「親父という存在の希薄さよ」余命10年 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
親父という存在の希薄さよ
藤井道人監督でなければ絶対に観ることが無かったタイトルであるし彼が撮っていなければこの名作(恥ずかしいが他に相応しい言葉が無い)は生まれなかったであろうしそもそもがあまりにもベタで恥ずかしい(原作者の小坂流加さんには申し訳ないが)物語であるしそれに加えて野田洋次郎(RADWIMPS)が音楽で感動を上塗りするわけでどこから見ても「お涙頂戴」であることは間違いなく「ヤクザと家族」という傑作のあとによくもまあこの作品を手掛けたなぁという興味一点で鑑賞したがあまりにも真摯で純粋で嘘が無く良く出来ていたし相変わらず自然な会話のやりとりを大事にしていて今回も125分と長尺になる所以。職人映画監督として俺はやるんだという宣言を聞いた気がして「新聞記者」の監督という色から全力で逃れようとしているのかとも思ったり。彼がオファーを受けた際に出した条件は一年を通して撮影することだったそうだが主人公が回すハンディカムの四季点描を通して残された年月がぐるぐる駆け足で2周する描写は圧巻で恐れ入ったがどうしても職業柄「この1年目の桜並木と2年目3年目の桜並木を同じ日に撮影したんだろうなあ」と思って撮る側から観てしまう自分が情けない。撮影の今村圭佑がやはり素晴らしい。
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