのコメント
2024年4月7日

この作品は考察が止まらなくなります。
原作と映像で多少異なるのは結構あることのようですね。
この作品を予備知識なく見たのですが、妻夫木君が登場したことで、この人が主役ではと思いました。安藤さんではなかったのです。
彼は義父から「在日」と軽く言われてしまうほどレッテルが張られていて、それがおそらく最初から、彼の心の中に澱を落としていきます。
それがこの事件を通して、戸籍ロンダリングとその理由が今の自分自身に当てはまることを無意識ながらも理解していくのでしょう。
妻役の真木よう子さんの登場にも違和感を覚えました。
彼女に関する妖艶な美しさを持つという一般的な認識があったからです。
作品は事実関係を明らかにしていくことに終始しますが、妻夫木君の家庭で起きる些細な会話などに変化が加えられます。
事件が解決して子供と楽しく遊ぶ父の顔に戻った妻夫木君でしたが、妻の携帯の着信に表情が固まります。
これが彼を決心させたのでしょう。
この作品は、戸籍ロンダリングというものの存在とそれを利用せざるを得ない人々の特別な背景を描きつつも、誰もが持つ否応のないレッテルからの脱出を、その方法で叶えられるとしたら「あなたはどうしますか?」と言っているように思いました。

R41
りかさんのコメント
2023年9月25日

こんばんは🐬
たくさんコメントしていただきましてありがとうございました😊
難しい作品だな、と思いました。

タラレバの作品、言い得て妙❣️
幸せになって欲しかったです🥲
そしたら、本作無いですが。

また観て考えようと思います。😣

りか
りかさんのコメント
2023年9月25日

こんばんは🍓
共感していただきましてありがとうございました😊

分人主義、初めて目にしましたが、なるほどと思いました。
自分を振り返って思い当たります。
城戸弁護士のラストをどう解釈するのか疑問です。🥲

りか
2023年9月19日

こんにちは☆琥珀糖さん
昨日、観たばかりです。
原作と違うラストシーンに
新鮮味を感じた。
原作は読んでないのですが
ラストの妻夫木聡演じる弁護士の城戸も、鏡のなかに違う自分を見ていたように
思いました★

美紅
ゆり。さんのコメント
2023年5月4日

琥珀糖さん、私は城戸の作り話は自分の人生に虚しさを感じているようで、とても印象的でしたが、その事で自分が少し楽になる、という視点も良いですね。そうやって自分を騙し騙しなんとかやっていくのか、それとも離婚して環境を変えるか、とにかく意識が少し外に向く感じに取れますね。

ゆり。
Uさんさんのコメント
2023年5月2日

共感を有り難うございます。
そうです。確かに、無意識のうちに、その場やその時の状況で、違う自分を演じ分けながら生きているのだと思います。改めて、そんな自分に気づいてみたい気もします。

Uさん
満塁本塁打さんのコメント
2023年5月2日

世界の🌎おきく へのイイねコメントありがとうございました。阪本監督のセンスがヒカリます。ただ今の時代、道端の犬のフンすら滅多に見れませんから、糞尿の描写【一瞬カラーあり】に神経が耐えられるかどうかにかかってますね。平気な人は平気。ただ今風の神経質な方は卒倒してしまうかもですね【大袈裟ですね】うんこ💩だらけの作品ですから。カップル👫デート❤️に向かないことは事実です。でもイイ作品でした。

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2023年5月2日

イイねありがとうございました😊飢餓海峡 と 砂の器 は日本の安定成長昭和50年【クーラー空調の貧乏人までの普及】以前では、個人的に好きな作品の両横綱です。分人主義は 普通 かなあと思いました。そもそも仕事中と私生活と言葉遣い自体私の場合違いますから。なかなか陰のある素晴らしい作品ですが、関西に住む方、関東に住む方、在日の方 それぞれで感じ方違うカモですねぇ。ありがとうございました😊

満塁本塁打