名もなき歌

劇場公開日:

名もなき歌

解説

実際にあった事件をもとに、赤子を奪われた母親の悲哀と絶望や事件を追う新聞記者の苦悩と葛藤を、モノクロ&スタンダードの画面で描いたサスペンスドラマ。ペルーの女性監督メリーナ・レオンの長編デビュー作で、カンヌ映画祭監督週間で上映されたほか、アカデミー賞の国際長編映画賞に向けたペルー代表作品に選出された。1988年、政情不安に揺れる南米ペルー。貧しい生活を送る先住民の女性ヘオルヒナは妊婦に無償医療を提供する財団の存在を知り、首都リマの小さなクリニックを受診し、そこで無事に女児を出産する。しかし、直後に院外へと締め出され、生まれたばかりの娘を何者かに奪い去られてしまう。夫とともに警察や裁判所に訴えるが有権者番号を持たない夫婦の言うことは誰も取り合ってくれない。泣きながら新聞社で窮状を訴えるヘオルヒナから事情を聴いた記者のペドロは、事件を追って権力の背後に見え隠れする国際的な乳児売買組織の闇へと足を踏み入れる。

2019年製作/97分/ペルー・フランス・アメリカ合作
原題:Cancion sin nombre
配給:シマフィルム、アーク・フィルムズ、インターフィルム
劇場公開日:2021年7月31日

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3
  • 画像4
  • 画像5
  • 画像6
  • 画像7
  • 画像8
  • 画像9
  • 画像10

(C)Luxbox-Cancion Sin Nombre

映画レビュー

4.0得体の知れない闇の深さ

2021年7月30日
PCから投稿

モノクロとスタンダードというシンプルながら陰影深い映像手法によって紡がれる本作は、序盤こそ人里離れた地域で暮らす先住民の日常が淡々と描かれるものの、中盤からはまるで不条理の檻に閉じ込められたかのような社会の不気味さが増幅する。メインとなるのは一つの事件。お産のために受診したクリニックと生まれたばかりの赤ん坊が忽然と姿を消し、母親がどれだけ状況を訴えても警察や役所は取り合ってくれない。そんな中、一人の寡黙な新聞記者だけが切実な叫びに耳を傾けるのだが・・・。諦めずに扉を叩き続ける母親と、核心へにじり寄っていく記者。二つの車輪が回転することで事態はようやく進み始める。しかしそれで全てのモヤが晴れたことにならないのが本作の特徴であり、それは当時の闇に満ちた社会状況の現れなのかもしれない。なぜこんな事件が起きたのか。その背景には何があったのか。終幕後、ペルーの現代史について学びを深めたくなる一作だ。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
牛津厚信

4.0少数派が押しつぶされていく

2024年2月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

民族的、性的に少数派の人間や、貧しい者など、人が集団を形成したときに弱者に位置してしまう人々の無力感を描いた作品かなと思う。

富めるものはさらなる富を求めて弱者から奪う。マジョリティに属する者は自分と違う存在を排除しようと圧力をかける。
どちらも本当は、そんな事をしていいパワーは持っていないはずなのに、それをしてもいいと勘違いする。
スーパーヒーロー映画で「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉が出るが、弱者を蹂躙しようとする作中の姿の見えない者には大いなる力なんてない。ないにもかかわらずそれを行使しようとするならば、大いなる責任が伴うはずだが、もちろんそんな気付きはない。
虐げられる弱い人々がどうして黙って蹂躙されることを受け入れると考えられるのだろうか。
混迷の不安定な時代だからこそ先を考えない行動に出るのかもしれない。

地平線が見えるショットが多いのが印象的だ。カメラアングルが低いのだろうか。
いくつかのショットは明らかに意識して地平が入るように撮っていたと思うが、周りに建物がないシーンが多いせいかもしれない。
モノクロの映像なので、黒い地平と白い空にくっきりと分かれる。作中の出来事に対して暗くなりすぎない雰囲気で作っているように思えたが、割れた地と空は不思議な物悲しさを醸し出した。

高い娯楽性とは言えないけれど、アーティスティックな雰囲気はそれだけで中々良かった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
つとみ

1.5この映画は二回目だった。また、消された?

2023年11月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
マサシ

3.0サスペンスとしては期待外れですが・・・

2023年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

生まれたばかりの子供を誘拐された母親とその事件を取材する記者の物語。

実在の事件を元にした映画のようですね。初めてのペルー映画です。
サスペンス色が強い作品・・・と期待しての鑑賞でしたが、社会の貧困にスポットを当てた社会派ドラマ。BGMも殆ど使われておらず、全編モノクロ映像を使いペルーの貧困層の苦悩、子供を奪われた母親達の悲哀を描き出した手法は見事でした。

映画として万人受けはしないでしょうし、高い評点は付けにくい作品だと思いますが、とても興味深い作品でもありました。

私的評価は普通にしました。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
よし
関連DVD・ブルーレイ情報をもっと見る