茜色に焼かれるのレビュー・感想・評価
全186件中、21~40件目を表示
観ていて辛い。
主人公(尾野真千子)は上級国民に大黒柱を交通事故で殺され、金銭的に困窮しているのに賠償金を受け取らず、夫の愛人の子供の養育費も義理の父親の介護費用まで負担している。そこをコロナが襲った。おまけに周囲を嫌な連中ばかりに囲まれている。日本社会はここまで弱者に冷たいのだろうか?出てくる男は皆揃いも揃ってクズばかりだが、いくらなんでも誇張して描かれていないか?とにかく観ていて辛い。尾野真千子は適役、彼女の演技力はいつ
もながら安定しているが、脇を固める2人(ケイ役の女優と純平役の子役)は実に良かった。純平には明るい将来が待っていて欲しいと思った。ただ、長過ぎる。
はたして狂っているのは彼女か、それとも男ども(社会)か。
主人公は言う、こんな社会でまともに生きていたら死ぬか、気が狂うか、宗教に入るかだと。
彼女は死んでもいないし、宗教にも入っていない。ならば彼女は気が狂っているのだろうか。
主人公田中良子は夫を事故で亡くし、女手一つで息子を育てている。そればかりか義理の父の介護施設の費用を賄い、あげくに夫の愛人の子供の養育費まで支払っている。
彼女は金が有り余っている資産家などではない。パートの仕事とは別に風俗で働きながらこれらの費用を賄っているのだ。
これはもはや正気の沙汰ではない。何故に彼女はここまでするのか。死んだ夫への当てつけであろうか。それともやはり気が狂っているのだろうか。
芝居が得意な田中良子(この国で平均的ともいえるこの名前がまた皮肉が効いてる)。本編では明らかに彼女が芝居をしているとわかるシーンがある。加害者側の人でなし弁護士と話しているとき、風俗店店長の暴言に無理に話を合わせているとき、明らかに愛想笑いを浮かべる。それはまるでこの世の理不尽さに散々打ちのめされたあげくに彼女が身に着けた自己防衛手段とも思えた。
夫を事故で失ってからというもの彼女はこの世のあらゆる理不尽さに誰よりも憤ってきたはずだ。だが、彼女は感情をあらわにせず平然と生きてきた、というより平然と生きている芝居を演じてきた。
誰よりも怒りをあらわにしたい彼女は息子に対してルールを守ることが大切だと諭す。芝居をして自らの本心を偽らなければ自分を抑えられず自分がルールを破ってしまうことを自覚しているのであろう。
そうやって芝居を続け自らを偽り続けたためか、彼女は自分の本当の気持ちがわからなくなってくる。それは中学時代に思いを寄せていた片思いの相手に再会したことで顕著となる。
自分の気持ちに戸惑いながらも、女としてこの気持ちは本物だと恋に突っ走る良子。しかしそんな彼女の思いはあっけなく踏みにじられてしまう。
今まで自分の気持ちを押し殺してきた彼女のたまりにたまったマグマが遂に噴き出す時が来た。この時、彼女は息子に対して今だけは母親とかいう立場は無しにしてくれと言う。
子を持つ「母親」故に自分を押し殺してきた彼女がついに一人の人間として自らの感情をあらわにする瞬間だった。
不倫相手をボコボコにしてルールを破った彼女だが、皮肉にもヤクザの顧問弁護士もしていた人でなし弁護士のお陰で事なきを得る。
女性が生きづらい社会。災害がひとたび起きれば真っ先に被害を受けるのは弱い立場の人間だ。今回のコロナ禍でも女性の自殺者数が際立っていた。男が作り上げてきた社会がいかに女性にとって生きづらい社会であったか。
こんなご時世でも女は最終的に体を売れるが俺たちは無理だという夫のバンド仲間のゲスな言葉がまさに象徴的だ。
彼女は言う。客の相手をすることは毎回自分が殺されているような気分だと。平然としているていの芝居で、あらゆるこの世の理不尽から気をそらさなくては彼女は気がくるってしまっていただろう。
まさに真正面から受け止めれば車に跳ね飛ばされていたほどに。そう、彼女の芝居は自己防衛なのだ。
今の社会で女性にとっての理不尽を一身に背負いたくましく、そしてしぶとく生きる良子の姿を通して逆説的にこの社会の理不尽さを描いた佳作。
ちなみに以前見送りとなった入管法改正案が今国会で恐らく通るだろう。外国人の人権を軽視する国家は自国民の人権も軽視するということを忘れてはならない。
映画鑑賞代金1550円(チケット屋で購入)、交通費往復560円
全削除されたレビューを復元。
虫ケラ
私が良子だったら、夫に支払われる保険を貰う。
私が良子だったら、愛人の娘の養育費は払わない。
私が良子だったら、義父の老人ホーム費は払わない。
私が良子だったら、ヤリモク男に引っかからない。
そんな事を思う私は、単純に運良くお金に困らないで生きられただけなのかもしれない。運良く人に恵まれただけかもしれない。でも、もしかすると来年には良子と似たような選択をするかもしれないし、選択を迫られるかもしれない。簡単に自己責任の論調が流れてくるけれど、100人いたら100人の事情がある。それに、日本中に良子の様な女性が増えたらシンプルに悲しく辛くない?説教とかもういいからさ、社会が何とかしないと。社会って一体なんなんだろう?
