茜色に焼かれるのレビュー・感想・評価
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本年度ベストワン候補
早くも今年度日本映画の、ベストワン候補の、作品が届けられました。
心意気を持った映画人によって作成され、技術力のある映画人に撮影され、稀代の映画人によって演じられた、令和を生きる全ての日本人のための映画です。冒頭から一気に心臓をぐっと掴まれ、エンドロールまで疾走させられました。なにしろ、2時間24分、無駄なカットがワンカットも無いのです!
今までどちらかと言うとその筆致を抑制してきた石井監督ですが、この映画では見事に自身を出し切り、極限まで突き詰めた映像表現で、観るものの魂を抉り続けます。
主人公を始め、ほとんどのキャストがマスクをして撮影される映画を初めて見ました。コロナ禍をいち早く織り込んだ監督の感性に驚きしか有りません。リアルさがハンパないのです。
主演の尾野真千子さんが素晴らしいの言葉で収まりきれない熱演です。内臓を裏返すくらいの演技を見せてくれます。70年代のATG(アートシアターギルド)の映画かと思わせる切迫ぶりが伺えます。全盛期の桃井かおりを超えたのではないでしょうか。かと言って決してオーバーアクトではなく、役を理解し尽くした上での、上手さが煌めきます。キャリアハイの作品でしょう。今まで、『君はいい子』が彼女のベストでしたが、この作品は遥かにそれを越えて来ました。
助演の片山友希、和田庵も素晴らしい。永瀬正敏も含めて、イヤな脇役もホントに殺したいくらいウジ虫のようでいい。
多くのメディアや言論が切り捨てて来た、「たいせつなこと」を石井監督は冷徹に、そして優しく取り上げています。
小説では伝わりにくいことを、映画はやすやすと、われわれの目の前に表現してくれます。それが総合芸術の素晴らしさです。
日本経済新聞が伝えてくれない、でもとても大切なことを、しっかりと伝えてくれるのです。
エンドロールで、GOING UNDER GROUNDのハートビートが流れた瞬間には、スクリーンに飛びこんで行きたくなりました。
令和の時代に相応しい、魂の傑作にスタンディングオベーションしかない。
日本の「シングルマザー」家庭かの(国、政府への)叫び!
日本人、日本政府の弱者生活者への本音?なんだろう。
ちょっと見は、弱者の強く、清い、生活観、信念に共感を抱かせようとしてる。
がしかし、この映画(石井監督)は、シングルマザー家庭の残念なほどの社会的な受け捉え
そして、ほったらかしの国の不備
を、反旗を翻らせることもしない映画で
訴えている?(諦めてるかも)
悲しいなぁー、辛いなぁー!
でも、このさじ加減、うまいね。
俳優の布陣、適材適所で、心底の悪がいないのも、上手い!
日本の政治家は、この映画を見ても、きっと
これは、映画の世界
と、見ちゃうんだろうなぁー。
ラストシーンが印象的なのも
現実の社会、生活が辛いから、みんなに
届くんだろう、を巧みに作ってる。
女豹のロックンローラー良子誕生!
池袋の交差点に砕かれた自転車。散乱した麦わら帽子と子供用ヘルメット。この映像を何度目にしただろう。誰もが今なお抱き続ける憤り。そしてこの事故から昨今のコロナ禍において頻繁に耳にするようになった「上級国民」というワード。その全てを息苦しい現代を投影したこの物語の始まりに据えるにおいて、夫役はオダギリジョーでなくてはならなかっただろう。
あまりに多くの物を背負いながら手段を選ばず懸命に働く田中良子。怒りも苦しみも憎しみも絶望も全て飲み込んで笑ってやり過ごす。
良子の口癖「まぁ、頑張りましょう」…私には諦めの言葉のように聞こえた。
唯一本音を吐露できる風俗店の同僚ケイ。もっと怒っていい。叫んだっていい。気が狂いそうな夜の街で自分を見失いながらも目の前の今を生きる女性達が逞しい。
生きる理由がなくても人は生きてゆける。生きる意味があれば。生きる価値があれば。でも全てなくなったらやっぱり人は死んでしまうのだろうか。それとも神様を探すだろうか。
良子にとってそれは純平である。母ちゃんの赤い服を見逃したりしない。めちゃめちゃいい男。
ラストシーン。完全に吹っ切れた女豹の良子はもはやロックンローラーである。きっと良子は「まぁ、頑張りましょう」とはもう言わないんじゃないかな。格好いいな、母ちゃん!
