裸足で鳴らしてみせろ

劇場公開日:

裸足で鳴らしてみせろ

解説

寡黙な青年ふたりの愛と欲望の行方を、偽りの旅と肉体のぶつかり合いを通して描いた青春映画。「オーファンズ・ブルース」がPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワード2018でグランプリを受賞した新鋭・工藤梨穂監督が、PFFスカラシップ作品として制作した商業映画デビュー作。

父の不用品回収会社で働く直己と、市民プールでアルバイトしながら目の不自由な養母の美鳥と暮らす槙。ふたりは美鳥の願いをかなえるため、直己が回収して手に入れたレコーダーで“世界の音”を記録することに。サハラ砂漠、イグアスの滝、カナダの草原など各地の名所の音を記録していく中で、互いにひかれながらも触れ合うことができない直己と槙。言葉にできない彼らの思いは、じゃれ合いから暴力的な格闘へとエスカレートしていく。

「オーファンズ・ブルース」の佐々木詩音が直己、「蝸牛」の諏訪珠理が槙を演じる。

2021年製作/128分/G/日本
配給:PFF、マジックアワー
劇場公開日:2022年8月6日

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(C)2020 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

映画レビュー

3.5音の映画であると同時に、足と手をめぐる映画

2022年10月11日
iPhoneアプリから投稿

 PFFスカラシップ作品を、久しぶりに観た気がする。躍動しエネルギッシュである反面、諸々ちょっとぎこちない。けれども、作品のぎこちなさが、主役のふたりのぎこちなさと相まって、絶妙な不穏さ、緊張感を生む。目を背けたくなるのに、見つめずにいられない。そんなざわつきを、ずっと感じていた。
 父の廃品回収業を手伝いながら、先が見えない日々をやり過ごしているナオミ。ふとしたきっかけから盲目の養母・みどりと暮らすマキと親しくなり、彼女の願いである世界旅行を、マキと共に果たすことになる。
 マキは謎に包まれている。有り体にいえば、嘘の匂いがまとわりついている。そして、みどりも、又そうだ。旅行の資金だと彼らに通帳を託すが、彼女の言うような額は残されていない。2人は身の回りの場所や物から、旅の音を作って彼女に届ける。彼女はテープの真実に気付いているのではないか。しかし、そんな様子は全く見せず、彼らの音に眼を細める。彼女の語る思い出は湖のように澄んでいるが、沼のように底が見えない。
 マキに「別の泳ぎ方」があると教えられ、ためらいながらもマキ(の世界)に惹かれていくナオミ。彼は、父親の束縛から逃れる決心をするが阻まれ、もがいた末に一線を超えてしまう。それが皮肉にも、元いた世界に彼を引き戻す結果となる。
 ナオミを引き戻すのは、女友達の手。一方マキとの日々は、彼らの足が印象的に描写されている。砂を踏みしめる足、ばたつく足、絡み合う足。(ちなみに、残されたマキは、手を負傷している。)足は本人の望むところへ移動させてくれるが、他者を移動させることは出来ない。手は他者との繋がりを生むが、それだけではどこにも行けないのだ。
 投げ出されたマキの足に、思いもよらない音が被る。ナオミは、自分の足でどこに向かうのだろう。暴力的なのに、悲しい幕切れ。ちょっと呆然としながら帰路についた。あの足と大きすぎる音が、脳裡にこびりついて離れない。工藤監督の次の作品が、待ち遠しい。

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cma

5.0音の映画

2022年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

いい映画には必ずいい音があるのだけど、音が褒められることはほとんどない。とてももったいないことだと思う。この映画を観れば、映画にとって音がいかに大切かわかる。音が想像力を刺激し、僕たちを映画の世界に連れて行ってくれる。この物語は、音の持つ「想像力を刺激する」力に着目している。
目の見えなくなった母のため、男は古い録音テープを持って世界中を旅して入院している母に送る。台湾やイグアスの滝、サハラ砂漠、アンテロープキャニオンなど。しかし、本当は彼は街を出ていない。砂漠の音は陸上グラウンドの砂場で、イグアスの滝の音は近くの滝でといった風に、工夫して世界の音を作り上げていくのだ。観客はそのことをわかっているが、テープから聞こえてくる音に耳を澄ますと、たしかにそこには砂漠が広がり、巨大な滝があるかのように思える。テープの音のシーンになったら目をつぶってみるといい。世界中を冒険している気分になれる。
映画なのに、目をつぶった方がいいシーンがある。これはすごいことだ。

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杉本穂高

2.5男二人のじゃれあいの繰り返し。

2023年7月19日
PCから投稿
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tochi06

3.5恋心

2023年4月7日
iPhoneアプリから投稿

 2人の青年の、友達になってからの段々と特別な思いに変わっていく様子が切ない。優しく触れたいが、気づかれてはいけないと思うのか、照れ隠しのように激しくじゃれ合う。まるでケンカのように。お互いに想っているのに決して踏み込まない。BLも多い近頃、逆に新鮮。
 直巳の父親、ちょっと良くないですよね。息子大事はわかるけど、もう大人なんだから、もう少し自由にしてあげて。それに直巳の貯金からカードで勝手にお金を引き出すなんて、ありえない。子離れしなくちゃ。そんなことがなかったら、直巳があんな犯罪しなくて済んだのに。
 別々の道に分かれていった2人のラストが印象的。

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アンディぴっと