ムーンライト・シャドウ

劇場公開日:

ムーンライト・シャドウ

解説

吉本ばなな初期の名作「ムーンライト・シャドウ」を、小松菜奈主演で映画化したラブストーリー。さつきと等は導かれるように出会い、恋に落ちる。等の3歳年下の柊と、柊の恋人ゆみこをあわせた4人は意気投合し、多くの時間を共に過ごす。時には、ゆみこが気になっているという「満月の夜の終わりに死者ともう一度会えるかもしれない」という不思議な現象「月影現象」についても語り合うなど、4人は穏やかで幸せな日々を送っていた。しかし、ある時、等とゆみこが死んでしまう。突然の別れに打ちひしがれ、悲しみに暮れるさつきと柊。愛する人を亡くした現実を受け止めきれないさつきと、そんな彼女を心配する柊。それぞれの方法で悲しみに向き合おうとしていた時、2人は不思議な女性・麗と出会い、それをきっかけに少しずつ日常を取り戻していくが……。原作は1989年に刊行され、世界30カ国以上で翻訳されたベストセラー「キッチン」に収録された短編小説。さつき役を小松、恋人の等を映画「his」や連続テレビ小説「エール」の宮沢氷魚が演じる。監督は、「Malu 夢路」などで知られるマレーシア出身のエドモンド・ヨウ。

2021年製作/92分/G/日本
配給:S・D・P、エレファントハウス
劇場公開日:2021年9月10日

スタッフ・キャスト

監督
原作
吉本ばなな
脚本
高橋知由
製作
狩野隆也
細野義朗
大山義人
村上正樹
プロデューサー
服部保彦
大木宏斗
企画プロデューサー
加藤伸崇
アソシエイトプロデューサー
加藤優
撮影
コン・パフラック
照明
大庭郭基
録音
川本七平
美術
布部雅人
スタイリス
阪上秀平
へアメイク
寺沢ルミ
編集
賢毅
音楽
トン・タット・アン
コラボレーションソング
小袋成彬
助監督
滝野弘仁
キャスティング
神林理央子
ラインプロデューサー
鈴木徳至
制作担当
三村薫
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(C)2021映画「ムーンライト・シャドウ」製作委員会

映画レビュー

4.0小松菜奈の現時点での代表作

2021年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

執筆したインタビューに詳細は記述させて頂いているが、小松菜奈の女優としての魅力が存分に詰まった作品だ。7~8年前、「渇き。」の撮影現場で、中島哲也監督の陣取るディレクターズチェアの真横で大粒の涙を流しながらワンワン泣いていた少女が、素晴らしい女優への成長していることに感慨深い思いを抱かざるを得なかった。そんな小松の魅力を引き出したのは、エドモンド・ヨウ監督であり、相手役を演じた宮沢氷魚。有名原作ではあるが決して派手な作品ではない。だが、喪失の痛み、悲しみから如何に立ち直っていくかを丁寧に、そして優しく描いている。

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共感した! 3件)
大塚史貴

4.0小松菜奈の“素の美しさ”をとらえた宝石のような映画

2021年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

幸せ

萌える

意外にも、小松菜奈にとって長編映画単独初主演だそう。モデル出身の恵まれた容姿に、どこかはかなげな存在感、ポップなラブコメのヒロインからエッヂの効いた役まで幅広くこなす豊かな演技力により、2014年の「渇き。」以来コンスタントに年2~3本のペースで大作や話題作に起用されてきた。観客が惚れるくらい女優を美しく撮るのは(特に恋愛物では)常道だが、過去作での小松はメイクアップと照明によりきちんと造形された美として映画の中に存在していた印象がある。 だが「ムーンライト・シャドウ」は、何者でもない20代前半の女性が恋に落ちるもストーリーの半ばで恋人と死別してしまい憔悴する(そのためメイクもほとんどしなくなる)という役どころに加え、被写界深度を浅くして背景をぼかし被写体の顔をじっくり映す撮影スタイルも相まって、小松の素の美しさをとらえることに成功している。マレーシア出身のエドモンド・ヨウ監督とタイ出身の撮影監督コン・パフラックによるアジアコンビが、吉本ばななによる日本発の物語と情景を外国人の感性で再構築することにより異化効果が生まれた点も、ファンタジックな要素を含む世界観に奏功していると感じた。 小松のこれまでの代表作に比べると、小品の味わいではあるが、それがまた心の片隅にいつまでも残るような愛おしさにつながっている。