最後に残念箇所が1つ。この映画のタイトルともなっている土手の夕焼けのシーンがめっちゃCGで一瞬引いてしまった。何故?是が非でもここは本物の茜色に焼かれてほしかった。
~大阪も遂に映画館が再開しました!待ち遠しかったです。まだまだ困難な日が続きますが良子みたいに力強く生きていきたいものです。~
荒削りだが心に残る映画。尾野真千子が素晴らしい
荒削りなんだけど、訳もなく心に残る映画。
綺麗にまとまってる映画より、こういう映画の方が残るものが多いと感じる。
物議を醸しているラストシーンは断然支持派。
田中良子という人間を通して、それでも芸術表現することをあきらめない、フィクションの力を信じる制作スタッフの決意表明のように思えた。
あれがないと割とよくある映画に終わってた。
最高だよ石井裕也。
尾野真千子の魂の演技がとにかく素晴らしい。
ちょっと後味悪い
冒頭の事故のCG映像って、テレビのニュースでも見かけるけど、被害者からしたら耐え難い映像ですよね。。
被害者のプライバシーばかり露呈してる最近のニュースに重ね合わせてしまいました。
田中良子さん、心が綺麗すぎるなぁ。
それじゃ戦えない、いや闘う事など眼中にないのか。
旦那さんの命の対価の賠償金は受け取れない。
良子さんの命が擦り減っても?
行き過ぎた自己犠牲感がちょっと後味悪いかな。
頑張れではなく、まあ頑張りましょう
初めてレビューを書きます。
色々な方が素敵なレビューを書かれているので自分がどうこう書くのはどうかと思いましたが、この気持ちとか感情を忘れたらダメだなと思い自分のために書きたいと思いました。
内容のレビューなどは書いていないので、レビュー目当ての方がいたらすいません。
映画は色々な考えや意見、感想があるのは当然だと思いますが、自分ほんとにこの映画に出会えてよかったなと心底思いました。
この映画を見て自分の色々な事に気づけたし、何気なく言った事や何気ない行動で誰かを傷けたりするって事をわかってはいるつもりでしたが本当にわかっているのか自分と思ってしまいました。自分の無知さやわかっているつもりの自分がいてなんか凄く心がえぐられました。
見た後と見なかった後の自分の人生が変わる様な感覚の映画はそうないですが何か自分が変われそういや、変わらなくてはと強く思いました。
小野真知子さんの「まあ、頑張りましょう」は最初は自分に言っているのかと思いましたが、最終的には私に見ている方全てに言われてるきがして震えがとまりませんでした。頑張れではなく、頑張りましょうと言うのがより私の心を救ってくれました。
強くは生きていけないとは思いますが、色々考え、足掻きながらでも生きていこうと思いました。
映画に関わった監督、出演者、スッタフ、映画館の方本当にありがとうございました。自分も恥じぬ様に生きていきます。
もしレビューを読んでくれた方がいたら長々ありがとうございました。こんな時代でみんな色々思う事もあるし、色々大変だとは思いますが、まあ頑張りましょう。
中2病映画
よくこんな映画に星多く付けてプロ気取りしてるな。何だこの映画、主人公や他の登場人物に全く感情移入出来ない。特に尾野真知子の役どころ。旦那殺されて保険金受け取らないわ、旦那の浮気相手の子供に養育費送るわ、そのくせ金が無いから風俗で働くわ、そんな人間、シングルマザーいねーだろ。いちいち何円とか出るけどなんの意味があるの?
出てくる人物全てそう。全く共感出来ないから話に乗れない。ラストのアクションのスカッとさせました話なに?あの男そんなに悪くないから、母親の単なるアホにつきあわされてるだけだから。それなら家に火をつけた生徒探し出せよ。
監督の単なるマスターベーション映画。
よくこれでプロダクション通ったな?
