ムーンライト・シャドウ
劇場公開日:2021年9月10日
解説
吉本ばなな初期の名作「ムーンライト・シャドウ」を、小松菜奈主演で映画化したラブストーリー。さつきと等は導かれるように出会い、恋に落ちる。等の3歳年下の柊と、柊の恋人ゆみこをあわせた4人は意気投合し、多くの時間を共に過ごす。時には、ゆみこが気になっているという「満月の夜の終わりに死者ともう一度会えるかもしれない」という不思議な現象「月影現象」についても語り合うなど、4人は穏やかで幸せな日々を送っていた。しかし、ある時、等とゆみこが死んでしまう。突然の別れに打ちひしがれ、悲しみに暮れるさつきと柊。愛する人を亡くした現実を受け止めきれないさつきと、そんな彼女を心配する柊。それぞれの方法で悲しみに向き合おうとしていた時、2人は不思議な女性・麗と出会い、それをきっかけに少しずつ日常を取り戻していくが……。原作は1989年に刊行され、世界30カ国以上で翻訳されたベストセラー「キッチン」に収録された短編小説。さつき役を小松、恋人の等を映画「his」や連続テレビ小説「エール」の宮沢氷魚が演じる。監督は、「Malu 夢路」などで知られるマレーシア出身のエドモンド・ヨウ。
2021年製作/92分/G/日本
配給:S・D・P、エレファントハウス
スタッフ・キャスト
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2021年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
執筆したインタビューに詳細は記述させて頂いているが、小松菜奈の女優としての魅力が存分に詰まった作品だ。7~8年前、「渇き。」の撮影現場で、中島哲也監督の陣取るディレクターズチェアの真横で大粒の涙を流しながらワンワン泣いていた少女が、素晴らしい女優への成長していることに感慨深い思いを抱かざるを得なかった。そんな小松の魅力を引き出したのは、エドモンド・ヨウ監督であり、相手役を演じた宮沢氷魚。有名原作ではあるが決して派手な作品ではない。だが、喪失の痛み、悲しみから如何に立ち直っていくかを丁寧に、そして優しく描いている。
2021年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
意外にも、小松菜奈にとって長編映画単独初主演だそう。モデル出身の恵まれた容姿に、どこかはかなげな存在感、ポップなラブコメのヒロインからエッヂの効いた役まで幅広くこなす豊かな演技力により、2014年の「渇き。」以来コンスタントに年2~3本のペースで大作や話題作に起用されてきた。観客が惚れるくらい女優を美しく撮るのは(特に恋愛物では)常道だが、過去作での小松はメイクアップと照明によりきちんと造形された美として映画の中に存在していた印象がある。
だが「ムーンライト・シャドウ」は、何者でもない20代前半の女性が恋に落ちるもストーリーの半ばで恋人と死別してしまい憔悴する(そのためメイクもほとんどしなくなる)という役どころに加え、被写界深度を浅くして背景をぼかし被写体の顔をじっくり映す撮影スタイルも相まって、小松の素の美しさをとらえることに成功している。マレーシア出身のエドモンド・ヨウ監督とタイ出身の撮影監督コン・パフラックによるアジアコンビが、吉本ばななによる日本発の物語と情景を外国人の感性で再構築することにより異化効果が生まれた点も、ファンタジックな要素を含む世界観に奏功していると感じた。
小松のこれまでの代表作に比べると、小品の味わいではあるが、それがまた心の片隅にいつまでも残るような愛おしさにつながっている。
2023年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
■今作は、「渇き。」で度肝を抜かれた小松菜奈さんと、「his」でビックリした宮沢氷魚さんのW主演という事で、観る気満々だったのだが、私が当時影響されており、且つ私がこの映画サイトを鑑賞記録用に使っていたのを、”レビュー、投稿してみようかな‥”と思わせてくれた素敵なレビューを挙げられていた方の”まあ、ちょっと、惜しい感じだった・・。”と言うコメントを見て、観賞を見送った作品である。
だが、フライヤーはしっかりと、取って置いた・・。
◆感想
・確かに鑑賞すると、原作の設定は残しながらも、独特のアーティスティック且つ不思議なエドモンド・ヨウ監督が作り出した世界観は、評価が分かれるな・・、と思った作品である。
・近作で言うと、中国のチャン・リュル監督の「柳川」を思い出させるテイストの作品であった。
ー 「柳川」は、個人的にはジョン・レノン&オノ・ヨーコの名曲”oh my love"が印象的な、好きなテイストの作品である。-
・今作での、小松菜奈さんの立ち居振る舞いや、唯一無二の”凄い目”(喜怒哀楽を、目で全て表現する。)は健在である。
ー それは、冒頭のさつき(小松菜奈)の憔悴した目からの、等(宮沢氷魚)との恋を紡いでいく時の輝く目である。-
<マレーシア出身のエドモンド・ヨウ監督が紡ぎ出す、不可思議な世界観は、原作と通じる所もあると思うし、面白くも感じた部分は多い。(それは、偏に小松菜奈さんの唯一無二の”目””であり、中性的な人物を演じさせたらこの人、宮沢氷魚さんの存在感である。)
アジアの若手監督が、日本の名作短編を描いたら、こういうふうになるのかな、と思った作品でもある。>
2022年5月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
この作品の主軸は個人的には、ヒロインのさつき(小松菜奈)が恋人の等(宮沢氷魚)と過ごした尊い時間から等の死を受け入れるまで。等の弟の柊(佐藤緋美)が恋人のゆみこ(中原ナナ)の死を受け入れるまで。時間の流れとともに変化していく細やかなさつきと柊の感情を四季のように描いた作品だと思いました。
状況とは裏腹に淡々と進む部分もあり少々違和感もありましたが、特殊な設定でもあるのでそこはご愛嬌として鑑賞しました。
この作品を鑑賞して感じたのは、誰しもが大切な誰かを失った時言いようもないほどの悲しみに襲われ、そして不確かな何かに縋りたくなるということ。人は心では分かっていてもどれだけ非現実的でも一縷の望みに期待し諦められない。
悲しみから逃れるために、これが現実であると忘れるために忙殺されようとしたり、しきりに何かに没頭します。
呼吸をして生きているのにまるで生を感じられないさつきと柊の静かな悲しみがそこにはありました。
昔から幸せにはいつでも悲しみが付き纏い、幸せは一つ線を消せば辛さに変わると言いますね。
人間が目を逸らしたい悲しみからもがき苦しむ様は現実でもありえること。
この作品ではそこにスポットライトを当てて描いていたように感じました。
原作にあまり沿っていないため実写化は別物として観ることをおすすめします。
小松菜奈さんのファンでなければ見飽きてしまうかも。
小松菜奈さんと宮沢氷魚さんの共演自体は非常にエモーショナルでその点では良かったです。