尾野真千子さん、素晴らしい演技でした。
そんな事ある?っていうのがいつも私の人生にはあるんです
なかなか夜がこない
黄昏の茜空
今、
自分には
生きる理由がある
それだけで
いいのかもしれない。
そんな気持ちになる作品。
おすすめ。
辛かったと思う
尾野真知子さんの凄さ。
尾野真千子さんの演技力にやられる作品です。
壮絶な人たちが集まってます。
自分のために怒らないのに
人のために怒る人たち。
2人は出会えて話せてよかったですね。
最後に女の子は自ら命をたってしまいます。
救われる時間がずっとなかったけど
その先にあの家族へ光が灯されて欲しいです。
何を伝えたかったかあまりわかりませんでしたが
とにかく尾野真千子さんにやられました。
すごく感情が伝わってくる作品でした。
まぁ、頑張りましょう。
どんな時でも言っていた言葉、どんな気持ちが込められていたのでしょうね。
わたしは、どんなことがあっても負けるなよって言われてる気分になりました。
女優業にすべてを捧げる縁起に圧倒された
尾野真千子の迫真の演技にただただ圧倒された…
女優業にすべてを捧げていないとここまで演じられないと思う。
彼女以外ではここまでこの役にはまらなかったであろう。
生きていく意味を考えさせられるストーリーであった。
正義感・使命感が強い方にはこの世の中を生きていくのは難しいと感じた。
私は、人間にはもともと生きる意味なんてないと思う。
人間以外の生き物を見ても分かる通り、人間くらいがそのようなことを考える。
もう少し楽に生きていくべき。最後に自分の人生が楽しかったと生きられればそれで良いのではと思う。
ただ、生き方や考え方は人それぞれであり、どう生きるかどう死ぬかもその人の自由であると、
この映画を観て改めて考えさせられた。
理不尽な世界での生き方をおしえてくれる
クズな男のオンパレード。クズさを表現するための演出がちょっと過剰で...
見応えあり!
カラマーゾフの兄弟
この監督の映画は映画レベルではない
この監督の映画は2本観たが、映画レベルではない。テレビドラマレベルだ。とってつけたようなセリフ、奇妙、奇天烈なキャラクター。結局、女優を起用して人肌脱がせたら、それで客がつかめる、という程度の話題性でなんとかやっていけてるだけ。
オダギリジョーがちょい役でも、出たかったの!?
尾野真千子は、河瀨直美監督の作品と見比べてみたら…。
映画撮ってるよ的な、映画が一番質が悪い。まだ、完全に現実離れしたエンタメ映画のほうがはるかにまし。こういう、エセ映画を売り出すのは本当にやめて欲しい。
観て5分でわかる、チープな映画。
情念、ワンシーンごとの生々しさ、そして美しさ
旅行道中の電車内(アマプラ)で鑑賞。
どんなに厳しい社会の不条理を受けてもなお、耐えてゆく母(女性)の逞しさ、時折見せる脆さ、儚さを表現した映画でした。
美しい音色と、常に「茜色」をシーンの中に織り交ぜること、うちに秘めたる思いの強さを感じずにはいられない一作でした。
尾野真千子が圧巻でした
ずっと見たかった作品をようやく見れました。
やっぱり見るべき作品でした。
世の中は弱者にはとことん冷たく、
毎日不条理を押し付けられ
底辺を必死にもがきながら生きている人たち。
田中親子もさることながら、ケイちゃん、風俗店店長みんないい味だしてました。
中学生の純平を演じた和田庵くん、思春期の難しい不安定な状態を演じ切っていてお見事でした。
そして、この作品、田中良子役は
尾野真千子さん以外は考えられないと言えると思います。
居酒屋で自分の溜まりに溜まった胸の内をケイちゃんに打ち明ける長台詞の泣きの芝居は最高でした。
ケイちゃんこと、今注目株の片山友希さんも
あの薄幸出しまくりの容姿もそうですが、
とてもキュートな一面もあり、いいお芝居されてました。
永瀬正敏さんは当たり前なので何も言いませんが何だってできるんですから。あんな風俗店店長いますよね。
でも陰の立役者はなんといってもオダギリジョーだと思うんです。セリフも特になく、ほんの一瞬の出演シーンなのに、あれだけのキャラ付けとどういう人間だったかわかるってすごいです。
そして、同じ母親として思うのが
大好きな人がいなくなったとしても、
その血を受け継いでいる男の子がいるって
本当に嬉しいことだと思うんです。
読書好きで正義感が強く、母ちゃんと父ちゃんを理解しようと努力してる…そんな息子が誇らしいんですよね。彼がいるから自分も生きていけるんです。
そんな田中親子にエールを送りたくなりました。
純平は母ちゃんを守るきっといい男になるね。
勝手ながら、、、の評価です
社会に立ち向かい、まっすぐな母の姿を見て育つこと
ちょいちょいリアリティにかける
母ちゃんは、負けない、と言うけれど!