単館で十分。尾野真千子の脱ぎ損だよ。分からないのかね台本読んだ時点でクソ映画って。
この手の映画を描くならちゃんとバックボーンあって主人公に感情移入させてから物語を進めないと、全てが偽物の世界に見えてくる。なぜ分からないのか?それは監督、プロデューサーが素人だからだと思う。それで今回も予算回収出来ませんでしたね、観客の意識が低いからですよって絶対言ってる。
荒川の土手
尾野真千子目当て80%。石井監督目当て、20%。
和田庵君の鼻と尾野真千子の鼻がよくにていて、ほんとの親子みたいだったよ。
途中(最後10分から15分ぐらい)までは凄く良かったです(☆4.5)。ただ、あの人(キョンキョンの旦那)が出過ぎ。
エンディング、ぶれぶれでした。
まだ若い石井監督だから、自分で脚本書く監督だから、敢えて苦言を言いたくなります。期待しているから。
コロナ禍での撮影。それはわかりますが、コロナ禍と関連付けなくても良い内容だったので、じっくりエンディングをやって欲しかった。
片山友希のケイがとても良かった。生い立ちが複雑で、生まれつきの糖尿病で、男運の悪い彼女を子宮頸がんにして自殺させた。
自分のことでは怒れないけど、ケイのことなら怒れたんじゃない?火葬場で問題の父親を出してきたのなら、良子が喧嘩腰で父親に突っ掛かる場面が欲しかった。
アルツハイマーの老人に引き殺された旦那オダギリジョーのバンド仲間のコロナ禍の飲み会(7回忌)の場面で、飲ませたら手がつけられない怪演をする劇団女優のエピソードがちょっとだけ語られるが、尾野真千子の俳優魂の発露が弱め。途中、これは女優田中良子の芝居だなと思う場面(少しクサめ)はあったけど。
バンドのドラムのただやりたいだけのお茶屋のバカ親父は必要?官僚の家族の顧問弁護士役の嶋田久作が最後にはオレオレ詐欺の受け子を守る弁護士?
熊木君とのラブホシーンは片乳見せるだけ?
田中良子(尾野真千子)が示談金を拒否して、許すまじと懸命に生きてきたのだから、老人の葬式に乗り込んで、見ているこっちが怖くなるような大立回りの大芝居を見せて欲しかった。
そして息子役の和田庵君が、お母さんもういいよって大泣きするエンディングからの荒川の土手の夕陽が見たかった。
茜色に焼かれるという題は凄く良い。だから、さいたまの荒川の土手の夕陽の場面で終わらせて欲しかったよ~ん
怒りの指す方へ なんのために生きるのか
「もっと怒っていいんだよ」
主人公の良子は度重なる理不尽に合いながら、社会のルールとの狭間でなんとか理性的に生きてきた。怒りを出さないことは、彼女の理性ゆえかとも思う部分も多く見えていて、彼女の賢さゆえの立ち振る舞いにも思えた。
それでも息子のいじめに憤る姿に、「誰かのためなら怒れる」姿も見えてくる。
同級生に詰め寄るシーン
彼女のこれまでの人生を考えたら、本当に包丁を突きくけるべきは、事故の加害者であり、謝罪をしない遺族に対してじゃないか。あるいは、息子の存在を馬鹿にして命の危険まで晒してきたガキどもに対してじゃないのか、とても疑問だった。
だけど、誰かのためじゃなくて、自分自身の身に直接降りかかった理不尽に直接対峙する重要な意味があるのかと思えてくる。
夫は社会に対して怒り、その社会に死んだ後でさえ虫けらの様に潰された。
子供はそんな境遇のせいもあり、変わり者を排除する暴力にさらされた。
はるかに大きな理不尽だし、客観的に見ているこちらとしては、怒りの矛先が不自然にも思えた。
一方で彼女自身は、大きすぎる理不尽に対して「神様」を想定してどこか諦観のような態度でもあったのかもしれない。
しかし、自分自身の問題に対して怒ること、それを彼女が見せること、それこそが彼女が自分の意思で生きる上で重要だったのだろうと思う。