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共感した! 9件)
高森 郁哉

0.5月影現象で会ってみたい人。 ヒトラーと毛沢東かなぁ。

2024年6月29日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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共感した! 2件)
When I am 75♥️

4.0喪失と再生の物語

2024年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

少し難しさのある作品。 失恋を経験したことのある人なら、失恋というのは一つの死だと思うかもしれない。 それが失恋でなくても、実際にその人が亡くなってしまえば、それはもちろん言葉通りだが、もう何もできないということが辛さに輪をかけるのだろう。 この物語の「喪失」はそうして起きてしまった。 その「再生」を「死者との邂逅」という奇跡的な出来事によって叶えようとしたのがこの物語の目的となっている。 ミステリアス感満載の登場人物ウララ。彼女が案内人となり、満月の明け方のまづめ時に死者と邂逅できるという「月影現象」にかけてみるふたり。 ヒイラギのいつもの居眠りによってヒトシがユミコを送っていく途中でふたりが交通事故死したことが、ヒイラギの自責の念となっている。 彼は当初月影現象に参加しないと言った。 しかし当日、邂逅できたのはヒイラギで、サツキには鈴の音だけしか聞こえなかった。 作品の描き方の特徴に、感情をストレートに表現しないことで、登場人物たちの考えていることがよくわからないようになっている。 これがこの作品の難しさの要因だろう。 なぜサツキがヒトシと邂逅できなかったのか? それはおそらく、サツキが彼がいなくなったことを実感できていないし、別れる決心をしていなかったからだと推測した。 そして、最後にサツキは一つの答えを導きだす。新しい人生の歩みをし始めることだ。 「私はここから離れる。止めることのできない時間の流れがある。また会える人、二度と会えない人」 「幼かった当時の私と、当時の彼はいつもそこに一緒にいる」 サツキが腹を決めたとき、見えたヒトシ。 奇跡は、自分の考え方ひとつで起きる。そこに至るまでの苦しみをウララは「風邪」に例えた。「人生で起きた風邪」 ヒイラギはユミコの服を毎日着て、そうすることで自分の心の中を確認して、そして受け入れることができていたのだろう。それが彼が邂逅できた理由だ。 サツキも感情を話さない設定なので、そこにあるはずの「なぜ」が登場しないことで作品が難しくなる。 何度も彼女の走るところが出てくるが、それは過去に戻りたい衝動であり、何もなかったことにしたい、または忘れたいという葛藤だ。 サツキの感情を行動で示すことがこの作品が表現したかったことだろう。 しかしその裏にあるご都合主義的なプロット。これを良しとしない視聴者も相当数いるように思う。それを難しさによって中和しようとしたように感じてしまうのだ。 タイトル通り、最初にあるのが「月影現象」 その奇跡は死者との邂逅。そのために行われる謂れについてのトーク。 二組のカップルとその相違。 そして鈴というありがちなアイテム。 感情表現しない登場人物たち。特にミツルの話を聞きに集まった人たちの顔にはどこか不自然さを感じた。当然そのように設定されているのだろう。 ミツルの世話人のウララは一般的な人物だろうが、黙々と、または上の空でパンを食べる二人には、彼女がいつ帰ったのかわからなかっただけなのだろう。画面上突然現れたり消えたりしている。 それを第三者的視点で撮るので……そう見てしまう。 しかし多少考えることができたので、良しとしよう。

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