2021年。石井裕也・監督・脚本・編集。
力強くメッセージ性のある映画でした。胸撃たれました。
コロナ禍で居場所を失い貧しさに拍車のかかる人々。
田中良子と息子の純平(和田庵)の悪戦苦闘の日々が描かれます。
母親を演じた尾野真千子は、「山路ふみこ映画賞」女優賞を受賞した。
「死ぬ気でやる」と石井監督に告げた尾野真千子。
すごい熱量、迫力。
多面性を持つ母親・田中良子(リョーコ)を表現豊かに演じ切りました。
リョーコは7年前に夫(オダギリジョー)を、交通事故で亡くした。
暴走してブレーキとアクセルを踏み間違えた運転者は、アルツハイマーの老人で、
元官僚の上級国民だった。
特異なのは良子が保険金を全く受け取らなかったこと。
映画はその交通死亡事故を起こした老人の、
盛大な葬儀に田中良子が参列したシーンを写す。
「あなたが現れるなんて、嫌がらせではないですか?」
「なんなら、警察を呼ぶ選択肢もあるんですよ」
加害者の息子(鶴見慎吾)の言い草だ。
リョーコは夫を殺した老人の顔を心に刻みたいだけだ。
(私は加害者の家族にも重大な過失と責任があると思う。)
誰もが「池袋暴走事件」を連想すると思います。
多分石井裕也監督がこの映画を撮るキッカケは「池袋暴走事件」だったと思います。
理不尽な社会で、シングルマザーは虫けら。
夫のいない女の立場は弱い。
一番最初に切られるのは弱者。
リョーコと純平そしてケイちゃん(片山友希)に
《世の中の理不尽と不条理》が襲いかかる。
ケイちゃんは生まれつきの糖尿病の風俗嬢で、父親から性的虐待を受け続けていた。
リョーコの経営していたカフェはコロナ禍で傾き、
花屋のバイトでは生計をたてられずに、夜は風俗で働いている。
義父が脳梗塞で倒れて、施設費用のうち10万円を負担しているし、
夫が浮気して生ませた娘の養育費6万円も負担している。
花屋の時間給・・・・930円。
風俗の時間給・・・3200円×6時間=19,200円。
(風俗店での描写は赤裸々です。客が風俗嬢をいかに見下すか?よく分かる。)
…………俺を喜ばせないなら、高い金払ってんだから、責任とって、死ね!!………………
風俗は男たちのストレスの捌け口。
そんな3Kの職場でケイちゃんは職業病に罹患する。
市営団地の家賃・・・・27,000円。
これを純平の中学校の友達が、
「税金をかすめてる」と言う。
公営住宅の住民はそんな蔑みの目でみられるのか?
…………まったく思ってもみなかった…………………
観てて一番、辛かったのは純平が友達に虐められるシーン。
今の子ってこんなに荒んでるの?
病んでいるの?
弱者をいたぶる描写に慄然とする。
友達の行動は辛くて書けないし、ネタバレでも書けない事件もある。
上級国民がずる賢く、
「すみません」と謝る言葉を知らない。
リョウコはただ一言、「すみません。申し訳ない」が聞きたかった。
上級国民は下級国民に頭を下げて謝らない。
夫(オダギリジョー)の口癖は、
『TOPのTOPをとってやるぞ!!』
…………純平はその可能性を秘めている……………
(嬉しそうに空を見上げて笑う尾野真千子が可愛い)
ピアノ曲がいつも優しく寄り添うように流れる。
風俗店店長の永瀬正敏。
清濁併せ呑む人間。
夫(オダギリジョー)も清濁併せ呑むひとり。
(好きだなぁ)
世の中の《不条理》にめげず、信念を貫く《田中良子》が見る茜色の空。
母ちゃんを世界一と思ってる純平のひと言・・・・
2人で並んで歩くだけで母ちゃんも純平も・・十分シアワセだ。
どんなに理不尽な世の中でも、生きて、生きて、生き抜いて、
リョーコは希望の種を蒔く。
一粒の希望でも、希望は希望だ。
過去鑑賞
世の中の理不尽さが染みる
尾野真千子さんはNHKの朝ドラ主演されたのをきっかけに良い女優さんだなと思っていました。
こんなじり貧の状況に立たされて自分ははたしてこんなに器量に生きれるかなと考えさせられました。
ストーリーもとても物悲しくでも、たいていの映画は2度鑑賞しないと内容を把握しきれない私でも1度で入って来ました。息子さんがいい子なのが唯一の救い。
そしてケイちゃん役の女優さんもとても良かった。
ケイちゃんの必死の訴えが最後良子に響いて良かった。
茜色の夕日の最後の親子のシーンも良かった。
全186件中、21~40件目を表示