彼女の脅迫行為は、結果として相手を破滅に追いやっている。今まで自分がされてきた、社会のルールから外れた理不尽を他者に与える行為でもあったと思う。穏やかなBGMが流れていたが、決して穏やかなシーンではないと思う。
しかし、それでも彼女は自分の意思で怒り、その結果生きていく道標としての息子の存在を改めて認識するための行為だったのかもしれない。
余談ですが
学校のシーンの後にお店のシーンが流れたり
教師に対して怒っているときに「大事な話が」と言われたり
「学校」という場面で「売春」という言葉が使われたりして、仕事がバレるんじゃないかとハラハラさせたり
事故のイメージ図を冒頭で最初に見せてから始めたり
ポールで視界を隠したり
そのポールが真っ赤だったり
細かな伏線というか、匂わせというか
うわーずるいなー うまいなー
と思いながらも、上手いこと手のひらに乗せられてた感じで面白かったです
あとラストの「茜色に焼かれる」1番大事なシーン
おそらくコンプラ上、2人乗りを漕いでいるところを直接撮ることはできないと思うから、背景ははめ込みだとは思う。
そこはいいんだけど、草花が風で揺れているのに、2人の服や髪が微動だにしていなかったのが気になってしまった。
細かいとこ気になってごめんなさい。
どんなに不条理であっても前を向いて生きていかなくてはならない
この世には誰が決めたか分からないルールや、理不尽なことに溢れている。
自分を何かに合わせて演じて誤魔化していかないと生きていくのがつらい。
でも、そんな息苦しい世の中でも誰かを愛することが生き甲斐になる。
空が茜色に染まるように、塞ぎ込みたくなる曇天模様でも一筋の光を差し込んでくれる。
人はなんのために生きているのか。という命の尊さを改めて見つめ直すことができる作品。
コロナ禍の社会や生活様式を自然と描いていて、この1年ほどでこの作品を書き上げ撮りきり上映した石井裕也監督は素晴らしい。
字幕でものごとの金額が出てくるが、お金に換算できない幸せとの対比を表しているか。
現状のていねいな描写
切ない話が続くよね。
観てて「経済的困窮はしんどいけど耐えられる。屈辱を与えられるのが耐えられない」と思ったな。
あとは、弁護士さんで顕著だけど「話を聞いてますか?」と言う人がこちらの話を全く聞かない。それから、「上に言われて」「上に言われて」が出てきて、弱い者がさらに弱い者を叩く構図。
熊木くんに対する仕打ちは「ひでえなあ」と思った。これも出てくる中で一番弱いところにいったと言えなくもない。
話をまとめずに終わっていて、淡々と事象を描写した作品になっていたけど、観てて考えさせられたな。
尾野真千子が凄かった。でも・・・・・
女優・尾野真千子の凄さを観た。
ただ、これはいいとしても作品としてはどうだろうか?
製作者が伝えたかった事はなんだったのだろうか?
「生きていくって大変。」だったのかなぁ・・・・
まぁ、確かにそうなんですけどね。悩みが無い人はいないでしょうし、多かれ少なかれ皆さん「悩みながら」日々生きているわけですしね。
観て損したとまでは(尾野真千子、凄かったし、)言いませんが、人にはあまりおススメできないかな。チョッと残念でした。
コロナ禍。 がんばれ!
底辺を描いた映画が好きです。
特にこの映画は、現代に本当にありえることが描かれているので見ていて引き込まれました。
片山友希さんは観ていて個性を感じました。
そこらへんにいる俳優じゃないと思い、家に帰りnetでこの作品に対する思いを知りました。
コロナ禍での映画。
体調とか都合がわるく、少し間が空くと、あっという間に観たいと思つていた作品の時間枠が1枠になっていたり消えていたり。
見逃した作品は10本を越えます。
俳優さんたちも大変だと思いますが、健康に気を付けて頑張ってほしいと思います。
なぜだろう。役者さんは皆良い。尾野真知子の強さも片山友希も。永瀬正...
なぜだろう。役者さんは皆良い。尾野真知子の強さも片山友希も。永瀬正敏もさすが、出てくると画がしまる。
息子役が、すごくよかった。卑屈にならず、母を信じて、母子家庭の息子ってこうだろうなぁと頼もしくも感じた。
ただ、何度も発せられるいセリフややりとり、理不尽さを主人公に与える役割が、極端すぎるのか、意図が
わかりやすすぎるからか
計算を感じてしまい今ひとつ前半入り込めなかった。
でもこのコロナ禍で
弱い立場の者たち、理不尽な世の中、
に明るさを与えてくれる主人公であり
ラストのシュールなシーンがオチのようにもなっている遊びゴコロは石井監督ならではだと感じました。
すごく好きな映画
キネマ旬報の批評で高評価だったので観てみたらすごく好きな作品でした。
泥臭くて青臭くて熱量がすごくて、尾野真千子さんがもう圧巻。
どんな表情も見逃せませんでした。
彼女でなくては成立しなかった映画。
一生懸命なんだけど、空回りしたり自分で自分の首を絞めちゃったり。
人生ってそういうもんだよなぁって、
自分はかなり愛おしく共感しながら観てました。
白眉は中盤と終盤、良子とケイが心情を吐露する場面。
もう演技とは思えない。
ウソくささが全くないどころか、今目の前に田中良子とケイがいるんじゃないかと思うほど。
どんな現実よりも映画の中の方が「真実」に思える。
自然に涙がこぼれていました。
片山友希の新鮮さもさることながら、やっぱ尾野真千子スゲェ、、ですよ。
あと冒頭から字幕が要所要所で効いてて良かったです。
良くも悪くもお行儀の良い作品が多い中で、みんなに好かれる八方美人のような作品ではありません。
ここで両極端になるレビューを見ても分かりますね。
凸凹してていびつな尖ってる映画。
でもこの映画の中に大切な「真実」のひとつがあることは断言します。
コロナがなんじゃ!って思えて勇気づけられました。
決してつらく悲しいだけのお話ではありません。パワーをもらえる映画ですよ。
一部レビューを鵜呑みにして見ないのはあまりにもったいない。
不幸を寄せ集めてみたものの…。
コロナという作られた困難にまかせて、不幸を寄せ集めてみたものの、収拾不能な、朝日新聞炸裂の映画が出来てしまった!
一体全体、何が言いたいのか?
税金使った公団住宅に安い家賃で住む母子家庭を馬鹿にする奴が許せないのか!?
母子家庭の母親が風俗で働かないといけないような世の中が許せないのか!?
人を事故死させ謝りもせずのうのうと生きている元官僚が許せないのか!?
風俗で働いている人をバカにして見下す風潮が許せないのか!?
ルールに縛られルールからはみ出した人を排除しようとする人間が許せないのか!?
いじめ、無責任な教師、血の通わない弁護士、人の弱みに付け込む人間、近親相姦、病気、自殺、ありとあらゆる不幸を詰め込み、言いたいセリフを詰め込み、最後は自慢の母ちゃんで終わる!?
そんな、荒唐無稽な長尺映画を観たい方は、映画館へ集合だ!
東京は映画館オープン!おめでとう㊗!
脚本は頂けない。
尾野真知子がこれまでの取り組み方では演技できなかった、というようなことを言っていたので興味を持ちました。
お話は一言でいえば、シングルマザー応援歌みたいな感じの話です。しかし同時に、こんなひどい社会の中で、生きる意味を真面目に問いかけていたんですね。
シングルマザーの反逆っていうか、それによって生きるための推進力を得るということなんですが、理不尽な目にあいまくるシングルマザー役として尾野真知子では重すぎると感じました。
俳優陣は彼女も含めて、熱演で、それは見ていて気持ちのいいものではあるんです。しかし、シングルマザーに焦点を当てるのであれば、尾野真知子では強すぎるんですよね。シングルマザーとして差別されながら、肩身を狭くして生きてる役なんだけど、どうしてもそう見えない…
しかも反抗の中身も、おい、今の社会で怒りの向く先がそこなのか⁉︎ 脚本が本当に表層的で幼稚だなあとしか感じられなかった。石井裕也監督のオリジナル脚本ということなんですけどね。また、あーあな日本映画が追加された、正直そう思ったのです。
ところが驚いたことに、1100円もするパンフレットを読んでみると、ストーリーもさることながら、コロナ禍で映画を作るということにとても重点が置かれていたことが判明。パンフは主な出演者だけでなく、コロナ禍なので極限的に人数が減らされたスタッフの声も載っていて、制作現場の様子がわかり、中身はあるものでした。
それをみると主演の尾野真知子からして、最初はコロナ禍なので仕事はしないことにしていたのに、脚本を読んで出演を決めるなど、コロナによって出演者スタッフ全員大きな影響を受けつつある中で制作されていたのです。そしてそのことこそ、映画が作られた大きな動機なので、話もコロナ時代の中で展開しているんですね。マスクつけてたりして、筋とは関わらないですが。撮影は昨年の8月末から9月いっぱいに行われたものなので、本当に手探りでコロナ対策をしながらの大変な現場だったようです。
とにかく理不尽な社会に負けない!っていうことへ向かって、突発的に、しかし作らなきゃ!と作った映画らしいのです。
この製作陣の熱とは裏腹に、私はますますドン引きしてしまった。希望なしには生きていけないけれど、これで生きていけるのか…なんだか、ラストにほのかに提示される希望にまるでピンとこないというか。
しかも希望がなくなったら死ぬしかないじゃん、みたいなことも併せて言われてたりして…
社会への問題意識はわかったけれど、その先がとても線が細くて、現実社会で闘われている生きるための闘いの重さと比べて軽いんですよね。最後の自転車のシーンは、美しいけれど、なんかやはり頭の中で捻り出されたものでしかない。
最後に付けた劇中劇は賛否両論あるかもしれない。石井監督からしたら絶対に必要な部分でしょう。それは、彼の話を読むと理解はできる。しかし読まないとそこにこそ主眼があったとは、私は理解はできなかった。ええ、そこなの… みんな仮面をかぶって人生演技してるって?あるいは、芝居でしか本音言えないって?なんだかなあ…映画の熱量の中に入れず、さらに脱力。
最初に映画の隅に主人公のことを記載した一文が出てくるんです。そこに確かに監督の大事な思いが書かれていたんだと、パンフ読んでわかったものの、映画の前の宣伝があって、その後に朝日新聞ってのがバーンと大きくそれだけで出てくるから、まだ宣伝なのか?と思ってると、田中良子は…という一文が出てくる。そもそも田中良子が誰なのかもわからない訳ですからね、こちらは。主人公の名前ですけどね。そして何?と思ってるうちに映画が始まるので、その一文は忘れていき、そこに主題があったとはパンフ読むまでわからなかった。
現実のシングルマザーはこれで元気になるんだろうか?
シングルマザーの現実をなんとなく利用して別のことを表現しただけなのか?
とってつけたような希望なんかいらない。
コロナ禍で、このテーマでよく撮ったとか、俳優陣への賛辞だけで、批判がでてこないのなら、日本の映画界には私はやっぱりついていけない。
尾野真知子の力演はもちろん、息子役の和田庵、主人公の同僚役の片山祐希よかった。さらにたった2分ぐらいふら〜っと自転車に乗ってただけで、あとは写真のみの出演のオダギリジョーの存在感は特筆ものかも。俳優陣の良さが救いの映画ということになるのかもしれません。尾野真知子ファンにはお勧めでしょう。
信念に従って生きる母子家庭の大変さを痛感させられました…
ゲスな男どもの言動に腹が立ち,ため息をつきながら観ていました。
私も男ですが、その単純さ,汚さ,他人を思いやる気持ちの欠如に、反吐が出る思いでした。
でもこれが、世の中の男どもの多数派なのでしょうねぇ…
苦しい生活を強いられながらも自分の信念を貫きながら生きている良子と、
その背中を見ながら 真っすぐに成長している順平を、心から応援しながら観続けました。
ちょっと退屈に感じるシーンもありましたが、それもまた映画なんだろうと思います。
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